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世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の報道で見る「養子縁組あっせん法」とは

竹内豊行政書士
「養子縁組あっせん法」について深掘りしてみました。(写真:アフロ)

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者間で行われたとされる独自の養子縁組を巡り、5日次のような報道がありました。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者間で行われたとされる独自の養子縁組を巡り、厚生労働省は5日、教団から回答文書が届いたと明らかにした。送付は2日付。同省は中身を精査した上で、2018年度に施行された養子縁組あっせん法への違反が確認された場合は行政指導などを検討する。

引用:旧統一教会側の回答文書到着 信者間の養子縁組、関与否定か 厚労省「精査して対応検討」時事通信社 2022.12.5

そこで、今回は、養子縁組あっせん法について深掘りしてみたいと思います。

「養子制度」とは

まず、養子制度について確認しておきましょう。養子制度は人為的に親子関係を創設する制度です。その目的は時代と社会によって異なります。

日本の養子制度は、(1)後継ぎや扶養を目的とする成年養子と、(2)家族関係を安定させることを目的とする連れ子養子や相続をみこした孫養子を中心とする未成年養子縁組で占められており、(3)要保護児童のための養子は例外的です。

養子縁組あっせん法は、「要保護児童のための養子」に分類されると考えられます。

「養子縁組あっせん法」とは

養子縁組あっせん法の正式な名称は、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」といい、2018年に施行されました。

養子縁組あっせん法の「目的」

養子縁組あっせん法(以下「法」といいます)の目的は、第1条で、児童福祉の増進に役立つことが目的であるとしています。

第1条(目的)

この法律は、養育者との永続的な関係に基づいて行われる家庭における養育を児童に確保する上で養子縁組あっせん事業が果たす役割の重要性に鑑み、養子縁組あっせん事業を行う者について許可制度を実施し、その業務の適正な運営を確保するための措置を講ずることにより、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護を図るとともに、あわせて民間あっせん機関による適正な養子縁組のあっせんの促進を図り、もって児童の福祉の増進に資することを目的とする。

そのため、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、児童(18歳未満の者)の福祉に関する専門的な知識及び技術に基づいて児童の最善の利益を最大限に考慮し、これに適合するように行われなければならない。」(法3条)とし、養子縁組のあっせんは、児童の最善の利益を考慮することを確認しています。

「許可制」を導入

法は、「国、都道府県及び市町村以外の者は、養子縁組あっせん事業を行おうとするときは、当該養子縁組あっせん事業を行おうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。」(法6条)とし、民間あっせん機関に許可制を導入しています。

許可を受けないで養子縁組あっせん事業を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(法44条1号)。

なお、許可の有効期限は許可日から起算して3年です。許可を得れば更新も可能です(法12条)。

許可の基準

許可を与える主な基準は、次のとおりです(法7条)。

・経理的基礎を有すること。

・養子縁組あっせん事業を行う者が社会的信望を有すること。

・申請者が社会福祉法人、医療法人その他厚生労働省令で定める者であること。

・養子縁組あっせん事業を営利目的として行おうとするものでないこと。

・個人情報を適正に管理するための必要な措置が講じられていること。

欠格事由

また、法は、許可をしてはならない者として「欠格事由」を設けています(法8条)。主な欠格事由は次のとおりです。

・破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

・養子縁組あっせん法・児童福祉法・児童買春・児童ポルノ禁止法その他国民の福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

・児童虐待の防止等に関する法律に規定する児童虐待又は児童福祉法被措置児童等虐待を行った者その他児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者

手数料

「民間あっせん機関は、厚生労働省令で定める種類の手数料を徴収する場合を除き、養子縁組のあっせんに関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。」とされています(法9条)。

 この規定に違反した者は、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。

改善命令・許可の取消し

都道府県知事は、民間あっせん機関が、この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反した場合において、当該民間あっせん機関に対し、業務改善を命ずることができます(法15条)。業務改善命令に違反した者は、6カ月以下の懲役又は30万以下の罰金に処せられます。

また、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき、欠格事由に該当したとき等の場合は、許可を取り消すことができます(法16条)。

守秘義務

養子縁組はプライバシーに関する内容を扱います。そのため、「民間あっせん機関及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならない。」とし、守秘義務を課しています(法35条)。守秘義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます(法46条6号)。

名義貸しの禁止

法は、「民間あっせん機関は、自己の名義をもって、他人に養子縁組あっせん事業を行わせてはならない。」(17条)とし、名義貸しを禁止しています。名義貸しを行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(法44条)。

その他、民間あっせん機関には、許可内容の変更(法13条)・事業の廃止(法14条)の届出義務、帳簿の備付・保存義務(法18条)、事業報告書の作成・提出義務(法20条)等の義務を課しています。

以上ご覧いただいたとおり、養子縁組あっせん法の第一の目的は、児童福祉の増進です。その目的を達成するために法は許可制の導入・様々な届出等を事業者に課しており、違反者には罰則を設けています。養子縁組あっせん法によって、児童福祉が増進されることを願いたいと思います。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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