ぐるなびのクラブミシュランは成功するのか?
クラブミシュラン公開
2015年4月16日、大手グルメサイトを運営する株式会社ぐるなびは「ミシュランガイド・デジタル」を「クラブミシュラン」として新しくリニューアルしました。ミシュランガイドと提携してミシュランガイド・デジタルを開設し、有料会員を募って情報を提供していましたが、今回は一歩先に進めた状況となっています。
※公式サイトでは「クラブミシュラン」と「クラブ・ミシュラン」の表記が混ざっています。本記事では前者を使用します
クラブミシュランの紹介に記載されている情報をまとめると以下の通りです。
クラブミシュランは、ミシュランガイドのセレクションから、お店探しと予約の相談ができる、食事を大切にする人のための会員制サイトです。
- レギュラー会員
月額 324円、年額 3240円(税込)
- ゴールド会員
月額 5400円、年額 16200円(税込)
私はミシュランガイド・デジタルの会員になっていたので、自然とクラブミシュランのレギュラー会員へと移行しています。使ってみた体験をもとにして、それぞれの機能について考えていきましょう。
ミシュランガイドの検索
<ミシュランガイドの検索>は以前からあったものですが、クラブミシュランの前身であるミシュランガイド・デジタルではこの機能とブックマーク機能くらいしかありませんでした。
検索条件には「エリア」「カテゴリ」「評価・快適度」「詳細条件」があり、以前と同じようですが、それぞれの条件で複数の項目を指定できるようになったり、ページが見易くなったりと、よくなっています。
セクション案内サービス
名前や都道府県を登録した上で「場所」「料理カテゴリ」「重視すること」を指定すると、専門スタッフがそれを考慮していくつかの候補店をメールで送ってくれるというサービスです。<ミシュランガイドの検索>よりも、検索条件は乏しいと言えるでしょう。
条件を入れて登録するとすぐに自動返信メールが届き、通常であれば10分後くらいにメールで回答があると記載があったのですが、実際には30分くらいで返信が届きました。
候補店に選ばれたレストランは可もなく不可もなくといったところでしたが、なぜそれらが選ばれたのか、そこでは何がお勧めなのかやどのように振る舞ったらよいのかなどは記載されていませんでした。せっかく専門スタッフが時間をかけて考えて選んでくれたというのに、これでは機械的に選ばれたのとほとんど差がありません。
<セクション案内サービス>が<ミシュランガイドの検索>よりも優れている点を見出だせず、使う機会が思い浮かびませんでした。
予約代行コンシェルジュ
予約を頻繁に行う人にはよいサービスですが、日本ではそもそも予約代行が一般的ではなくイメージしにくいので、簡単には広まっていかないかも知れません。
コンシェルジュの質によって大きくサービスの良し悪しが変わるので、いかに優秀なコンシェルジュを揃えられるかにかかっているでしょう。
パリのミシュランガイドの検索
パリへ行く予定があり、おいしいレストランを探したい人には便利ですが、アウトバウンドが減少している現状ではあまり伸びるとは思えません。本場パリだけではなく、世界各国のミシュランガイドを検索できるようにして、海外旅行する際にはクラブミシュランで調べようという展開にすればもっと有用になったように思います。
ウェイティングサービス
掲載されているレストランはほとんどが予約を取りにくい人気店なのでキャンセル待ちできるのは便利ですが、クラブミシュランが他のチャネルと比べて、優先的に案内されるかどうかは気になるところです。
ただ、これに対応しているレストランは現状では1店舗しかないだけに、今のところはあってないようなサービスと言えます。
クラブミシュラン限定プラン
そのレストランで提供されている通常コースとは違うものなので、通常コースと比べてどれくらいお得であるか比較は難しいと言えます。無理にイレギュラーなプランを作って評判を落としてしまっては仕方がありませんし、ミシュランガイドに掲載されるような有名レストランがこういった例外を増やすプランを提供する理由も見付かりません。
そういったこともあってか、今のところ3プランしか掲載されていませんが、今後クラブミシュランの会員にとってもレストランにとっても意味のあるプランを作れるかどうかが重要になります。
会員限定イベント
今のところ1イベントが開催され、1イベントが予定されているだけです。開催されているのはアンケートに答えるとミシュランガイド掲載店の食事券などが当たるというイベントです。そもそも懸賞付きアンケートをイベントとすることに違和感もありますが、わざわざ有料のクラブミシュラン会員になっているようなグルメ通が、普通の食事券をそれほど欲しがるとは思えません。
費用はかかりますが、海外シェフを招聘するガラディナーやスターシェフを囲むイベント、特別コラボレーションなどの招待券であればファンには嬉しいところでしょう。
次に予定されているイベントはプレゼントキャンペーンですが、今後もこういった懸賞が続くのであれば、企画の意図を見直した方がよいと感じます。
その他の機能
クラブミシュランの説明には挙げられていませんでしたが、会員だけが読める特集記事もあり、今のところ1本が掲載されています。特定のレストランにスポットを当てたオリジナル記事となっており、しっかりと取材しているので読み応えがあります。
ミシュランガイド掲載店と深くつながりを持てるクラブミシュランであるだけに、こういった方向性は正しいでしょう。
クラブミシュランの現状
以上を鑑みると、クラブミシュランは以前よりも機能は多くなりましたが、まだ完成には程遠い状態なので、レギュラー会員はまだしも、ゴールド会員となると割高に感じられます。それなのにどうしてそこまでして性急になり、ミシュランガイドとさらに関係性を強めてクラブミシュランを公開する必要があったのか疑問に感じます。
<セレクション案内サービス>を意味あるものとし、<ウェイティングサービス><クラブミシュラン限定プラン><会員限定イベント>で早急に厚みを増していくことが、何よりも重要なのではないでしょうか。
ぐるなびの今後
ぐるなびは「【クッキングコンテストの今】独学者 杉本敬三氏が優勝した「RED U-35」は何が新しいのか?」でもご紹介した「RED U-35」の推進役となったり、「こちら秘書室」で高級レストランの接待のキーマンである秘書を押さえたり、「日本オーベルジュ協会」を促進してオーベルジュとつながりを持ったりと、素晴らしい育成活動と啓蒙活動を行っています。
こういったビジネスに直結しない中長期的な施策を行う一方で、最近では、「ippin」や「メシコレ」といったキュレーションサイトを立ち上げるなど、他のグルメサイトに対して積極的に対抗していますが、レストランからではなくユーザから課金するという特性を持つクラブミシュランはぐるなびの新しい戦略であると言えるでしょう。
ぐるなびは企業理念に<”日本発、世界へ”「食」に繊細なこだわりを持つ国民性を生かし、日本ならではのオリジナリティあふれるビジネスを展開します>を掲げていますが、ミシュランガイドのような権威と強く結び付くことで、<日本初><オリジナリティ>といった素晴らしい理念が揺るがないことを願っています。
元記事
レストラン図鑑に元記事が掲載されています。