リオ五輪でも激しく火花散らしそうな日韓オリンピック対決の行方
人類のスポーツと平和の祭典とされるオリンピック。だが、その一方で国同士が互いのプライドを賭けたスポーツ競争の側面も持つ。日本と韓国もオリンピックの舞台で競い合ってきた。
リオデジャネイロ五輪ではどんな日韓対決が生まれるのだろうか。韓国のスポーツ団体を統括する組織であり、オリンピックなどの国際大会への選手派遣事業を行なっている大韓体育会日本支部の趙靖芳専務理事に話を聞いた。
―韓国メディアの調査によると、“韓国人がリオ五輪で期待する選手”1位がサッカーのソン・フンミン、2位が新体操のソン・ヨンジェ、3位がアーチェリーのキ・ボベ選手でした。その他に誰か注目の選手はいますか?
「今回の柔道代表の中に、世界ランキング1位の選手が3人いるんです。73kg級のアン・チャンリムと、60kg級のキム・ウォンジン、66kg級のアン・バウル選手。3人とも決勝で日本と当たって、いい勝負してくれるだろうな、と予想しています」
―日韓対決は、どうしても注目が集まりますよね。さっきお話に出た柔道のアン・チャンリム選手は、日本と縁があります。
「ええ、アン・チャンリム選手は元々京都出身の在日韓国人3世で、神奈川の桐蔭学園で頭角を現しました。大学2年の時には全日本学生選手権で優勝するのですが、その頃から国際大会に出たいと思ったみたいです。ただ、国籍のこともあって、なかなか出られず、新天地を求めて祖国である韓国に行ったわけです。元々、アン・チャンリムはすごくテクニカルな選手。しかし、韓国は基本的にパワー柔道。そこで、韓国に来てからは、まず徹底的に体を鍛えられました。そうやって韓国的な柔道と日本のテクニックが合わさった結果、世界ランキング1位になっていると思いますね」
(参考記事:日本で生まれ育ち、韓国で才能開花させた男子柔道の希望、アン・チャンリム)
―柔道で日韓の名勝負が誕生しそうな予感がしますね。
「日本の柔道が育てた選手が、韓国の刺客として立ちはだかる。日本と韓国で頂点に立った選手が、今度は世界で勝つか負けるか。日本の柔道関係者はそういうふうに見ているらしいですよ」
―面白いですね。ところで、今回いきなり日韓戦から始まる女子バレーにも期待が寄せられていますが。
「女子バレーは1976年モントリオール五輪以降メダルがないので、今回はちょっとメダル圏までいって欲しいですね。エースのキム・ヨンギョン選手は、多分今回でオリンピック出場は最後になるかもしれない。正直金メダルは厳しいと思うけれど、彼女がいるうちに女子バレーでメダルをとっておきたいところです」
―日本と韓国、どちらの成績がいいと思われますか?
「今回は日本がかなり良いでしょうね。水泳、体操、女子レスリングでメダルが期待できますし、東京オリンピックに向けて選手たちが若返っています。日本は今、吉田沙保里、内村航平らベテラン選手たちと、若手選手のバランスがとても良い。メダルが安定的に期待できるベテランと、若手の勢いが合わさって、良いシナジー効果が出ると思います」
(参考記事:柔道、マラソン、サッカー、バレー。死闘と遺恨と因縁の日韓オリンピック激闘史)
―それに比べ、韓国はなにかとベテラン選手が多い気がしますね。
「ええ、韓国はおそらく今までの遺産を使い切る、大げさに言うと集大成のような大会になるんじゃないでしょうか。オリンピック2連覇、3連覇を狙う選手が多いですからね。そんなベテランたちに負けじと、どれだけ新しいスター選手が出てくるのか、そこも一つの楽しみですね」
過去のオリンピックではさまざまな名勝負を繰り広げてきた一方で、遺恨や因縁も生んできた日韓オリンピック対決。前回ロンドン五輪では男子サッカー3位決定戦で韓国選手の軽率な行動が波紋を呼び後味が悪かっただけに、リオ五輪では両国のスポーツ・ファンたちを熱狂させ感動させる、素晴らしい日韓オリンピック対決を期待したい。