「ヤフー、転職サイトの求人掲載料も無料化」のビジネスモデルは成功するのか。
■「ヤフー、転職サイトの求人掲載料も無料化」のビジネスモデルは成功するのか。
Yahoo!ニュース読者のみなさん、こんにちは。
今後、「これからの働き方」=「働き方3.0」をテーマに、
様々な時事ネタや生活記事、経済ニュースを取り上げながら、
日々、転職・キャリア支援を生業とする私なりに、
実態情報やココだけの話を噛み砕いてお伝えしていきたいと思います。
第三回となる今日は、
本日のYahoo!ニュースIT・科学面で取り上げられていた記事をテーマにお話していきます。
ヤフー、ECに続き転職サービスも“無料化”--求人情報や成功報酬 - CNET Japan 11月12日(火)12時4分配信
求人分野では、長年同じような仕組みが今日まで続いてきており、
こうした「キュリア」のような新しい取り組みや発表が少ないため、
人材業界の人間としては、求人業界が活性化する兆しを感じ、非常に嬉しく思うのですが、
実際にこのモデルがうまくいくのか、について、業界の中でも色々な意見が飛び交っているので、
私もそれに乗じて、考えてみたいと思います。
■求人メディアビジネスの価値とは?
あくまで私の個人的な見解にはなりますが、結論からいうと、
「集客面では有効であるが、マネタイズ面でのスケールが課題」
と感じております。
以下に理由について、解説していきます。
色々な定義の仕方はあると思いますが、求人メディアの価値を私は以下のように考えています。
・「求人数 × 候補者数 × マッチング率」
この3つの数値が、それぞれ高ければ高い程、良いわけです。
さらに、もっとビジネス的な観点で、具体的に表現するのであれば、
・いかに営業コストをかけずに求人数を集められるか
・いかに広告費をかけずに候補者数を集められるか
・いかにマッチング率を高められるか
と言ってしまっても良いと思います。
特に、マッチング率についてはインターネットメディアという特性を考えると、
コントロールしにくいため、
(※「キュリア」ではWebインタビューに求人側があらかじめ回答する事で、マッチング率の向上を図っているようですが・・・)
前者2点である「求人数」と「候補者数」をいかに担保するかが、まずは肝となります。
■求人数を集める大変さ
その上で、求人メディアにおいて、
候補者数を確保・集客するには、
候補者が求めているのは、もちろん求人情報となりますので、
求人数をいかに集めるかが、最も重要になるわけです。
※「求人数」と「候補者数」は、「鶏」と「卵」の関係とも言えますが・・・
この求人情報を集めるというのが、非常に大変なわけで、
私が過去に在籍していた求人分野の最大手リクルートキャリアという会社は、
法人営業を大量に抱える事で、直接、求人開拓・取材をし、
民間で日本最大の求人数を担保しているのです。
これには、膨大な営業コストがかかってしまい、後発で同じ事をする事は賢い選択ではないですし、
実際、物理的に難しいと思われます。
そうした中で、いかに営業コストをかけずに、リクルートと同等もしくはそれ以上の求人数を確保するか、という点において、
今回の(求人企業側が情報入力工数を代行・負担する代わりに)掲載料・成果報酬無料の課金モデルは、
有効と思います。
■候補者を集める上での有効性
また、今回の「キュリア」がインターネット上での求人サービスという事を考えると、
候補者集客は、基本的に検索エンジン上からの流入がメインになるかと思います。
既存の求人サイトもお金をかけるネット広告以外の手法は、
検索エンジンからの転職関連キーワードからの流入が主戦場となっています。
その中でも、転職関連において、
成約率の高い流入キーワードは、「個社名」×「職種名」と言われています。
成功した1つの要因となったロングテールワード戦略です。
SEO的な話は、今回の主題ではないため、ここでは詳細は割愛させていただきますが、
上記ようなキーワードで上位表示を大量に狙う上では、
他社が保持していないオリジナルなコンテンツやデータを保持している事が、
重要になります。
つまり、検索エンジン対策という点においても、
オリジナル性の高い求人データをいかに、
コストをかけずに自社で集めるかが、肝になるわけです。
※そもそもYahoo!からの巨大なトラフィック流入があるため、
SEOは意識する必要はないのかもしれませんが・・・。
今回の無料掲載モデルによって、今まで、高い掲載料や成果報酬費用が見合わずに、
求人掲載を躊躇していた企業の求人を、しかも求人企業側の情報の入力工数負担によって、
集められるというのは、非常に費用対効果の高い集客手法になるわけです。
実際に、記事中にも記載がありましたが、今回の取り組みで、
事前申し込みで既に1700社の事前申し込みが入っているようです。
全国のハローワークで受理された
求人件数は今年の3月26日時点で、88万4019件という事ですが、
日本最大の民間求人企業のリクルートエージェントが公開している求人数は、
公開求人が1万295件、非公開求人であっても、8万947件という事です。
ハローワークでは、非正規雇用求人等も多く含まれているかもしれませんが、
それにしても、まだネット上に公開されていない求人のポテンシャルはありそうです。
これらの潜在非公開求人を、今回の無料化によって、
ネット上にコストをかけずに集める事に成功できれば、
求人数は当たり前の事、候補者数も一定の数を確保できるのではないでしょうか。
■マネタイズに残る課題
肝心のマネタイズについてですが、
有料課金プランは以下のようになっているようです。
「5職職種・12週間の掲載+10通のスカウトDM送信で、5万円」
2014年3月までの目標である約5000社(8000件)を仮に達成できたとして、
10%の500社が有料課金されたとして(この課金率の数値は見立てが甘いかもしれませんが・・汗)
3ヶ月あたり2500万円の売上、年間で、1億円の売上になりそうです。
その内、有料プランの値上げや、オプション機能の都度課金もあったりするのでしょうか・・。
あくまで、想定数値ですが、これをどう見るかは、誰を主語とするか次第ですね・・。
あとは、掲載企業が採用したい人材を12週間の中で、
しっかり採用できるか、つまりマッチング率によって、
その後の求人数・候補者数、有料課金プランへの転換率の伸びが、
決まってくると思うので、こちらは、日々の運用努力になるでしょうか・・・
■既存求人メディアの課題
ただ、実は、リクルートなどの既存の大手求人メディアの課題としては、
マクロで言えば、労働人口が減っていく中で、
求人数は増えたとしても、候補者数の増加は見込めない中で、
いかに、効率的にマッチング率を高めるか、という点の方が
実は課題が大きいように、私としては思います。
求人の数が多ければ多い程、候補者側は、どう求人を選ぶべきか、わからず迷いますし、
候補者の数は、多ければただ良いのではなく、
求人企業も、自社の求める要件に満たした候補者だけと、効率的に接点を持ちたいと考えているためです。
物販サイトではあれば、メーカーや小売企業にとって、
自社商品を買ってくれさえすれば全て優良な見込み客になり得ると思いますが、
求人企業にとっては、誰でも良いわけではないのです。
面接等の選考活動にも工数・コストがかかるわけですので・・
ただし、上記のマッチング率低下の課題は、あくまで既存大手メディアの課題となりますので、
後発参入の求人メディアとしては、あくまで、
まずは量を担保するフェイズという意味で、まだ先の課題かもしれません。
個人的には、既存の求人情報には、個性がなく、情報量も少ないと感じているため、
キュリアのように、候補者側が欲しい定性的な情報を、取材形式で集められるのであれば、
それはそれでコンテンツとしての価値があり、マッチング率向上に
一定寄与する可能性もあるのかなと感じています。
是非ヤフー、キュリアには、業界を変えていく、新しいチャレンジを
続けていってもらえたらと思っています。
※Yahoo!ニュースでお世話になっているのに、偉そうにごめんなさい・・。
膨大にある求人の中から、どのように自分に合った求人を選ぶべきかに
迷われている転職希望者の方は、私までお気軽にご相談ください(笑)
キャリア相談なら、IT/WEB業界の転職エージェント・アクシス株式会社
今回は長くなりました。
今後も定期的に、これからの働き方・「働き方3.0」について、
情報発信・レポートをしていきたいと思いますので、よろしくお願いします!