【32年ぶりに世界王者になったドジャース】

　ドジャースがワールドシリーズ第6戦でレイズを3-1で破り、シリーズ成績を4勝2敗とし、今シーズンの頂点を極めることに成功した。チームとしては実は32年ぶりとなる通算7度目の世界王者の座だった。

　今シーズンは新型コロナウイルスの影響で60試合の短縮シーズンで行われる中、開幕前からチーム戦力はMLB屈指との評判で、ワールドシリーズ制覇の大本命と目されてきたのがドジャースだった。

　いざシーズンに突入しても評判通りの強さを発揮し、両リーグ最多の42勝を記録し、早々にポストシーズン進出とナ・リーグ西地区8連覇を決めていた。

　その強さはポストシーズンに入っても変わらず、ワイルドカード、地区シリーズと無敗で勝ち上がると、リーグ優勝決定シリーズでブレーブスを第7戦まで持ち込む激戦を制し、2年ぶりのワールドシリーズ進出を決め、遂に念願の世界王者に輝いた。

【名実ともにドジャース王朝の完成】

　すでにドジャースは、黄金期を迎えていると言われ続けている。前述通り地区優勝8連覇は、現時点での最長連勝記録で、MLB史上でも14連覇（1991~93年の2地区制も含む）を記録したブレーブス、9連覇のヤンキースに続くものだ。

　だがブレーブスとヤンキースは連覇中にワールドシリーズ制覇を果たしているが、これまでドジャースは2度ワールドシリーズに進出しながら涙を飲んでいた。それだけに今回の世界王者奪取で、ようやく名実ともにブレーブス、ヤンキースに匹敵する王朝を築き上げることになったわけだ。

　優勝セレモニーでマーク・ウォルター・オーナーの次に挨拶に立ったアンドリュー・フリードマン球団社長は、自身3度目のワールドシリーズ挑戦でようやく頂点に立ち、以下のように話している。

　「このトロフィーを持ち帰るのにあまりに長い時間を要してしまいました。ファンの皆さんに感謝しています。でも皆さんを待たせてしまい申し訳なかったです。これまでに忍耐強く待ってくれてありがとう。皆さんの元に持って帰ります。我々はチャンピオンです」

　編成部門の総責任者として王朝を築き上げた、わずか43歳の立役者は、どことなく誇らしそうに見えた。

【ドジャースでも光った選手育成とリクルート】

　フリードマン球団社長は2014年10月に、チームの変革を期待されてドジャースに迎え入れられた。

　当時のドジャースは2年連続で地区優勝を果たしていたものの、2014年シリーズは期待されながらも地区シリーズで敗退。またチームは高額選手が何人も揃い、すでに年俸総額はMLBトップになるほど膨れ上がっている状態で、過渡期を迎えようとしていた。

　一方、ドジャース入りするまでのフリードマン球団社長は、2004年にレイズ入りすると、2006年に28歳の若さでGMに就任。その後低予算チームながら選手育成とリクルートでチームを一から作り上げ、GM3年目の2008年にチームを初のワールドシリーズに導き、2014年まで地区優勝2回、ポストシーズン進出4回と、強豪チームへと変貌させていた。

　こうしてドジャース入りしたフリードマン球団社長は、レイズ時代と変わらぬ手腕を発揮してみせた。2015年以降もチームは常勝チームとして地区優勝を続けながらも、大胆な選手入れ替えにも着手。少しずつ主力選手若返りを図っていった。

　一方で若手有望選手の獲得にも積極的に取り組み、ドラフトやトレードでマイナー組織を充実させていった。

　その甲斐あって2018年シーズンは年俸総額を大幅に縮小し、MLB6位まで下げることに成功。それでもチーム戦力を落とすことはなかった。

【出場登録28選手の中で古参選手は5人のみ】

　今回のワールドシリーズに出場登録された28選手をみても、フリードマン球団社長の辣腕ぶりを確認することができる。

　28人のロースターの中で、フリードマン球団社長が就任する前の2014年以前から、ドジャースの選手として公式戦に出場していたのは、クレイトン・カーショー投手らたった5人しかいない。

　それ以外の選手たちをみると、他チームからトレードで移籍してきたのがムーキー・ベッツ選手ら8人、FA選手として契約したのがAJ・ポロック選手ら5人、ドジャースのマイナー組織にいて2015年以降にMLBデビューしたのがコディ・ベリンジャー選手ら4人、2015年以降にフリードマン球団社長がドラフト指名した選手がウォーカー・ビューラー投手ら6人と、フリードマン球団社長の手で作り上げたチームなのだ。

　これまでもフリードマン球団社長の評価は十分に高いものだったが、世界王者の座を獲得したことで、現在カブスの球団社長を務めるセオ・エプスタイン氏や、マーリンズとレッドソックスを世界王者に導いたデイブ・ドンブロウスキ氏のように、新たに“優勝請負人”の称号も手に入れた。

　フリードマン球団社長の下、ドジャース王朝はまだまだ栄華を極めることになりそうだ。