北インド洋のサイクロンの季節は春と秋 ミャンマーに上陸予報のサイクロンの日本への影響は来週?
大きな移動性高気圧
日本列島を大きな移動性高気圧がゆっくり通過中で、ほぼ全国的に晴れる所が多くなっていますが、この高気圧は勢力が強いものではありません(図1)。
5月11日(木)は上空に寒気が入っていた所に、日射で下層が暖められることで大気不安定となり、関東地方から静岡県では午後から積乱雲が発達し、激しい雷雨となって交通機関が混乱しました。
5月12日(金)も、ほぼ全国的に晴れますが、前日に比べれば、上空の寒気が弱まり、不安定な天気は一旦解消される見込みです。
晴れて気温が上昇する西日本や東海では夏日になる所もありますので、熱中症に注意が必要です。
ただ、下層に湿った空気が流れ込む影響で、西日本や東日本では午後は次第に雲が広がり、九州など一部でにわか雨がありそうです。
各地の10日間予報をみると、今週末は、西~北日本では低気圧や前線の通過で雨の所が多くなる見込みですが、雨量はそれほど多くないと思われます(図2)。
そして、来週の週明け以降は高気圧に覆われ、再び晴れの日が続く見込みですが、来週の週末も低気圧や前線の影響で雨や曇りの所が多くなる見込みです。
ただ、来週の天気予報に影響を与えるかもしれない現象が、北インド洋にある渦巻きです(タイトル画像参照)。
世界の熱帯低気圧
台風のような熱帯低気圧(最大風速が毎秒17.2メートル以上の熱帯低気圧)は、筆者が昔調査した昭和40年(1965年)~昭和55年(1980年)では、年平均82.7個発生しています。
現在も発生個数については多少の差があるものの、発生傾向については大差ないと考えられます。
これによると、台風のような熱帯低気圧が発生する海域は大別すると、北太平洋西部(年間発生数26.5個)、北大西洋(9.8個)、北インド洋(6.3個)、北太平洋東部(14.4個)、南インド洋(10.0個)、オーストラリアの北海上から南太平洋西部(15.8個)となっています(図3)。
つまり、日本に襲来する台風が含まれる北太平洋西部が一番多く発生しています。
同じ熱帯域でも、南太平洋東部と南大西洋ではほかの海域に比べて海面水温が低いことから熱帯低気圧はほとんど発生しません。
なお、発達した熱帯低気圧の名称は海域によって異なり、北太平洋西部が台風、北インド洋と南インド洋がサイクロン、その他の海域がハリケーンと呼ばれていますが、性質は同じです。
月別に発達した熱帯低気圧の頻度をみると、北インド洋を除いて、いずれも晩夏から初秋に発生数が多くなっています。
北半球なら7~9月、南半球なら12~3月に多く発生しているのですが、北インド洋だけは、5月と10~11月という2つのピークがあります。
熱帯低気圧が発生・発達するには、海面水温が高くて水蒸気が豊富であるという条件の他に、上層と下層の風速差が小さいという条件も加わります。
北インド洋では、夏のモンスーンが始まると、上層は強い東風、下層は西風となって風の上下差が非常に大きくなります。
このため、対流性の大雨が頻発するにもかかわらず、熱帯低気圧の発生・発達はほとんどありません。
つまり、北インド洋で熱帯低気圧が発生・発達するのは、夏のモンスーンが始まる5月と、終わりである10~11月なのです。
北インド洋のサイクロン
現在、北インド洋では、熱帯低気圧が発達し、サイクロンとなっています。
アメリカの空軍と海軍が合同で運営している合同台風警報センター(JTWC)が発表した予報では、非常に強い勢力で5月14日にはミャンマーに上陸するとなっています(図4)。
ミャンマーやバングラデシュなどでは大きな災害発生が懸念されています。
このサイクロンの日本への直接的な影響はありませんが、間接的な影響は懸念されています。
というのは、サイクロンの東側に流入している湿った空気の流れが、今後、南シナ海から中国大陸への流れになり、ひいては日本付近の前線活動に影響を与えるかもしれないからです。
梅雨入りの平年は沖縄県で5月10日、鹿児島県奄美地方で5月12日ですから、梅雨入りしてもおかしくない時季にきていますので、サイクロンに伴う雲域の東進してくる来週は注意が必要です。
タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。
図4の出典:アメリカの合同台風警報センター(JTWC)のホームページ。