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韓国はオンラインライブ先進国!? コロナ収束後も8割以上が「観たい」と回答

K-POPゆりこ韓国エンタメ・K-POPライター
(写真:Splash/アフロ)

コロナ禍の影響により、世界的に負のニュースが多かったエンターテイメント業界の中において、唯一に近い希望の光となったのが「オンラインライブ」ではないだろうか。

特に韓国では、オンラインライブ視聴が「新しい習慣」として、すでに定着していると言えそうだ。先月2月15日には韓国音楽レーベル産業協会が「韓国国内のオンラインライブに関する調査結果(2020年)」を発表したが、2月12日に公開されたぴあ総研による日本国内の市場調査結果とも比較しつつ、気になった結果項目を紹介していきたい。

<参考記事>

K-POP界ではオンライン公演がますます盛んに!? 新型コロナの長期化に備えたアンケート調査発表(スポーツソウル)

2020年の有料型オンラインライブ市場は448億円に急成長。~ポスト・コロナ時代は、ライブ・エンタテインメントへの参加スタイルも多様化へ /ぴあ総研が調査結果を公表(ぴあ総研)

有料型オンラインライブ、5人に1人が視聴 /ぴあ総研がオンラインライブ視聴に関する実態調査を実施(ぴあ総研)

■韓国では4割近くの人が有料のオンラインライブを視聴。日本は2割に満たず

調査によると、韓国では無料公演では58.1%、有料公演でも37.9%の人がオンラインライブの視聴経験ありと回答。一方、日本での有料オンラインライブ視聴率は18.8%という調査結果がでている。

韓国側の調査対象は満16歳から49歳だったのに対し、日本は18歳から69歳までと年齢層が広かった影響もあるだろうが、それでも韓国における視聴経験者の割合は極めて高いと言えるだろう。

振り返ってみると韓国の音楽業界はオンライン公演へと舵を切るのが、日本と比べ非常に早かった。公演中止が続々と発表されたのは2020年2月から3月にかけてだったが、4月にはBTSが過去公演の無料配信を開始し、さらに翌月にはオリジナルのオンラインライブ公演「BANGBANG CON The Live」の開催を発表している。同月にはMONSTA X&iKON&ApinkなどがTikTokを通じて合同ライブを配信するなど、昨年春の段階で多くの人気アーティストが何らかの方法で「オンタクト(非接触の意)公演」を実施していた。

この展開の早さが実現できた背景には、コロナ以前よりK-POPが海外進出のベースとして各種SNSやYouTube、V LIVE(NAVERが運営するライブ動画配信サービス)での映像展開に注力していた影響もあるだろう。

一方、ぴあ総研のデータによると、日本でのオンライン公演の市場規模は、4〜6月期が11億、7〜9月期が64億円だったところから、10月〜12月期に373億円に急成長。K-POPと比較すると、初夏までは“様子見”または“準備中”の期間だったと言える。

■「オンラインライブの望ましいスタイル」の1位は“普通のライブ形式”だった

写真:REX/アフロ

公演の主催側が、リアルなライブでしか提供できない魅力を補おうと、VRや特殊効果といった「特別な何か」の導入を試みるのは、ある意味で自然なことかもしれない。

しかし上記のアンケート調査によると、約40%の韓国人が「普通のライブスタイル」を望んでいるという結果が出た。視聴者が期待しているのは、シンプルにアーティストの歌声であり、ダンスなのだろう。

特殊効果や凝った映像などは、あくまでアーティストを引き立てる道具でしかない。手を加えれば加えるほど、ミュージックビデオとの差が無くなっていく可能性もある。BLACKPINKの公演統括が「新しい技術を見せるための公演ではなく、本当に歌手が輝くショーらしいショーを」という旨の発言をしていたが、筆者も同感だ。

<参考記事>

BLACKPINK初のオンライン公演 「テクノロジーでなく魂込める」(聯合ニュース)

■「観るならYouTubeで」が7割以上。2位には韓国の「V LIVE」が

韓国人がYouTubeでの配信を望む理由は「接続のしやすさ」。「オンライン公演で好むプラットフォーム」として1位のYouTubeは日本でもお馴染みの存在だが、2位のV LIVEはK-POPのプラットフォームとして韓国ではメジャーな存在だ。

コロナ禍もあって新たな配信プラットフォームが次々と登場しているが、UI改善や配信環境整備などまだまだ課題も残る。筆者の実体験として、複雑な認証システムに手間取り、開演ちょうどには間に合わなかったことや、アクセス集中のためスムーズに見られないケースもあった。このあたりは各国共通の現象だろう。

■コロナ収束後も無料であれば8割以上、有料でも半数以上が「オンラインライブを観たい」と回答

写真:REX/アフロ

韓国での調査では、コロナが収束した後もオンラインライブを観たいと回答した人が多く、すでに新しい娯楽のスタンダードの1つとして定着しつつある形式と言えるだろう。

一方で、通常公演(リアルなライブ)に関しても「行く回数が増えると思う」が53.3%、「以前と変化なし」が37.3%という結果から、リアル公演への関心が失われたわけではないとわかる。

例えば、一番好きなアーティストの公演、あるいは近くで開催されるような場合はリアルで、関心度がそれほど高くなかったり遠方で開催されたりする場合はオンラインで、というように「楽しみ分ける」スタイルが主流になっていくのではないだろうか。

アーティストや主催側としても、一度のステージで収容人数以上の収益を得られるのであれば悪くない話だ。

なお、日本で最もオンラインライブを見ているのはF1層と呼ばれる若い女性であり、4割近くが視聴経験ありと回答している。この層こそ、まさにK-POPが狙っているターゲットだ。この先もしばらくは海外渡航が厳しくなるであろうことも加味すれば、K-POPに対するオンラインライブの需要は、ますます増えていくことだろう。

韓国エンタメ・K-POPライター

音楽・エンタメライター。専門はK-POPと韓国カルチャー全般。雑誌編集者を経て渡韓、1年半のソウル生活。現在は帰国し様々なメディアで執筆。

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