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親の施設入居を決断してもいい?「 自宅での介護期間ゼロ」は親不孝?

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
イメージ画像(提供:イメージマート)

 多くの親の希望は「住み慣れた自宅にいたい」というもの。子が「施設で介護を」と思った場合、 親子の考えはミスマッチとなるケースがあります。

子が親の施設探しを決断するタイミング

 親に介護が必要になり、家族での介護は難しい場合、高齢者施設での介護を検討することがあるでしょう。

 しかし、本人は嫌がる……。

 子は悩みつつ、 「本人の意思を尊重してあげたい」と考えます。しかし、子の頑張りだけではどうにもならなくなる場合もあります。

 長年、子が親の施設入居を決断した事例を見てきましたが、タイミング として多いのは、親が1人でトイレに行くことが難しくなったとき、あるいは火の始末が難しくなってきたときなどです。

◆子が親の施設探しを決断するタイミングの例

1. 親が1人でトイレに行けなくなったとき

2. 親が火の始末をできなくなったとき

3. 親が食事をとらなくなったとき

4. 介護者までが倒れそうになったとき

5. 「要介護4」となったとき

介護者が「もう限界!」となる前に

 その他、概して在宅介護の限界を感じたとき。

 例えば、両親が2人で暮らし、一方の親がもう一方の親を介護している場合で、これ以上在宅介護を続けたら元気なほうの親まで共倒れしそうだというとき。高齢の親に限らず、子が負担過多で倒れることもあります。介護を要する親を家に残しておくことができずに、離職に追い込まれるケースも珍しくありません。

 下図は、入居前にどれだけの期間、自宅で介護をしていたかを調査した結果です。「 1年以上~2年未満」が18.5%と最も多く、次が「2年以上 ~3年未満」の14.4% 、「 6か月以上~1年未満」が12.1%と続きます。 「9年以上~10年」も7.0%も。一方、「 自宅での介護期間はない」は 15.4%と全体では2番目に多い結果です。それぞれですね。

”親不孝”と自分を責めない

 家族の状況は個々に違うので、 自宅での介護期間ゼロを”親不孝”と自分を責める必要はありません。

 どこが限界かは、自分たちにしかわかりません。限界ラインを越えて共倒れになることは避けたいので、 そうなる前に、親の担当のケアマネジャーや主治医に相談しつつ、先々の ことを検討したいものです。

 親が遠方に暮らしていて状況がよくわからないケースでは、ケアマネジャーに「在宅での暮らしが難しいと感じたら、 必ず教えてください」とお願いして、タイミングを見極める人もいます。

●入居前の自宅での介護期間

『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』P37
『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』P37

※この記事は2024年11月7日に発売された自著『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(翔泳社)から抜粋し一部改編し転載しています。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門第2版』(共著,KADOKAWA)など。

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