ザッカーバーグが描くAI執事「ジャービス」の先にあるもの
KNNポール神田です!
「ジャービス」とは、映画「アイアンマン」に登場するAI執事のことで、ザッカーバーグは、これを自宅に実装することを目標にしていた。
そして動画がこちらだ…。
英語だが、動画を見ていれば何ができるかは雰囲気でわかる…。ちと、声が自然すぎるが(笑)
実際のレポートはこちらだ[英文]
https://www.facebook.com/notes/mark-zuckerberg/building-jarvis/10103347273888091/
自宅をコードでハックする
facebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が自らコードを書き、プログラミングして研鑽を重ねるところがMicrosoftやGoogleなどのIT企業の基本的なDNAである。しかし、多忙を極めるCEOとなると、コードは書けるが、あえて書かずに、サインをする仕事が増えてくる。
ザッカーバーグの強みは、どれだけ忙しくても自分でコードを書くという点だ。せっかちで、集中型、何事も追求したいタイプは、人にまかせてはおけないという側面もある。しかも、将来を予測しなければならないような事業の判断の場合は、自分がそのようなデバイスに囲まれた時に、どんなデマンドが発生するのかを自分で予測したくなる。そのためには自宅を自らコードを書いて「ハックする」という手法を選んだのだ。
音声コマンドのジレンマ
このビデオで、ザッカーバーグ氏は「light off」(1分54秒頃)とメッセージングしていた。そしてライトが消える。確かにこの場面は、音声で消したほうが楽そうだが、機械や装置に「しゃべりかける」という行為はどこか虚しく思えるところがあるようだ。ある意味、テキストでメッセージングで解決できるところは、スマートフォンにすべてのホームアプライアンスのコントロールが集約されることを象徴している。
テキストを打つくらいなら、スイッチを消したほうが早くないか?とさえ思うが、ザッカーバーグクラスになると打ったほうが早いのだろう(笑)。
ザッカーバーグの描く未来がとてつもなくつまらなくみえて仕方がない
しかし、筆者には、AIでどれだけディープラーニングしたところで、ホームアプライアンスの連携で画期的なことが起きるとは思えないのだ。それは、IoTですべての家電が「ぺちゃくちゃ」話し合ったところで、たかが家電の連携だ。目覚めると、コーヒーの香りがしてきて、ロボットがコーヒーを運び、シャワーにはいると、洗濯機が連動して回り始め、家をでると、ルンバが掃除をはじめたり、泥棒が入ると、スマホに生放送してきて、警察に通報しました…と連絡がはいる…。しかし、それが究極的に極められても、便利とは思うけど、それほど「幸せ」とは思えない。ザッカーバーグの描く未来がとてつもなくつまらなくみえて仕方がないのである。
第一段階のAI執事は「ルーティーンの観察」
むしろ、AI執事がいて、IoTで結ばれると、会話レスなノンバーバルなコミュニケーションで、オーナーである人間の「ルーティーン」を観察し、先回りしてくれることが第一段階のAI執事の役目だと感じている。いちいち、機械にしゃべらなくて済むほうがありがたい。オーナーの仕草を感じ取れるセンサーのようなものが必要だ。どんなアクションやジェスチャーや癖の後に、どんなコマンドがだされるのかを学習するのだ。だから、音声の分析というよりも、しぐさやジェスチャーの認識技術だ。たとえば、メガネを探す動作をするとメガネが光ったり、音をだして、自分の存在を主張するのだ。部屋のどこかにカメラセンサーを置く。テレビであったり、鏡であったり、キッチンであったり…。しぐさを監視してモニタリングする技術が必要だろう。
第二段階のAI執事は「ルーティーンの改善」
そして、第二段階のAI執事は、「ルーティーン」を改善してくれるのだ。遅刻しないように起こすのではなく、その原因となる要因を遠ざけるという少しだけ「おせっかいな」領域に歩みださなければならない。そして、それを高圧的ではなく、さりげなく執事のように、うやうやしく、お伺いを立てながら、そろそろ睡眠の質を保つために、LED光のテレビを控えさせていただきます。これによって、睡眠の質が25%向上します…とか効能をのべてくれれば、よし、今夜は寝てやろう…という気分になれ、メラトニンを高め、快適にノンレム睡眠を3回繰り返したタイミングでカーテンが空き、日差しが入り、曇天や雨であれば、補助太陽光が当てられ、セロトニン効果を高めてくれるのだ。それらをデータによって24時間365日解析し続けるのだ。ビッグデータと個人データで健康体のバロメーターをマネージメントするのだ。
第三段階のAI執事は「脱ルーティーンの提案」
第三段階のAI執事は、「脱ルーティーン」の提案だ。朝起きたら、「今から45分後に南南西の方角へ、散歩をしにいくと、将来の奥様になる方になる可能性のあるトイプードル連れの女性がカフェにいます」などと、ビッグデータとパーソナルデータ、そして広告データをジオデータによるベストマッチングなどで提案される。何よりも、モチベーションを刺激することが第一だ。たとえ、それが「今日の占い」レベルであってもよい。データに裏付けられた占いは確率となり、習慣化できた頃には良い習慣として機能する。
そして、その時の仕草や表情、感情の起伏をディープラーニングしていきながら、次なる「脱ルーティーン」を提案していく。命令に従順な執事は基本中の基本だが、良い執事は、ご主人の為にならないことには反対するだろう。もっと良い執事は、別の気の利いた提案をしてくるはずだ。現在のAI執事のつまらない原因の一つは、言われたことを忠実に「ルーティーン」を守ることだからだ。
多様性のある人々のトライが明るい未来を創る
ザッカーバーグ氏のように、一生、グレイのワンカラーのTシャツですごせる人が夢見る世界と普通のファッショナブルな人の夢見る世界は同じではない。そう、ウィンドウズの世界がビジネスでは仕方なしに使うけれども、遊びの世界やクリエイティビティのある世界ではそれほど歓迎されないのは、創業者のビル・ゲイツ氏のセンスによるところも影響していたことだろう。ナードでオタクな人だけで、未来を想像すると、さらにつまらない未来になりかねない。そこには、老若男女を問わず、多様性のある人々が未来のデバイスやプラットフォームづくりに参画しなければならない。SNSでいろんな議論もかわされ、企画も規格もデファクトスタンダードも決めていける。クラウドファンディングのようなソーシャルネットワークからの出資も受けられるようになってきている機会をもっと活かすべきだ。そして法的にももっと緩和できるところ、民間での運営にアウトソーシングすることによってまだまだノビシロがある。大量の定年退職者が増えても、過去の経験をネット上で活かせば、65歳から75歳までの10年くらいは好きなことをしながら現役で過ごせる。AI化やロボット化、IoT化で体力を補ってくれるはずだからだ。とかく、インターネットの影の部分ばかりがとりあげられがちな昨今ではあるが、本来の光の部分をもっと活かす為には多様性のある視点で、想像を絶するような、既得権益に対して、破壊的な使われ方を、もっと、もっと提案していくべきなのだ。AIの執事にどんなことをさせたいかをもっと考える必要がある。ザッカーバーグの考えつく、クソおもしろくもない未来に征服されないためにも…。