まだまだ国宝級の美術品が眠っている!? 皇室の名宝ひしめく「皇居三の丸尚蔵館」
訪日外国人の数が回復し、日本の観光地が賑わっている。外国人観光客が訪れる東京の人気スポットといえば、天皇がお住まいになる皇居だろう。
その証拠に海外からのインバウンド需要の伸びに比例し、今年に入って皇居東御苑の入園者も増え、4月には一般来訪者の数が開園以来3500万人を突破した。
今も皇居を訪れて周囲をぐるりと見まわせば、外国人観光客の姿が多く、あちこちで英語のガイドさんの声が聞こえてくる。ここは日本の魅力が詰まった場所なのだ。
その皇居東御苑に、11月3日、皇室に代々受け継がれてきた美術工芸品を収蔵・展示する「皇居三の丸尚蔵館(さんのまるしょうぞうかん)」が、リニューアルオープンした。いわば、皇居内にある美術館兼博物館だ。
平成5年に開館した三の丸尚蔵館を建て替え、展示面積を大幅に増やした。3年後には現在工事中の新たな建物と一体化し、カフェや休憩所もできるという。
現代まで連綿と継承されてきた貴重な皇室コレクションの数々が、ここでお目見えすることになる。
◆燦然と輝く皇室の国宝群、両陛下ゆかりの品々も
現在開催されている「皇室のみやび―受け継ぐ美—」(〜12月24日まで)では、三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された、伊藤若冲の代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」、元寇を伝える絵巻「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)」、大和絵の最高峰といわれる「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」、平安時代三蹟の一人・小野道風の書「屏風土代(びょうぶどだい)」などの美術品が展示されている。
また、「令和の御代を迎えて―天皇皇后両陛下が歩まれた30年」と題された特別展示(〜12月24日まで)では、両陛下ゆかりの品々も。
「結婚の儀」での両陛下の装束、「宮中饗宴の儀」で雅子さまがお召しになった杏色のローブモンタント、愛子さまが一般のお宮参りにあたる儀式で身に着けられた御初召、上皇ご夫妻から贈られた犬張子など、貴重なものを間近で見ることができる。
今回、初公開されたものもある。天皇陛下が50年前から愛用されている天体望遠鏡と幼少時に使用されたヴァイオリン、雅子さまが使用されていたフルートなどだ。
◆受け継がれし国宝級の美術品の数々
皇居三の丸尚蔵館の収蔵品は約6100件、2万点にのぼる。皇室に代々受け継がれてきた名宝は「御物(ぎょぶつ)」と呼ばれ、日本の文化的遺産として、代々の皇室が保護し、現代へと守り伝えてきた。
しかし、「御物」の中には、国宝級の美術品が多数あるにかかわらず、宮内庁の管轄下にあったため、文化庁が管理する指定文化財の対象外となっていた。
その壁を取り除くきっかけとなったのが、1997年に奈良の東大寺正倉院の建物が国宝に指定され、世界文化遺産に登録されたことだった。
「御物」を巡って、その価値を広く国民に伝えようと変わっていったのは、2018年、宮内庁の有識者懇談会による「収蔵品の価値を分かりやすく示す」との提言であった。これによって宮内庁が管理する三の丸尚蔵館収蔵品も、国宝や重要文化財に指定されるようになったのである。
令和3年、三の丸尚蔵館が収蔵する5件が初めて国宝に指定され、現在ではさらに増え、全部で8件が国宝に指定されている。
そもそも、国宝に指定するには、文化審議会の審議を経て、大臣に答申し、最終的に決定する。
三の丸尚蔵館の収蔵品に関して、現在も文化庁は人数を増やして調査しているので、まだまだ期待できそうだ。
皇居三の丸尚蔵館が開館したことで、訪れた人びとが皇室ゆかりの名宝に触れて、時空を超えて現存する、日本の芸術文化を目の当たりにすることができるようになった。
旧江戸城である皇居は歴史が息づき、緑豊かな庭園で自然を味わい、さらに文化を堪能できる場所となれば、今以上に多くの人たちで賑わうようになるだろう。