45歳女性。「独身の負い目」から解放されたいけれど、パートナーと常に一緒にいたいとは思いません
「お互いの生活のペースや価値観を尊重し合えて、たまに一緒の時間を共有できる関係性を望みます」
<今まで婚活をしたことはありません。今回参加を希望した理由は、このまま独身で生きることに寂しさと不安を感じていて、家族以外に精神的に頼れる存在が欲しく、パートナーを探したいと思っているからです。一度は結婚をしてみたい、独身の負い目から解放されたいとも思っているからです。パートナーには、お互いの生活のペースや価値観を尊重し合えて、常に一緒というよりは、たまに一緒の時間を共有できるような関係性を望みます。子供は希望しません。こんな考えですが、自分が求める人は結婚相談所で探せるのか、どうしたら自分の希望を叶えられるのか、を相談したいです。>
45歳の独身女性からの相談内容だ。この年齢になるまで一度も結婚したことがない人は、良くも悪くも自分の生活や価値観が固まっていることが多い。できれば引っ越しをせずに「別居婚」を望む人もいる。結婚相手の都合で東京都から愛知県へと移住した筆者は「何も変わりたくないならば独身のままでいいじゃないか」と思ってしまうが、婚活のプロならばどのように回答するのだろうか。
先月21日、結婚相談所比較申込サイト「こんかつ山」と共同で、「婚活カウンセリング回転寿司」というオンラインイベントを企画した。参加者は上記の女性を含めた独身男女(以下婚活者)8名と5つの結婚相談所のカウンセラー。総当たり方式でZoomの「ブレイクアウトルーム」上で約10分間ずつの個別面談をするという内容だ。
結婚相談所によるカウンセリングを「自分の相談内容を理解してくれたか」などの5項目で逆評価する
このイベントは今回で5回目の開催だ。参加希望の婚活者からは事前に相談内容を提出してもらい、各相談所に渡しておく。新規会員の獲得ではなく、カウンセリングの技術を競いながら磨くことを目的としている。
そのため、婚活者は以下の項目でカウンセリングを3段階評価する。「自分の相談内容を理解してくれたか」「アドバイスは適切だったか」「アドバイスは具体的だったか」「全体として好印象を持てたか」「前向きな気持ちになれたか」の5項目で評価することで、個性が異なる相談所と自分との相性をみる参考にしてほしいと思っている。
3段階評価のうち、「とても満足」を2点、「満足」を1点、「不満」を0点とした。5項目なので1名につき10点満点であり、全員から満点をもらったら80点に達する計算になる。
浅い経験を周到な事前準備で補った27歳カウンセラーが初参加で初優勝
評価の平均点は52点と低め。やや厳しい評価が多かった中で68点を獲得して優勝したのはBridalチューリップ所属の岩本彩華氏。27歳の自分自身が独身で婚活中という、中小の結婚相談所としては異色のカウンセラーだ。前職はホテル従業員で、カナダ留学後の昨秋にBridalチューリップに入社。経験豊富とは言えない経歴である。
岩本氏は経験を事前準備で補ったと明かしてくれた。8名全員の相談内容を読み込んで回答を用意しただけでなく、それ以外の質問も想定して答える準備をした。
「頭の中ではうまく話せても口に出すとグチャグチャになりがちなので、声に出して何度も練習をしました」
備えあれば患いなし、である。事前提出の相談内容では<私という人間のことが好きになり、『仕事をしてもしなくても妻でいてくれるだけでいい!』と言ってくれるような人がいいなと思っているのですが、高望みでしょうか?>と書いた44歳女性の婚活者は、イベント当日までに婚活によって交際相手ができて相談内容を変更。「自分は年内には結婚したいけれど、仕事人間の相手からは返事を先延ばしにされている。どうしたらいいのか」と聞かれた岩本氏は、「その人はキープしたうえで他の人にも注力していきましょう。自分と同じタイミングで結婚したい人と出会ったほうが結婚できる可能性は間違いなく高い」と現実的なアドバイスをして高い評価を得た。
「常に一緒じゃなくてもいい」という45歳男性は結婚相談所には少ない、という結果
では、冒頭の質問に関してはどのように回答したのか。ここでも岩本氏の事前準備が功を奏した。Bridalチューリップが参加している会員情報共有システムのデータベースで、この女性とのお見合いを望むような同い年の男性がどれだけいるのかを調べておいたのだ。
「お子さんを希望しない45歳の男性で、別居婚も想定しているような人は結婚相談所には少ないという結果が出ました。趣味を通じての出会いや婚活アプリのほうが良いのでは、とお伝えした記憶があります」
岩本氏は「結婚相談所では無理」と突き放したわけではない。既婚未婚を問わずに同じ趣味の人を探すなら「Meetup」というアプリがお勧めだと具体的にアドバイス。
一方の婚活アプリは、遊び目的などの「変な人」が少なくないという危険が伴う。岩本氏は、自分の考えをプロフィールにしっかり書いて、それをちゃんと読んでアプローチしてくれた男性とだけ会うことを勧めた。本人からは「結婚相談所を勧められなかったのは意外でしたが、明確なアドバイスでとても参考になりました」との感想が来た。
「この人の言うことなら素直に聞ける」と思えるカウンセラーとの出会いを目指して
以上が周到な準備で最年少優勝を飾った岩本氏の振り返りだが、結婚相談所のカウンセラーと言っても千差万別の個性があることを知ってほしい。「この人の言うことなら素直に聞ける。何でも相談して結婚を目指したい」と思えるようなカウンセラーとの出会いが重要だ。
例えば、今回唯一の男性だった婚活者(43歳)は、同性であるYokohama Marriage Agencyの高澤氏と婚活エージェントLokahiの若林氏にのみ満点の評価を付けていた。それぞれへの感想コメントは以下の通りだ。
<同い年のカウンセラーさんということで、友達に相談しているような気持ちになれました。ご自身の経験もいろいろお話しいただけたことや、私の過去の失敗に対するお考えも聞くことができて、今後心にとめておきたいと思いました>
<人には言いにくいようなお話をいろいろとお聞きすることができました。私が抱えている問題に対し、過去に克服されたお話を聞けて大変勇気が湧きました。ひょっとしたら自分はまだ大丈夫なのかも、と思わせていただけました>
この男性は結婚への自信を失いかけており、共感をベースにして気持ちを奮い立たせてくれるようなカウンセラーを探しているのだろう。
人の気持ちに寄り添いながら人生の明るいほうへと導いていくこと。それがAI時代における生身のカウンセラーに求められる要件なのかもしれない。