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「大統領vs検察総長」の「第2次抗争」に発展へ 尹検察総長は文大統領を相手にした訴訟で勝てるか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
尹錫悦検察総長に任命状を授与する文在寅大統領(青瓦台HPから)

 一時40%を切り、急落していた文在寅大統領の支持率が僅かに上昇し、辛うじて40%を回復したようだ。

 世論調査会社「韓国ギャラップ」が15~17日にかけて行った調査によると、支持率は前週の38%よりも2ポイント上昇し、40%を記録。文大統領の支持率はもう一つの世論会社「リアルメーター」の調査(14日発表)では、過去最低の36.7%まで急落していた。

 「コンクリート支持層」の40%を割れば「黄色信号」、30%前半に下落すれば「赤信号」、30%を割って,20%台に突入すれば「死に体」(レイムダック)とみられていたが、40%に戻ったことで再び「青信号」が灯り、文大統領は一安心しているかもしれない。

 文大統領としては支持率急落の原因となった秋美愛(チュ・ミエ)法相と尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長による政権内抗争を尹総長への2か月の停職処分と秋法相の辞意で収拾を図りたいところだが、尹総長が今度は文大統領の停職処分裁可を不服とし、裁判所に訴訟を起こしたため思惑が外れたようだ。むしろ、今後の事態の展開次第では大統領vs検察総長による第2次抗争に発展しかねない状況にある。

 尹総長の担当弁護士は「大統領の処分に対する訴訟なので、(被告は法務部長官だが)大統領に対する訴訟で間違いない」と述べ、ソウル行政裁判所に停職処分執行停止を求める訴訟を起こしている。

 早速、22日には裁判が開かれるが、秋法相が11月24日に停職停止を命じた際には尹総長はソウル行政裁判所から執行停止を勝ち取り、1週間で職務に復帰できた。行政裁判所で勝訴しただけでなく、法務部監察委員会でも全員一致で職務停止も懲戒も「不当」と認められていただけに尹総長は強気である。

▲過去に大統領が敗訴したケースも

 しかし、今度は訴訟の相手は国民が選んだ大統領である。大統領の裁可に対して行政裁判所が「不当」の判決を下せるかの疑問の声も上がっているが、尹総長は過去に大統領を相手に起こした同様の訴訟で民間人が勝訴したケースもあって強気の構えを崩していない。

 盧武鉉政権下でKBS社長に任命された鄭淵珠氏が2012年に李明博政権下で解任されたことに「不当である」として李大統領を相手に訴訟を起こしたケースのことで、この時は李大統領の裁量権乱用が認められ、勝訴していた。

▲世論調査では尹検察総長への支持が上回る

 尹総長が強気なもう一つの理由は世論が後ろ盾になっていることだ。直近の世論調査の結果では尹総長を支持する声が圧倒している。

 尹総長に対する懲戒処分の是非をめぐっては先月26日の世論調査会社「リアルメーター」の調査では、「懲戒は間違っている」が56.3%なのに対して「正しい」は38.8%だった。

 今回の懲戒処分に関する是非についての世論調査結果は見当たらないが、韓国のTBS放送会社の依頼を受けて「リアルメーター」が16日に行った世論調査では2か月の停職処分が「重すぎる」と答えたのが49.8%、「軽すぎる」が34%と、尹総長に同情する声が多数を占めていた。

 前回、尹総長が秋法相を相手に起こした裁判で勝訴できたのは裁判所が▲尹総長の不在による業務の混乱も重大な公共の棄損であり、職務を遂行できないことで尹総長に回復できない損害を与えている▲職務停止は独立性と政治的中立を保障するため検察総長の任期を定めた法に反するとの尹総長の主張を受け入れたからに他ならない。

 尹総長は今回も同じ理屈で異議申し立てをしているので裁判所が同様の判決を下す可能性が高いとみている。仮に、大統領が敗訴となれば、大統領の権威失墜に繋がりかねず、支持率が再び急落することになりかねない。

 このため大統領府も政府も与党もこぞって尹総長が自ら進んで身を引くよう陰に陽に迫っているが、尹総長は「大統領から与えられた任期(来年7月まで)を最後まで全うする」として徹底抗戦する構えだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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