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バスケット日本代表:カルチャーの構築に時間を要するが、短い準備期間を敗戦の言い訳にしないことは大事

青木崇Basketball Writer
沖縄でのウインドウ2を1勝1敗で終えた日本代表 (C)FIBA.com

 沖縄アリーナで行われたFIBAワールドカップ・アジア予選のウィンドウ2、日本はチャイニーズ・タイペイに逆転で勝利。しかし、オーストラリアには後半でリードを広げられての敗戦という結果に終わった。

 チャイニーズ・タイペイ戦で西田優大が得点源として存在感を示したことや、代表としてFIBA公式戦デビューを果たした佐藤卓磨が攻防両面で奮闘したことは、ウインドウ2の2試合におけるプラス材料と言っていい。トム・ホーバスコーチが目指す5アウトのオフェンスを展開していくうえで、富樫勇樹の存在は重要であることも認識できた。

 昨年11月の中国戦に比べればレベルアップしていたとはいえ、2点のビハインドで折り返したオーストラリアの前半について、ホーバスコーチは「私たちはベストのバスケットボールをプレーできていなかったですし、多くのミスを犯していました」と振り返る。アソシエイトヘッドコーチとしてコーリー・ゲインズを迎えた日本は、アップテンポなオフェンスの精度をより高めていきたいものの、ゲームにおける遂行力という点でまだまだ発展途上と言わざるを得ない。

ホーバスコーチ (C)FIBA.com
ホーバスコーチ (C)FIBA.com

 男子代表の指揮官になってから“カルチャーを変える!”と明言したホーバスコーチだが、その道のりは険しく、実現するまでに時間が必要だ。しかし、男子代表は女子代表とは違い、長期合宿を行えないのが現状。また、シーズン中に海外でプレーする選手の招集も難しい。

 ウィンドウ1の中国戦後、ホーバスコーチは「チームとしてもっと練習しなければならなりません。6日間の準備では足らない」という言葉を口にしていた。だが、これは日本に限ったことではない。ヨーロッパにはNBAやユーロリーグの選手が出られないという国があることに加え、いろいろなリーグに選手が分散しているために、ワールドカップ予選前のチーム練習が1回できるか否かということも普通にある。

 今回のオーストラリアは、NBAやNCAAの選手だけでなく、国内リーグのNBLでプレーする主力級もメンバーに入っていない。国際試合の経験を積み重ねているのは、島根スサノオマジックのニック・ケイ、香川ファイブアローズのアンガス・ブラントくらいで、22歳以下の選手が7人というロスター構成。しかし、日本戦は第3クォーターに入ってからチームとしてプレッシャーの強度が上がり、質の高いディフェンスを継続して失点を9に抑え込んだことが決め手となり、80対64のスコアで勝利を手にしている。

 ロブ・ベバレッジコーチが「チームとして集まったのが成田空港で、最初の試合(チャイニーズ・タイペイ)までに練習したのは2回。そこでお互いのこととシステムを学び、ゲームでは一体となってプレーしていた」と話したように、10日間の合宿ができた日本に比べると、オーストラリアは明らかに準備期間が短かった。だからこそ、“誰々がいない。準備期間がもっとほしい”といった言い訳が代表戦では通用しないのだ。オーストラリアは厳しい状況であってもチームとして素晴らしいパフォーマンスを見せ、3戦全勝という結果を出した事実から目を逸らすわけにはいかない。

 ウィンドウ3以降の予選、そして来年のワールドカップ本戦に向けて、ホーバスコーチは限られたリソースの中で最善策を見つけ出して遂行すること、日本バスケットボール協会はBリーグからの代表支援体制をより強固にすることが重要。代表候補となっている選手たちには、所属チームと代表のプレースタイルが違っていても、ファンダメンタルとバスケットボールIQのレベルアップ、ゲームの理解度をより高めていくことが期待される。

 代表チームとして活動できる期間が短い中でも勝利という結果を出すためには、これらの要素が欠かせない。オーストラリアは今回、日本にとっていい見本を示したのではないだろうか…。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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