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新型コロナ後の世界は可能性大―ピンチはチャンス、求められる社会変革

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言下の東京(写真:つのだよしお/アフロ)

  新型コロナウイルス感染拡大により、世界各国で多くの人々が病気に苦しみ、命を落としていることは、本当に痛ましいことだ。だが、ピンチはチャンスでもあり、新型コロナ禍の教訓から社会をより良くしていくことも、また可能なのかもしれない。都市封鎖や一律の現金給付など、各国が思い切った政策を断行している中、今まで政治が渋ってきたことを実現させ、閉塞感を抱えた社会が大きく変えることができるかもしれないのだ。他方、世界全体が大きな岐路に立っていて、それは極めて危うい方向に向かうかもしれない。つまり、トランプ大統領のような自らの利益のためなら世界全体のことなど全く考えないというリーダーが大衆から称賛され分断が深まることや、個人の自由やプライバシーを軽んじ、中国のような全体主義が幅を利かせるようになることだ。また、日本においては、政治の報道への介入、あるいはメディア側の忖度がより悪化する危険性もある。だからこそ、人々の命や生活を守ることを最優先し、かつ人権や民主主義の原則を重んじて具体的な変革を行うことが重要だ。例えば、富の再分配や、より人間らしい生活の実現、軍事や戦争よりも人々のために財源が使われること、中長期的には人類の存亡も左右する環境問題へ対応すること、そして、これらの課題に人々が主体的に声をあげ、政治を動かしていくこと等が実現していくならば、新型コロナ後の社会には、大きな希望と可能性があるのだろう。本稿では、複数回にわけ、新型コロナ対策がもたらしうる社会変革について論じていく。

◯新型コロナが問う超格差社会

 本題に入る前に、まず、新型コロナウイルス禍によって亡くなった人々へ哀悼の意を、そして奮闘する医療関係者や闘病中の当事者に、敬意を表したい。新型コロナウイルスに感染した人々は本稿執筆時点で世界全体で約319万人、犠牲者数は23万人近くに及んでいる。イギリスの「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の感染症の専門家チームによれば、新型コロナ禍への対策を行わなければ、今年だけで世界全体で犠牲者は4000万人(日本の人口の約3分の1)に達すると予測され、それ故、各国での必死の対策が行われているのだ。正に世界を揺るがす空前の危機と言って過言ではないだろう。

 グローバル化との関係で言えば、新型コロナ禍以前から、経済のグローバル化にともなう貧富の格差の拡大が世界的に深刻化していた。国際NGOオックスファム・インターナショナルが今年1月発表した報告書によれば、世界の最富裕層2153人は、人類全体の6割を占める最貧困層46億人の総資産よりも多くの財産を保有しているという。格差拡大は社会不安も招く。トランプ氏が米国大統領となるような、反知性主義的なポピュリズムや、差別や偏見、断絶が広がる状況をつくってきた。トランプ氏が2016年の米国大統領選で勝利したのも、自動車や鉄鋼、石炭等のかつての米国の主要産業の中心地であったが産業空洞化で衰退した、いわゆる「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる米国中西部地域での支持を多く獲得したからだと言われる。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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