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オリックス打線をグレードアップさせ始めたMLB通算“0本塁打”のA・ロッド

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
7月に入りチャンスに強い打撃を披露しているアデルリン・ロドリゲス選手(筆者撮影)

【メジャー通算“0発”のオリックス新加入のA・ロッド】

 「A・ロッド」という愛称を聞いて、野球ファンの誰しもが思い浮かべるのは、ヤンキースなど3チームに在籍し、MLB歴代4位の通算696本塁打を記録したアレックス・ロドリゲス氏だろう。

 2016年シーズン途中で現役を引退した同氏だが、現在はESPNなので解説者を務める傍ら、婚約者のジェニファー・ロペス氏とともにメッツの球団買収に乗り出すなど、今も世間から注目を集める存在だ。

 彼が上記の愛称で呼ばれるようになって以降、MLBで活躍する選手に対し、「~・ロッド」という愛称がつけられるようになった。その最たる例が、MLB通算437セーブを記録しているフランシスコ・ロドリゲス選手の「K・ロッド」だ。

 その傾向を踏襲するならば、今シーズンからオリックスに入団したアデルリン・ロドリゲス選手も、「A・ロッド」という愛称になるのだろう。だがこちらのA・ロッドは本家とは違い、MLB通算本塁打は0本でしかない。それもそのはず、米国でプレーしていたプロ11年間で彼は一度もMLB昇格を果たせなかった。

【開幕直後は不振も徐々に頭角を現す】

 ロドリゲス選手のマイナーでの成績自体も、決してずば抜けたものではない。マイナー通算で174本塁打を放っているものの、MLBに最も近い3Aに在籍していたのは昨シーズンの1年間のみ。ずっとMLB昇格からかなり遠い存在であり続けた。

 2018年にはロッテの入団テストを受験した過去もあるようだが、不合格に終わっている。同じく今シーズンからオリックスに入団した、MLBで実績十分なアダム・ジョーンズ選手と比較すれば、ファンの期待値も決して高くなかったはずだ。

 ところがここ最近は、ジョーンズ選手以上に存在感を示し始めている。シーズン開幕から先発起用されながら6月の月間打率は.220に終わったものの徐々に調子が上がり始め、ここまで(7月12日時点)7月の月間打率は.330を残している。

【得点圏打率は4割超え!】

 特にロドリゲス選手の活躍が光ったのが、有観客試合に移行した10、11日の日本ハム戦だった。

 10日は1-3で迎えた9回1死一、二塁の場面で、弾丸ライナーで左翼席に突き刺さる値千金の逆転サヨナラ本塁打を放つと、11日には1-1の8回1死満塁の場面で決勝2点タイムリー打を放ち、連日チームの勝利に貢献している。

 現時点での打率は.270だが、得点圏打率は.421とチャンスでの強さを見せている。ここまで14打点も、Tー岡田選手に次いでチーム2位の成績だ。

【ロドリゲスが確実に打線を活性化】

 「こうしてファンの方が球場に初めて来られた試合で、この結果になって非常に興奮しています。とにかく自分の仕事をすることだけを考えていました。ジョーンズ選手と岡田選手がしっかり塁に出てくれたので、しっかり捉えることだけを考えていました」

 10日の試合でヒーローインタビューに立ったロドリゲス選手は、自分の本塁打というよりも周りのお膳立てによりチームの勝利に貢献できたことを喜んだ。お立ち台の上でも派手なパフォーマンスをするわけでもなく、彼の真面目な性格を窺わせた。

 ここ最近のロドリゲス選手の活躍は、チームにとって相当に大きいものだ。彼が6番に座ることで、吉田正尚選手→ジョーンズ選手→岡田選手→ロドリゲス選手と、左と右が交互に並ぶクリーンアップを形成。どこからでも本塁打が期待できる重量打線が完成しつつある。

 ここまでチーム打率は.244でパ・リーグ2位にランク。すでに打撃不振に苦しんだ昨シーズンとは明らかに変貌を遂げている。

 このままロドリゲス選手がその愛称に相応しい活躍を続けることができるなら、現在最下位に甘んじているオリックスの快進撃が始まるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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