平均寿命・健康寿命に続く第3の寿命、介護寿命とは
シニアにとって重要な健康寿命の延伸
人生100年時代と言われる中で、いかに病気や怪我にならずに健康であり続けられるか、すなわち「健康寿命の延伸」が高齢者にとって重要という認識はすでに多くの人が持たれているでしょう。加えて平均寿命と健康寿命との差を短くすることが重要という認識も多くの人が持たれていることでしょう。
しかしながら、もしかすると「平均寿命(余命)」と「健康寿命」のそれぞれの意味をきちんと理解されている方は少ないかもしれません。「健康寿命」イコール「介護状態になる年齢」と誤解されている方も多いようです。そこで、「平均寿命(余命)」と「健康寿命」の説明をまず行いたいと思います。
平均寿命・健康寿命とは
「平均寿命」は、厚生労働省が5年ごとに作成する各種生命表に基づいて算出されます。また「平均余命」とは、ある年齢の人々が、その後何年生きられるかという期待値のことを指します。
「平均寿命」は0歳の子どもの平均余命にあたり、2023年の日本人の平均寿命は男性が81.05年、女性が87.09年です。また60歳の平均余命は、男性24.12年、女性29.42年となります。
「健康寿命」は、「健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる状態である」と定義されています。
「平均寿命」が、人口動態統計の出生数・死亡数や国勢調査の人口などのデータをもとに算出されるのに対して、「健康寿命」の算出方法はアンケートの回答結果に基づき算出されます。
厚生労働省が実施する「国民生活基礎調査」で、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に対し、「ある」と回答した人を不健康とそれぞれ定義し、年齢別の健康・不健康の割合を求めた上で、健康寿命の平均は算出されています。
2019年時点の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳です。
実は、「健康寿命」の定義はさまざまにあり、自分自身を(主観的に)健康だと感じ活き活きと生活できる生存期間と考える場合もあれば、日常生活活動能力に支障のない生存期間と考える場合や、認知症にならずに生存できる生存期間と考えるケースもあります。
現在の日本の「健康寿命」は、自分自身を(主観的に)健康だと感じ活き活きと生活できる生存期間によって算出されており、正確には「介護が必要となる年齢」ではないのです。
介護が必要となる年齢は何歳からか
それでは、実際に「介護が必要となる年齢」は何歳からなのでしょうか?それを実際に算出しているものがあります。
国民健康保険中央会による「平均自立期間」がそれに当たり、国保のデータベースを活用し、「要介護2以上」となる状態を「不健康」と定義し、それ以前の期間を「平均自立期間」=「健康寿命」として算出しています。国保のデータを活用しているので、「国民生活基礎調査」では不可能である県別単位の「平均自立期間」も調べることが可能です。
本稿では、「国民生活基礎調査」の「健康寿命」(一般的な健康寿命)との混同を避けるため、国民健康保険中央会算出の「健康寿命」を「介護寿命」と呼称し、整理していきたいと思います。
改めて、それぞれの寿命の定義を整理すると、以下の通りです。
・健康寿命=健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる状態
・介護寿命=要介護2以上となる状態
・平均寿命=0歳の子どもが何年生きられるかを示すもの
そして、現時点で最新のそれぞれの寿命は、以下の通りとなります。
・男性:健康寿命72.68歳:介護寿命79.7歳:平均寿命81.05歳
・女性:健康寿命75.38歳:介護寿命84.0歳:平均寿命87.09歳
これらをまとめたものが、図表1になります。
図表1 健康寿命・介護寿命・平均寿命
これを見ると、健康寿命と介護寿命の間に男性7.02年、女性8.62年の期間があり、同じく介護寿命と平均寿命の間に男性1.35年、女性3.09年あることがわかります。つまり、健康未満要介護未満の不健康期間が、男女ともに7年から8年存在し、要介護期間から亡くなるまで男性で1年強、女性で3年あるということがわかります。
平均寿命が長い分、女性の不健康期間、要介護期間は男性よりも長くなっています。特に要介護期間は、男性の倍以上となっています。
それぞれの健康状態、介護状態によって備えるべき事項や対応は異なってくるはずです。人生の終末期にはこのような状態が訪れる可能性が高いということを理解した上での備えが重要と言えます。