推計約65万人、理由は「退職」「人間関係」「コロナ禍」など…ひきこもりの現状(2024年公開版)
内閣府では2023年3月に「こども・若者の意識と生活に関する調査」(※)の結果を公表した。今回はその中から、かつて「子供・若者白書」で公表・分析されていた「ひきこもり」について、その実態の確認をしていくことにする。
今調査結果によれば15~39歳において、広義でのひきこもり認定者は2.05%との結果となった。なおグラフにもある通り、「自室からは出るが、自宅からは出ないまたは自室からほとんど出ない」「普段は自宅にいるが近所のコンビニなどには出かける」が狭義のひきこもり、「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」が準ひきこもり、双方を合わせて広義のひきこもりである。
単純に人口推計(調査年2022年の10月1日時点での総人口)と合わせて換算すると、狭義ひきこもり数は35.0万人・広義は65.3万人となる。ただし「ひきこもり」の定義にはグラフにある通りいくつかの段階区分があり、注意が必要となる。
さらに調査における非回答者内では、回答者よりも該当者の比率が高いと思われるため、実態としてはもう少し上回ると考えた方がよい。
一方、グラフ中の注意書きにもあるが、心身的な病気によるもの、自宅就労者、家事手伝いなどをしている人などは今回の「ひきこもり」には該当しない。例えば花嫁修業中の人、SOHOスタイルで働いている人、妊娠している人は対象外となるので注意が必要。
ひきこもり状態に陥るのには何らかの理由があるはずだが、それを尋ねた結果が次のグラフ。大きな理由は「退職」「人間関係」「中学校時代の不登校」「コロナ禍」である。
最大の理由は「退職」。生きがい、社会人としての夢や希望、将来設計などを打ち砕かれて、心身ともに大きなダメージを受けてしまったのだろうか。そして学校・職場を問わずに「人間関係がうまくいかず」が続いている。さらに「中学校時代の不登校」が続き、就学時期の不登校としては小学校や高校、大学よりも中学校時代のものが大きな影響を与えているのが分かる。同率で「コロナ禍」が入っており、新型コロナウイルスの流行による巣ごもり現象や社会様式の変化が、ひきこもり化を後押ししてしまったことがうかがえる。
「その他」が1割強を占めているのは、「ひきこもり」化するトリガーが一様ではなく、人により多様なものであることがうかがえる。あるいは匿名による調査であっても他人には語ることが難しい理由や、具体的な言語化には難儀する「もやもやとした心境」によるものもあるのだろう。「もやもやとした心境」の観点では、「特に理由なし」「分からない」もあてはまるかもしれない。
今調査の報告書を確認する限り、個々の資質の積み重ねと、何らかの大きなきっかけが相互作用した結果、ひきこもり化したパターンが多いように見受けられる(例えば「ひきこもり」対象者はそれ以外の人と比べ、自分の感情を表に出すのが苦手な人が多い)。見方を変えれば、たとえ資質があったとしても、きっかけを乗り越えることができれば、ひきこもり化は避けられる可能性はある。
無論それには個々の対象者自身だけでなく、保護者をはじめとした周囲のサポートが必要なのは言うまでもない。
■関連記事:
【日常外出をほとんどしない人は約5%・5年前と比べて増加中】
※こども・若者の意識と生活に関する調査
ひきこもりに関する部分の調査は、2022年11月10日から25日にかけて、層化二段無作為抽出法で選ばれた10~39歳の男女2万人と、40~69歳の男女1万人を対象に実施したもので、調査方法は郵送法(オンライン回答併用)。有効回答数は10~39歳が8555人、40~69歳が5214人。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。