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朝倉海が返上したRIZINバンタム級王座の行方は?考えられる「3つの新王者決定プラン」─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
UFC参戦を決めたRIZINバンタム級王者・朝倉海(写真:RIZIN FF)

「井上vs.スーチョル」が最有力

「僕はRIZINのベルトを返上してUFCへ行きます。そして、必ずUFCでチャンピオンになって世界中のファンを連れてここに戻ってきます!」

6月9日『RIZIN.47』のリング上から、朝倉海(JTT)はファンに向けてそう話した。まだUFCから正式なアナウンスはないが、すでに契約が交わされたようだ。

バンタム級、フライ級のいずれで挑むのかも明かされていないが、年内に朝倉はオクタゴンで闘うことになる。30歳になった「反逆のアウトサイダー」の志高き挑戦を見守りたい。

朝倉海は今後、UFCファイターとなる。よって契約期間内は他団体で試合をすることができない。そのため彼が保持していたRIZINバンタム級王座は空位となり、近いうちに新チャンピオン決定戦が行われる運びとなろう。

では「いつ」「誰と誰」の間で行われるのか?

舞台は、9月に首都圏会場で開催予定の『RIZIN.48』が濃厚。そして、バンタム級の上位ファイター同士でベルトを争うことになる。まずは候補選手を挙げてみよう。

井上直樹(元UFCファイター/キルクリフFC)7勝2敗

キム・スーチョル(元ONE世界バンタム級王者/韓国)3勝1敗

ヴィンス・モラレス(元UFCファイター/米国)1勝0敗

佐藤将光(元修斗バンタム級王者/Fight Base)1勝1敗

元谷友貴(元DEEPフライ&バンタム級王者/ATT)9勝7敗1NC

太田 忍(2016リオ五輪レスリング銀メダリスト/THE BLACKBELT JAPAN)6勝3敗

※勝敗はRIZIN戦績。

いずれも実力者だが、この中から2選手を選ぶとすれば「井上とスーチョル」か。

井上は、太田に勝った佐藤を下し元谷にも勝利している。スーチョルは一昨年の大晦日にフアン・アーチュレッタ(米国)に1-2のスプリット判定で敗れてはいるが、朝倉海と1勝1敗の扇久保博正(THE BLACKBELT JAPAN)に勝っている。

先日、アイルランド・ダブリンで開かれた『Bellator Champions Series: Dublin』に出場しロジャー・ブランク(スペイン)に圧勝した太田も、こう話していた。

「王座決定戦は、井上vs.スーチョルが順当だと思う。その勝者に挑むことを目指したい」

オーソドックスに王座決定戦を組むのであれば実績上位の対決、「井上vs.スーチョル」が妥当だと私も思う。これが、ファーストプランだ。

RIZIN10戦目でタイトルマッチに挑みたい井上直樹(右)。ようやくチャンスを摑むことができるか(写真:RIZIN FF)
RIZIN10戦目でタイトルマッチに挑みたい井上直樹(右)。ようやくチャンスを摑むことができるか(写真:RIZIN FF)

堀口恭司の「同時2階級制覇」はあるか

だが、ほかにもプランは考えられる。

2つ目は『RIZINバンタム級王座決定トーナメント』の開催だ。2021年にもバンタム級トーナメントは行われているが、この時はコロナウィルス感染拡大期でありエントリーは国内ジム所属選手に限られていた。そこからグレードアップさせ8選手、もしくは16選手がトーナメントで闘いベルトを目指すというのはどうだろう。

上記した選手以外にも、中島太一(ロータス世田谷)、倉本一真(リバーサルジム新宿Me,We)、野瀬翔平(MASTER JAPAN FUKUOKA)、アラン・ヒロ・ヤマニハ(ブラジル/ボンサイ柔術)、牛久絢太郎(K-CLANN/ATT)、瀧澤謙太(Fired Up Gym)、金太郎(パンクラス大阪稲垣組/ATT)らがいる。その中から出場選手を絞り、さらには海外からも強豪を招聘。

9月にトーナメント1回戦、10月か11月に準々決勝、または準決勝、そして大晦日にファイナル(王座決定戦)となれば大いに盛り上がることは間違いない。

3つ目は、堀口恭司(ATT)が絡むパターン。

現RIZINフライ級王者である彼は、再びUFCで闘うことを希望しているようだが、契約が結ばれるかどうかは微妙な状況にある。もし、UFC再挑戦が叶わなかったなら、今後もRIZINで闘う可能性が高い。

そうなった場合、堀口の目標設定はRIZIN史上初の「同時2階級制覇」になるのではないか。つまり、フライ級王者のまま、バンタム級王座への返り咲きも目指すのである。

堀口が、その意向を示したならバンタム級新王者決定戦は「堀口恭司vs.井上直樹」「堀口恭司vs.キム・スーチョル」になることもあろう。

果たして、バンタム級の新チャンピオン決定戦はいかなる形で行われるのか、正式発表を待ちたい。楽しみは尽きぬが、まずは好カード目白押しの真夏のスーパーイベント『超RIZIN.3』を堪能しよう。

〈7月28日、さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』主要対戦カード〉

『超RIZIN.3』では上記のカードを含め十数試合が予定されている(提供:RIZIN FF)
『超RIZIN.3』では上記のカードを含め十数試合が予定されている(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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