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小さければ小さいほど「エビ煎餅」に似てくるエビイロカメムシ

天野和利時事通信社・昆虫記者
「エビ煎」カメムシと呼びたいエビイロカメムシ幼虫。

 エビイロカメムシは、エビイロ(海老色)の名を持つからには、よほど赤いのだろうと、期待して探す人がいるかもしれない。しかし、ススキ原で良く見かける多くの成虫の体色は地味な黄土色だ。

 しかし、そこでがっかりしてはいけない。成虫がいれば近くに幼虫もいるかもしれない。そしてその幼虫がまさに「エビ煎餅(せんべい)」のようで、相当に可愛いのだ。

 エビイロカメムシの幼虫は、小さいほど円形に近く、白い生地にエビを焼き込んだ通称「満月」と呼ばれる代表的なエビ煎に良く似ている。少し成長した幼虫は、やや細長いエビ煎になる。

だんだん細長いエビ煎に変わっていくエビイロカメムシ幼虫。
だんだん細長いエビ煎に変わっていくエビイロカメムシ幼虫。

 最初に「成虫は地味」と書いたが、写真を検索するとエビイロの名に恥じない、ピンク色や薄紅色の個体もいるようだ。

 そして正面から見た成虫の姿は、三角に尖った頭部と、扇形に広がった胸部が精悍(せいかん)な印象を与える。また、実際に触ってみた人々によると「臭くないカメムシ」という点も好感が持てるという。昆虫記者も、次に見つけた時には、じっくりと臭いを嗅いでみようと思う。

 そして最後は、目(複眼)に注目してほしい。体色が黄土色の成虫でも、目の色はエビイロの名を主張する赤なのだ。

地味な黄土色のエビイロカメムシ成虫。
地味な黄土色のエビイロカメムシ成虫。

エビイロカメムシ成虫の正面顔。三角の頭部と扇形の胸部が精悍な印象。赤い目にも注目。
エビイロカメムシ成虫の正面顔。三角の頭部と扇形の胸部が精悍な印象。赤い目にも注目。

 ススキ原はバッタぐらいしかいないと思われていて、虫好きの子どもたちの間でもあまり人気のない場所だ。しかしエビイロカメムシの存在を知ると、ススキ原はずっと楽しい場所に変わるかもしれない。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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