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「IUやSEVENTEEN、MONSTA Xも」SpotifyからK-POPはなぜ消えた

K-POPゆりこ韓国エンタメ・K-POPライター
(写真:ロイター/アフロ)

突然Spotifyから大量のK-POP曲が消えた――3月1日、Spotifyを開いてみるとプレイリストに入れていたIUの新曲にアクセスできなくなっていた。SNS上に溢れるK-POPファンたちの嘆きに共感しつつ、何らかのエラーが起きているのだろうと悠長に構えていたが、いくら待てども状況は変わらず。そして目にしたのは「SpotifyとKakao M、契約終了」のニュースだった。

3月7日時点現在の状況を整理すると以下のとおり。

①Spotifyで聴けなくなっているK-POPは、Kakao Mという会社がディストリビューションしている楽曲。SM、YG、JYPといった大手事務所やBTSの曲は視聴可能

②SpotifyとKakao Mの両社とも「グローバルライセンス契約の不成立が原因」と認めている

③Spotifyは先月韓国進出したばかり。Kakao Mは韓国でシェアNo. 1の音楽配信サービス「Melon」の運営元であり、競合対策として契約更新しなかったのではないかという説が出ている(Kakao Mは否定)

そう、K-POPが一切聴けなくなったというわけではない。“Kakao Mの楽曲のみ聴けなくなった”と言うのが正しいだろう。

とはいえ、2020年のガオンチャート(韓国のオリコンランキング的指標)で上位400曲のうち約150曲はKakao Mが管理しているため、単純計算でもヒット曲の3割以上が世界中のSpotifyから消えてしまった可能性がある。

IU、MONSTA X、SEVENTEEN、MAMAMOOなど、日本でも多くのファンを抱えるアーティストの曲の一部が削除されており、これはK-POPファンにとってもSpotifyにとっても大きな痛手だ。

Spotify vs Kakao M 交渉決裂の背景

Spotifyは「国内・海外共に同一条件」での契約を原則としている。これが既存の国内サービスを脅かされるKakao Mとしては美味しくない条件だったのだろう。韓国の記事によると両社ともに契約交渉が難航したことを認めており、「特別扱い」を求めたKakao Mとそれを許さなかったSpotifyという対立の構図が推測される。

さらにここ2、3年は音源買い占め問題やチャート操作疑惑などにより、「Melon」の加入者数が減少傾向にあったこともKakao Mの焦りと強硬的な姿勢を生んだのではないだろうか。

果たしてこの状況はいつまで続く?

個人的には「再解禁の可能性はあり」と見ている。両社が「今後も契約交渉は続けていく」という姿勢を表明していること、そしてSpotifyがK-POPの世界進出に大きく貢献した存在であるからだ。

韓国国内だけではなく、海外でもTwitter上で「#KAKAOM_OUT」というハッシュタグによる抗議文が上がっている。さらに、EPIK HIGHのTABLOが「企業が芸術より欲を優先するとき、苦しむのはアーティストとファン」とツイートするなど、アーティストや事務所サイドからの声も無視できないはずだ。

実はKakao Mと外資配信サービスのイザコザは今回が初めてではない。2016年にApple Musicが韓国に上陸した際にも、Kakao Mは音源提供契約を結ばなかった。しかし2014年からK-POP配信に力を入れてきたSpotifyと、韓国上陸時までK-POPを配信してこなかったApple Musicでは、その背景が大きく異なる。

すでにK-POPが「韓国のもの」から「世界のもの」になっている以上、今の対立は誰も得をしていない状況だ。早く両社の“落としどころ”を見つけてもらい、K-POPファンたちのプレイリストが元通りになることを願っている。

追記:3月11日、両社が合意し再契約を締結したと発表。削除された楽曲が再び視聴可能になる。

<参考記事>

全世界のSpotifyからKakao Mの音源が配信中断、契約満了<聯合ニュース:韓国語>

https://www.yna.co.kr/view/AKR20210301029500017?input=1195m

全世界のSpotifyからKakao Mの音源停止、海外K-POPファンの不満殺到<SBSニュース:韓国語>

https://news.sbs.co.kr/news/endPage.do?news_id=N1006225438&plink=ORI&cooper=NAVER

Spotifyへカカオエンタ音源供給再開 <聯合ニュース:韓国語>

https://n.news.naver.com/article/001/0012252643

韓国エンタメ・K-POPライター

音楽・エンタメライター。専門はK-POPと韓国カルチャー全般。雑誌編集者を経て渡韓、1年半のソウル生活。現在は帰国し様々なメディアで執筆。

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