16,655人の小学生による排便記録でわかる便秘事情
日本トイレ研究所は、これまで学校トイレの改善やトイレ・排泄教育の必要性を提案してきました。それは、子どもたちが学校で安心して排泄できる環境を整えなければ、排泄することを我慢してしまい、便秘や体調不良につながっていくことが危惧されるからです。
2021年11月10日(水)~11月16日(火)の7日間、子どもたちの排便の実態についての現状把握を目的として、全国の小学校(117校16,655人の児童)の協力を得て、排便記録を実施しました。
ちなみに日本トイレ研究所は、11月10日(いいトイレの日)から11月19日(世界トイレの日)をうんちweekとして、自分の便の状態を知ることで健康について考えるきっかけをつくることに2020年より取り組んでいます。
本記事では、排便記録の結果からみた、子どもの排便事情について整理します。
便秘が疑われる児童は14.6%
排便記録では、便が出たかどうかと、どのような形の便なのかを7日間記録してもらいました。
『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン』に掲載されている慢性機能性便秘症診断基準( RomeⅢ 、4歳以上の小児)を参考に、7日間のうちに硬い便(ブリストル便形状スケール「1 ころころ」または「2 ごつごつ」)が2回以上出ている人を抽出しました。
16,655人のうち、硬い便が7日間のうちで2回以上の児童は、2,429人(14.6%)でした。なお、低学年が最も多く、1年生女子で19.9%、1年生男子では16.2%となりました。高学年になるにつれ減少傾向にありますが、一部は改善されず便秘が疑われる状態が続いていると考えられます(排便記録の調査結果はこちら)。
今回の結果について、子どもの便秘治療を専門とする小児外科医の中野美和子医師からは、次のようなコメントを頂きました。
排便記録で食事や生活を整えよう
排便記録により便秘状態である子どもが一定数いることが確認できました。前述のとおり、排便は子どもの心身の状態を表す指標ですので、この結果を深刻に受け止めるべきだと考えています。排便状態を踏まえて、学校のトイレ環境や生活習慣の改善等にフィードバックしていくことが大切です。
また、子どもの便秘を成人期に持ち越さないためには、早期の適切な対応や治療が大切です。そのためには本人や家庭及び学校等が排便状態について理解することが必要になります。
排便の状態を自身で記録をすることで、食事や生活習慣に気をつけるなど行動に変化があらわれます。子どもにとっては、排便をチェックして記録するという行為そのものが、主体的に自身の体の調子を意識することに役立つので、自己管理能力を身につけることにもつながります。
今回使用した「うんちチェックシート」をダウンロードすることもできます。親子で実施することも効果的ですし、大人が自身の健康管理のために実施することも大切です。排便の状態は、腸内環境の状態でもありますので、うんちチェックをお勧めします。
学校のトイレを安心できる場に
子どもの便秘要因としては、様々なことが考えられますが、その1つとしてトイレ環境があげられます。トイレが安心できる場になっていないと我慢につながってしまいます。
小学校のトイレは設備の老朽化により、「暗い」「くさい」「壊れている」「洋式便器が少ない」などの課題を抱えており、それが原因で子どもたちに我慢を強いていることが危惧されます。
というのも、この数十年の間に、家庭のトイレ、商業施設のトイレは、飛躍的に改善がすすみ、公共交通機関のトイレもかなり良くなりました。そのため、子どもたちは日頃、快適なトイレを使っているので、これらのトイレと小学校のトイレとのギャップが大きくなり、ストレスになっていると考えられるからです。このストレスは、トイレを我慢することにつながります。
「くさい」「壊れている」は論外ですが、トイレ設備や空間の質の改善も必要です。また、小学校の多くは指定避難所ですので、災害時は地域住民がトイレを使用します。障がいのある人や高齢者など、いろいろな方が使用するという観点からも、バリアフリーを意識した改善が求められます。
小学校は学びの場であると同時に、生活の場でもあります。トイレを我慢する環境では、集中して学ぶこと、友達と仲良くすること、元気よく運動すること、おいしく食事をすることもできません。学校には、子どもたちが安心できるトイレ環境が不可欠です。