東京ディズニーリゾート地方・海外客の比率上昇による増益効果と懸念点
東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営する「オリエンタルランド」が10月30日に2023年度上半期決算を発表した。先の記事「ディズニーパーク単価1.6万円2600万人で過去最高業績、新エリア開業キャパ250万人増1.7万円へ」では、主に以下の4点に注目して解説した。
- 中国人観光客が限られるなかで、外国人観光客比率が急上昇
- 客単価1.6万円を早々にクリア
- 新エリア開業でキャパを2,850万人まで、2,600万人体制から250万人増やそうとしていること
- 客単価を1.7万円まであげようとしていること
さらに、ディズニーテーマパークに詳しいフリーライターの林田周也さんに新たな注目点を考察していただいた。
特に気になる点は、関東からの来園者比率がかなり減少していることだという。地方からの来園者と海外ゲストの比率が高いことで、客単価増の要因になる一方、来年度以降の懸念材料になる可能性があるのではないかと指摘する(以下は文章引用)。
ゲストの地域別来園者比率
コロナ禍以降の東京ディズニーリゾートは、入園者を抑えて混雑による満足度低下を避ける方針を取っている。その目安が2024年の年間2,600万人の入園者数という目標だったが、今回の発表で上方修正され、2,850万人レベルを新たな目標とした。混雑を抑えつつ入園者数を増やすには、パークのキャパシティ向上と、混雑する休日から余裕がある平日へ入園者を分散させる平準化施策が必要となる。
キャパシティ向上への2つの施策で客単価も上昇
キャパシティ向上は、コロナ禍で縮小していたエンターテイメントの規模を戻していくことで、アトラクションに集中していたゲストをエンターテイメントへと分散させることが挙げられる。2023年はパレードでダンサーを増やしたり途中で停止する演出を再開させたりと、2019年以前の演出に戻しつつあり、1日あたりの入園者上限の上昇につながっている。2つ目のキャパシティ向上策は、来年、東京ディズニーシーに新テーマポート「ファンタジースプリングス」をオープンさせることである。これにより、敷地面積の拡大とアトラクション稼働によるキャパシティ向上が見込める。また、両施策はどちらも有料の優先券「ディズニー・プレミアアクセス」を販売することができ、客単価の上昇にも繋がる。
価格変動制で入園者数を平日へ分散
平日への分散は、価格変動制を取り入れることが有効である。価格変動制はチケット収入を増大させる効果があるが、オリエンタルランドは入園者数を平準化させる目的で価格変動制を導入していると説明している。また、2023年4〜7月には、首都圏を対象にした平日限定の割引パスポートを販売し、日帰り圏に向けた割引施策も活用して、平日への分散を進めている。さらに、海外ゲストは平日でも来園しやすいことから、海外ゲストが急増したことも、思わぬ平日分散の要因となっている。
地方客の比率上昇と今後の課題
東京ディズニーリゾートは40周年アニバーサリー期間中であり、アニバーサリーイベントは地方在住者に対する訴求力が強いことから、地方からの来園者の比率が高まる傾向にある。地方からの来園者は、宿泊を伴い旅行予算も大きくなることから、客単価の上昇も見込まれる。実際、ディズニーホテルの客室稼働率は、前年同期比18ポイント増加し、98.8%となった。
現在は年間パスポートの販売を休止していることもあり、関東からの来園者比率が大幅に減少している。海外ゲストは今後も増加することが期待されるが、平日に来園しやすい首都圏のリピーター比率を上げることも、入園者数の平準化による2,850万人レベルの達成に必要な方策となろう。また、アニバーサリーイベント期間の終了や国内旅行の動向が変わり地方からのゲストが減少した際にも、客単価の上昇を継続できるかが来年度以降の課題になると見られる。