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東京都台東区/6/16迄!上野・国立科学博物館の摩訶不思議な企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」

デヤブロウ街歩きWebライター(東京都台東区)

 今回は上野の国立科学博物館で開催中の企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」をご紹介。
 博物館の日本館1階中央ホールおよび企画展示室を会場としており、海生無脊椎動物の摩訶不思議な世界に潜り込んでいくような、風変わりで楽しい企画展です。
 こちらは常設展料金のみで鑑賞できるほか、同じく科博で開催中の特別展「大哺乳類展3」のチケットでも鑑賞OKなので、企画展と特別展の内容を見比べるのも面白そうです。会期は6/16(日)まで!

企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」ポスター
企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」ポスター

◆第1章から大ボリュームのホール展示

 「知られざる海生無脊椎動物の世界」展示は全4章の構成で、第1章は日本館1階の中央ホールを、続く第2〜4章が企画展示室を使用しています。

 第1章「多様な動物の世界」でまず驚かされるのは、中央ホール全体を広々と使った展示方法そのものでしょう。円形のパーティションを使い、様々な生き物の写真がぐるりと私達を取り囲んでいて、結構な迫力!

刺胞動物門ベニウミトサカ(写真:今原幸光)
刺胞動物門ベニウミトサカ(写真:今原幸光)

 ここで一挙紹介されているのは、現世の動物(後生動物)全34門。その中には私達人類も属する脊椎動物や、エビやカニなど節足動物、貝類などの軟体動物も含まれますが、大半の門は「コレ本当に動物なの…!?」と驚いてしまうような海生無脊椎動物達です。

 この展示が工夫されているのは、ホール真ん中の床面から系統樹(生命の進化や枝分かれの過程を木枝のような形で示したもの)が全方位に伸びていて、それらが壁面の後生動物達まで繋がっていること。生命進化の過程を自分の目と歩みで追うような没入感もさることながら、じっくり見ていくと「あいつとこいつ、見た目も生態も全然違うのに、実は近縁なのか…」という驚きにも出くわします。

有櫛動物門シンカイウリクラゲ(所蔵:国立科学博物館)
有櫛動物門シンカイウリクラゲ(所蔵:国立科学博物館)

 第1章の内容は、私達がふだん「動物」というものに抱いているイメージが、実際には「動物」全体の狭い一部分でしかないと気付かせてくれます。

 「動物」と聞けば、一般には哺乳類や鳥類など、骨・筋肉・内臓などの揃った地上の生き物を連想しがち。それらは実際のところ、後生動物全34門のなかでも「脊椎動物」というわずか1枠の、さらにごく一部分にすぎないのです。この地球上には、私達が想像もつかないような海生無脊椎動物ワールドが広がっています。

◆第2章からは海生無脊椎動物達の奇妙奇天烈な世界へ

 第1章でも展示ボリュームは結構なものですが、その後は企画展示室に入って、さらに詳細な「海生無脊椎動物とは?」という説明・紹介パートに進んでいきます。

 第2章「不思議な海生無脊椎動物の形や生態」では、たいへんに摩訶不思議な海生無脊椎動物の体の仕組みと、その個性的すぎるライフスタイルを説明。第1章よりも広い展示スペースが確保されています。

 自重を支える仕組み、呼吸、生殖、捕食…誕生から死までのほとんどが人間と違う海生無脊椎動物の生態は深堀りすればするほど驚かされます。

 第3章「人とのかかわり」では、海生無脊椎動物が私達人類の食文化・工芸・資材・研究分野に大きな恵みを与えてくれている側面や、逆に害をもたらす事例が紹介されています。

 島国・日本の食文化は魚に限らず、貝類・イカ・タコ・海藻類・ほか様々な海の幸をふんだんに採り入れて発展してきました。食材として用いられる海生無脊椎動物の標本を見ていると、「どんな味がするんだろう?」または「コレ美味しいんだよなあ〜!」などと想像がはかどって、お腹が空いてくるかも知れませんね。

 第4章「海生無脊椎動物を理解する意義」では、地球環境の変化で海生無脊椎動物も危機に晒されていることや、生物多様性を理解するうえでの海生無脊椎動物の大切さが説かれていました。

 昨今は地球温暖化等によって海の環境も刻々と変化しています。今まで当たり前に摂取していた海の恵みや、豊かな生物多様性が、今後も長く続く保証はありません。海生無脊椎動物の保護に向けて、今後はより一層、私達ひとりひとりの努力や価値観の向上が求められるようになるでしょう。

 展示の締めくくりは「当たり前でない生き方を教えてくれる海の生き物たち」という、シンプルながら強いメッセージでした。

 人間社会も「当たり前」とされてきた様々な慣習・価値観の見直しや、多様性の尊重が訴えられるようになって久しくなります。海生無脊椎動物達の常識や固定観念が通用しない、ある意味では自由闊達にすら思える在り方に、私達が学ぶ事は多そうです。

国立科学博物館・企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」
【開催期間】2024年3月12日(火)〜6月16日(日)
【開館時間】9:00~17:00
     ※4月27日(土)~5月6日(月)は19:00まで。
     ※入館は各閉館時刻の30分前まで。
【休館日】月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
    ※3月25日(月)、4月1日(月)、30日(火)、6月10日(月)は開館
【入館料】一般・大学生630円(団体510円)(税込)
    ※常設展示入館料のみで観覧可。
    ※団体は20名以上。
    ※高校生以下および65歳以上は無料。
【開催場所】国立科学博物館 日本館1階 企画展示室および中央ホール
【住所】東京都台東区上野公園7−20
【主催】国立科学博物館
【電話番号】050−5541−8600(ハローダイヤル)
【リンク】ホームページ

街歩きWebライター(東京都台東区)

カフェ・居酒屋探し、博物館・美術館見学、銭湯巡りや寺社探訪など、都心部の街歩きが大好き!特に都内で暮らし始めた頃に住んでいた浅草近辺、博物館・美術館が沢山ある上野界隈など、台東区内を月に2~3回は散策しています。東京23区でも面積最小ながら、歴史と見所が詰まった台東区の魅力を積極的に発掘・発信していきます!

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