Yahoo!ニュース

ロシア軍侵攻後、首都キーウへの上空からのドローンやミサイル攻撃で740回の警報・総計851時間超え

佐藤仁学術研究員・著述家
「移動式ドローン迎撃部隊」(ウクライナ軍提供)

警報(サイレン)が鳴ると「移動式ドローン迎撃部隊」が出動して迎撃

2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻してから2023年5月11日までの約1年2か月で、首都キーウだけで740回の上空からのロシア軍によるドローンやミサイルによる攻撃の警報(サイレン)が鳴ったことを公式SNSで伝えていた。1日数回キーウでは上空からのロシア軍からの攻撃に備えた警報(サイレン)が鳴っていることになる。

またウクライナ軍によると、その警報(サイレン)が鳴っていた時間の総計は851時間38分だった。1日24時間なので35日以上である。特に2022年10月からロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド」を多く使用して首都キーウだけでなくウクライナ各地へ攻撃をしかけている。2023年5月になってもイラン製軍事ドローンによる奇襲は続いている。

イラン製軍事ドローンでの奇襲は一般市民が寝ている深夜や早朝に行われている。真っ暗なので目視や確認に時間がかかり、明るい昼間よりも迎撃されにくい。また探知して攻撃を行う人間の脳が昼間よりも夜の方が鈍い。そのため、このような攻撃ドローンやミサイルによる攻撃は深夜や早朝など暗い時間に行われる。ウクライナ軍がイラン製軍事ドローンを迎撃しているのもほとんどが深夜が早朝である。そして翌朝に破壊されたイラン製軍事ドローンの写真をSNSなどで公開している。

ウクライナ軍はロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃するために、専用車「移動式ドローン迎撃車」を開発して、警報が鳴ると、標的付近まで専用車で向かっていき車やバンの後方部に設置している機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊する「移動式ドローン迎撃部隊」もつくった。

また2022年10月にキーウをイラン製軍事ドローンが襲撃してきたときは、キーウの警察官らは小銃(ライフル)で迎撃して破壊していた。さらに高いビルの屋上にマキシム機関銃を設置してイラン製軍事ドローンを迎撃している部隊もいる。

▼深夜のロシア軍によるイラン製軍事ドローンでの襲撃を迎撃するウクライナ軍

▼ウクライナ軍の発表と夜間に「移動式ドローン迎撃部隊」で迎撃するウクライナ軍

キーウの行政施設にドローンでの攻撃
キーウの行政施設にドローンでの攻撃写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事