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【JAZZ】昭和の香りを波止場に届ける異色の声と音楽のコラボレーション(VOICE SPACE公演)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
VOICE SPACEヨコハマ・インスピレーション 波止場の中也、風のなかの賢治
VOICE SPACEヨコハマ・インスピレーション 波止場の中也、風のなかの賢治

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、パフォーマンス集団VOICE SPACEによる横浜公演。

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VOICE SPACEは、東京藝術大学音楽学部の管弦楽、声楽、邦楽、作曲を専攻する学生・院生・卒業生らによる現代詩研究会が母体となって2004年に結成。それまでのイメージやリズム先行の言葉によるパフォーマンスを見直し、詩と音楽の響き合いを追求することを核に活動を展開するグループだ。

今回の公演は、中原中也と宮澤賢治という同時代の言葉のクリエーターにスポットを当てた内容。1907年生まれで山口出身の中原中也は30歳で夭折するも350篇以上もの詩と武勇伝を残した詩人・歌人であり、死後に多くの音楽家が彼の詩に曲を寄せている。宮澤賢治は1896年生まれで岩手出身の詩人・童話作家。彼もまた37歳という若さで逝去し、生前は無名に近かったが、故郷・岩手をモデルにした架空の理想郷“イーハトーブ”が繰り返し登場する作品などが評価され、死後急速に国民的作家として人気を博すようになった。

開港のざわめきを言葉にのせて

今回のVOICE SPACEは、第1部で公演の地である横浜を題材にした中也の詩「秋の一日」を初演するほか、2012年中原中也賞を受賞した暁方ミセイの詩、2013年現代詩花椿賞を受賞した藤原安紀子の詩を取り上げる。ちなみに、VOICE SPACEは初演当初から中也をたびたび取り上げている。第2部は、宮澤賢治の「春と修羅」と「セロ弾きのゴーシュ」、そして賢治の詩をめぐる音楽ファンタジー「おれはひとりの修羅なのだ」の赤レンガ倉庫バージョンというラインナップ。

会場となる横浜赤レンガ倉庫は、海運の関税施設のひとつとして明治の息吹を伝える歴史的な建築物だ。こうした場所を若手アーティストの活動の場として開放することで新しい音楽の発信に取り組む、SOUND DISCOVERYというプロジェクトのひとつとなったのがこの公演。

言葉と音楽がどのような出逢いを経て溶け合い、はたまた対峙するのかーー。

では、行ってきます!

●公演概要

VOICE SPACEヨコハマ・インスピレーション

―波止場の中也、風のなかの賢治―

11月16日(日) 開場15:30/開演16:00

会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール

出演:中村裕美(作曲・ピアノ)、小田朋美(作曲・ピアノ)、小林沙羅(ソプラノ)、薬師寺典子(ソプラノ)、吉成文乃(メゾソプラノ)、 渡辺元子(尺八)、澤村祐司(箏・三味線)、石井千鶴(鼓)、豊田耕三(アイリッシュフルート)、大石俊太郎(サックス)、古川麦(ギター)、関口将史(チェロ)

♪VOICE SPACE公演@代官山ヒルサイドプラザ

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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