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阪口哲也選手のネクストステージ

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
「写真はもういいでしょう」と苦笑いの阪口選手。いいえ、来年はもっと撮りますから!

2014年も残り1週間を切りました。きのう24日で虎風荘は閉まり、寮生たちも実家へ帰っています。鳴尾浜の施設はファーム事務所などの仕事納めまで使えるため、まだトレーニングに通っている選手がいるかもしれませんね。そのあとは冬休み。とはいっても新人選手の入寮、合同自主トレと年明け早々からすぐ賑やかになるわけで、本当に束の間です。

そういえば、緒方選手も春季キャンプ後くらいに退寮して一人暮らしをするとの新聞記事が出ていましたね。シーズン中に結婚した歳内投手をはじめ、このオフに寮を出たのは小豆畑選手、山本投手、伊藤和投手、秋山投手、そして阪口選手というところでしょうか。

「よかった。また野球ができる」

さて、ご報告が遅くなってしまい、ファンの方々は心配されていたでしょう。お待たせしてすみません。10月1日に戦力外通告を受けた阪口哲也選手が、社会人のパナソニックで野球を続けることになりました。私もヤキモキしていたのですが、ようやく正式決定!と言っていいみたいです。おめでとうございます。

とはいえトライアウトを受けず、でもずっと練習は続けていて、おまけに何だかニコニコ楽しそうだった哲ちゃん。鳴尾浜でご覧になっていた皆さんにとっては、十分に想定内だったかもしれませんね。

球団の人に、パナソニックから誘いがあると聞かされた時は「嬉しかった」と言います。

「また野球ができるんや」

それが最初に浮かんだ感想。そして「ちょっと考えて決めました。家族や周りの人たちと相談して。両親は喜んでいましたよ」とのこと。

先輩・梶原康司選手に学ぼう!

パナソニックといえば、阪神OBの大先輩もいて心強いでしょう。九州東海大学から2000年のドラフト8位で阪神に入団した梶原康司選手(同期には藤田太陽投手、狩野恵輔選手、赤星憲広選手、藤本敦士選手ら)はわずか4年で戦力外となったものの、松下電器から声がかかりました。そして1年目の2005年からもう4番を打つわ、ベストナインに選ばれるわの大活躍!以降は10年間も4番ってのもすごいですね。ことしの夏には、NPB出身者で初となる「都市対抗野球大会10年連続出場(うち2年は補強選手として)の表彰」を受けました。

また同じ2000年のドラフト4位で福岡大学からオリックスに入った相木崇投手も在籍。相木投手は2005年オフに前川勝彦投手とのトレードで阪神へ来たので梶原選手とは入れ違いですね。阪神は2年間で戦力外となり、2008年から松下電器(この年の10月、“パナソニック”に社名変更)へ。2011年12月の野球部引退後も同社で働いています。

さらに昨年まで阪神にいた橋本良平選手もパナソニックでプレーしましたが、残念ながら「もう野球は続けませんよ」と言っていたので、今季限りみたいです。パナソニックに残ることもないような…でも割と前向きな雰囲気を感じました。もう次に進んでいるんでしょう、きっと。私は橋本選手のユニホーム姿を結局、見に行けないままだったので心残りですねえ。

仕事と野球の両立も大丈夫です

11月末で虎風荘を出た阪口選手。今は実家で暮らしていて「学校(市立和歌山高校)に行ったりジムに行ったり、トレーニングは続けています」とのこと。年が明けてすぐの1月5日に社宅へ引っ越し、翌6日からチームの練習に合流すると言っていました。もうすぐですね。緊張していますか?「緊張はしていませんけど、早く移動なしで練習したいです」。移動なしで?「今はジムも学校も、家から電車で行っていて、これが大変なんですよ」。なるほど。鳴尾浜の環境がいかに素晴らしかったかを、今もって実感したようです。

パナソニックには正社員として入社しますが、それが1月からか4月からかというようなことは本人もまだわかっていないみたいです。おそらく1月1日付けでしょう。これからは仕事をしながらの野球で、そこは野原将志選手も藤井宏政選手も慣れるまで苦労したはず。ましてやクラブチームで野球を続ける穴田真規選手にとっては、何よりも大きな問題でした。

そういえば穴田選手の所属する和歌山箕島球友会に、阪口選手の同級生3人が大学を出て入団するそうですよ。「ピッチャーとキャッチャーと外野手」と阪口選手が言っていました。高校の同級生のみならず、野原選手や藤井選手、穴田選手ら“もとチームメート”とも来年は戦うわけですね。それに鳴尾浜での育成試合があるかも。とにかく早く仕事になれるよう祈っています。

パナソニックにいっても「一番練習するのは哲ちゃん」と言われてほしいですね。
パナソニックにいっても「一番練習するのは哲ちゃん」と言われてほしいですね。

「大丈夫です。仕事も頑張ります!」。前に、鳴尾浜へも来ると言っていたけど、難しいかな?「休みの日で、試合があったら見に行きたい」。高校出の同期6人衆のうち、昨年の穴田選手に続いて阪口選手が退団。残ったのは一二三選手、中谷選手、岩本投手、島本投手の4人となりました。それぞれが、それぞれの決意を胸に臨む5年目のシーズンです。

特に、阪口選手や穴田選手と同じ育成ドラフトで入団し、来年は念願の支配下選手としてスタートを切る島本投手にかかる期待は大きいでしょう。

では、新しい出発を前に抱負をどうぞ。「レギュラーとって、都市対抗に出たい!」。そうですよ、都市対抗も日本選手権も見に行きたいですからね。ただし社会人野球のシステムはまだよくわからないそうで「勉強します」と初々しい阪口選手。パナソニックのユニホーム、どうかな。「似合いますよ!」。即答のわりに何ら根拠はなさそうでしたけど(笑)。

西村投手、森田選手は?

最後に、阪口選手と一緒に戦力外通告を受けた西村憲投手は「野球は続けるつもりです!」と言って、意欲的に取り組んでいます。何か動きがあればお伝えしたいと思いますので、お待ちください。また森田一成選手は「まだ秘密」だそうですよ。野球を続けるか否かも「未定です。いずれわかります!」という返事。何だか文面がとっても明るかったんですよね。楽しみに待っていていいのかな?

―ユニホームが変わっても、たとえボールを追うことをやめても、ずっと変わらず応援していきたい―

それは鳴尾浜で一生懸命プレーしていた小虎たちを、猛暑の日も雨の中でも見守ってこられたファンの皆様にとって、ごく当たり前のことなのです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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