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所司一門の実力者・石井健太郎六段(29)偉大な兄弟子・渡辺明名人(37)を降して王座戦ベスト4進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月25日。東京・将棋会館において第69期王座戦本戦2回戦▲石井健太郎六段(29歳)-△渡辺明名人(37歳)戦がおこなわれました。

 渡辺名人と石井六段は同じ所司和晴七段門下です。前回のABEMAトーナメントでは「所司一門」の名で同じチームを組んでいました。

 両者は過去に1回対戦して、石井六段が勝っています。渡辺名人がチームメイトに抜擢するぐらいですから、弱いはずがありません。

 本局は石井六段先手で10時、対局開始。角換わり模様の出だしから石井六段が角筋を止め、定跡形をはずれた相居飛車の戦いとなりました。

 1図は石井六段が桂を跳んだ局面です。

 先手は角筋を通し、飛車取りになっています。渡辺名人もこの筋は百も承知のはず。あえて技をかけさせた格好ですが、石井六段も臆せず応じて、形勢は次第に石井六段よしとなりました。

 2図は最終盤。

 石井六段の3枚の桂が渡辺玉の死命を制しています。以下は△1二玉▲3一馬△3五銀▲3三桂成と石井六段が鮮やかに決め、渡辺名人投了。17時19分、101手で終局となりました。

 石井六段はこれでベスト4進出。初のタイトル挑戦に向けて大きく前進しました。

 一方、渡辺名人は今期王座戦はここで敗退。挑戦権争いの本命格だっただけに波乱の展開と言えそうです。

 1回戦では豊島将之竜王が三枚堂達也七段に敗れました。

 また藤井聡太二冠は深浦康市九段に敗れています。

 タイトルホルダー3人が姿を消したトーナメント。永瀬拓矢王座への挑戦権を獲得するのは、果たして誰でしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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