【土浦市】土浦から世界へ。333年の歴史を持つ『柴沼醤油醸造所』のお醤油ができるまでを密着取材!
土浦市が醤油の街として知られていたのをご存じでしょうか。最盛期には19軒もの醤油醸造所がありましたが、現在は「柴沼醤油醸造」たった1軒のみとなりました。300年以上の豊かな歴史におごることなく、新しい息吹も感じ取りながら、今日も柴沼醤油醸造ではおいしいお醤油造りに励んでいます。
柴沼醸造所の展示室は有形文化財レベルの歴史と趣
「桜川沿い土手沿いを学園方面に向かっていただくと桜川を渡る橋があります。そのまま進むと左側に降りる道があります。赤いポストがあってそこが正面です」。そう教えていただいて向かった先が「柴沼醤油醸造」。土浦駅からは車で約15分程度。そんな街中に醬油工場なんてあるのかしら…と半信半疑で向かっていったら、本当にありました。でも、醤油工場というよりは、とても美しい日本家屋。時代劇のワンシーンに出てくるような問屋さんの趣です。
「この建物は江戸時代に建てたものなんですよ。今から約300年前。40年前までは母屋として住んでいたのですが今は展示室として開放しています」と教えてくれたのは柴沼和廣さん。柴沼醤油醸造の取締役会長で、柴沼家17代当主です。
江戸時代に建てた時には茅葺(かやぶき)造りでしたが、明治時代に瓦屋根になりました。先代である柴沼さんのお父さまは関東大震災を経験していますが、その時に瓦が1枚も落ちなかったほど堅固です。東日本大震災時に何枚か落ちましたが、それでも数枚程度。昔の職人さんの丁寧に作りには脱帽です。写真は、明治時代当時に造った鬼瓦部分です。今もなおきれいな状態で保管されています。
展示室の中へお邪魔すると、純日本風の家屋の眺めが広がります。これってもう有形文化財レベルの美しさ。光の入り方がまたきれいなのです。
お寿司屋さん用語の「むらさき」の語源になったという一説も?!
入ってすぐの上り口に柴沼醤油醸造の商品が置かれています。写真は柴沼醤油醸造の顔ともいえる「紫峰しょうゆ」。卓上ビンから1.8Lまでサイズのバリエーションが豊富です。
商品名の「紫峰」は筑波山の別名のこと。朝夕に山肌の色を変えることからそう呼ばれるようになりました。まろやかな生醤油の味わいにかつおだしの優しさが加わり、お刺身につけても、冷奴などにかけて楽しむのもおすすめです。
これは諸説のひとつですが、醤油が「むらさき」と呼ばれるのは、この筑波山の紫峰が語源になっているという説もあるそうです。
農林水産大臣賞の受賞経験もある逸品
木桶で約1年という長い月日をかけて熟成させたお醤油は、茨城県産の丸大豆と小麦、仕込み塩の伯方の塩のみで造られています。生醤油本来のきりっとした味わいと赤みを帯びた色、ふくよかな香りで、家庭用だけでなく贈答用としても人気です。
「歌舞伎揚」も柴沼醤油醸造のお醤油だった!
もはや国民的なお菓子ともいえる天乃屋の歌舞伎揚。甘じょっぱい揚げせんべいのベースとなる醤油を作っているのもここ柴沼醤油醸造だったのを今回初めて知りました。ものすごく感動ですし、感謝の気持ちでいっぱいです!
紫峰使用のポテトチップス醤油味は、カスミストアなど地元スーパーを中心に販売されています。これ、お酒のつまみにすごく美味しいんですよ。
土浦から世界へ。世界各地で愛用される柴沼醤油醸造のお醤油
展示室には海外各地で愛用されている製品の一例をみることができます。輸出先はドイツやアメリカ、東南アジアなどで、国ごとの特性によって味わいを変えたり、グルテンフリーやビーガン、アルコールフリーなどにも対応しています。
飛行機の機内食でおそばが付いているときにこんなケースに入っためんつゆを見たことありませんか? 日系だけでなく、羽田や成田、関西空港をターミナルにする多くの航空会社が柴沼醤油醸造が造るめんつゆを使っているんです。
有名な食事処の醤油パックなども造っています。私の大好きなとんかつ屋の醤油も柴沼醤油醸造のものだと知り、またもや驚きです。
いよいよ工場内を見学
製品も魅力的だし、展示室も面白くて本題の工場見学までの道のりが長くてすみません! お待たせしましたがようやく「柴沼醤油醸造」の工場見学のスタートです。
上の写真は昭和36年に先代が造られたレンガ造りの「正栄蔵」という蔵の壁です。ここは原料を処理するための蔵として活用されていましたが、その機能は新しい工場に移転しているため、現在は写真撮影スポットとして人気を集めています。
原料は大豆、小麦、塩、そして麹菌のみ
醤油造りは大豆、小麦、食塩が原料で、そこに熟成中に付着する麹菌が加わることでその醸造所ごとの味わいが生まれます。
柴沼醤油醸造は、原料にもこだわっており、茨城県産の丸大豆と小麦を使った製品もあります。
醤油造りの第一歩は大豆を蒸すことから
醤油造りは大豆を蒸すことから始まります。柴沼醤油醸造には1.5tサイズの大きな蒸し器が2基あって、大量の大豆を均一に蒸し上げていきます。蒸した大豆と小麦、麹菌の種となる種麹を混ぜたものを麹室に入れて3日間温度を調節しながら菌を繁殖させて良い麹を育てます。
原料を木桶に入れてゆっくり熟成させる
出来上がった麹に食塩水を加えて「もろみ」を造ります。柴沼醤油醸造では、もろみを造るタンクに木桶を用いていて、木の香りも移り、香り豊かな醤油へと昇華していきます。
発酵が進んでいくとどんどん色が変わっていきます。
すごいドロドロ。でもこのドロッとした感じがまもなくおいしい醤油が熟成されますよ、という合図。特別にひと口いただきましたが、塩分が強い味噌を舐めたような感じです。
明治時代から丁寧に使い続けている高さ2.5mもの木桶
先ほどは上から木桶を見学させていただきましたが、深さを知るために下からも見学させてもらいました。柴沼醤油醸造では60石(1万リットル)と30石(5000リットル)の木桶があり、昨年新しい木桶も加わりましたが、明治時代より使い続けているという150年の歴史ある木桶は今もなお健在です。60石の高さは約2.5m。この桶いっぱいにもろみを熟成させています。
こちらが新しい木桶。醤油の香りに加えてすがすがしい木の香りも楽しめます。
工程はいよいよ佳境に。もろみを絞り出す「圧搾」作業
発酵・熟成したもろみを布の上に広げて包み、圧縮をかけながら絞っていきます。写真は柴沼醤油醸造の圧搾機(プレス機)で、80トンの圧力をかけてじわじわと絞っていきます。
圧縮している様子を上から見た写真がこちら。
どろっとしたもろみが絞り出されるとこんなきれいな赤い液体の醤油になります。この赤い液体が生醤油です。
このあとに火入れをして味を調えていくのですが、出来立ての生醤油の状態をちょっといただきました。先に試したもろみの塩辛さがうそのように、角がとれてまろやかで優しい味わいです。
商品ごとに異なる充填方法
できあがったお醤油は製品ごとに異なる機械を通して充填します。上の写真は火入れの工程を行わずに生醤油の味わいを楽しめる「紫峰の滴」(300ml380円/税込)の充填シーン。ガラス瓶に醤油が満ちていく光景はワクワクします。
こちらが「紫峰しょうゆ」の充填シーン。どの商品も賞味期限が打刻されたラベルが貼られて完成です。
あらためまして柴沼醤油醸造の商品ラインナップです。こうして作る工程を見学させてもらうと、これらの商品には木桶で造っていることでの味わいの違い、最新鋭の機械を用いながらも手作りのぬくもりも忘れない優しさも詰められているんだなと実感します。
今回の見学で私は「紫峰しょうゆ」からちょっとお高いですが生醤油の味わいが楽しめる「貴醤油」(200ml380円/税込)を愛用することにしました。
日々の料理がランクアップするような味わいを楽しめておすすめです。
柴沼醤油醸造の商品を店頭ですべてチェックできるのは土浦市田中町のヨークベニマルになります。オンラインショッピングも可能なのでチェックしてみてくださいね。
会社情報
柴沼醤油醸造株式会社
住所:茨城県土浦市虫掛374
電話:029-821-2400
※現在見学は受け付けていません
URL:https://www.shibanuma.com/