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相次ぐ台風の発生と猛暑

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
日本周辺に熱帯低気圧と2つの台風(8月10日正午、ウェザーマップ作画)

 8月になって、天気の様子が変わった。上旬だけで4つの台風が発生、小笠原近海にはまもなく台風となる熱帯低気圧もある。そして、日を追うごとに厳しくなる暑さ。今後も太平洋高気圧の張り出しが台風の動きに影響する。

相次ぐ台風の発生

 10日(月)正午、南シナ海で台風6号が発生しました。8月になって発生した台風はこれで4個目です。そして、小笠原近海にはまもなく台風7号となる熱帯低気圧(10日午後3時現在)も控えています。これを含めると、わずか十日間で、8月一か月分に相当する台風が発生することになります。(8月の台風発生数は平年で5.9個です)

なぜ、台風が次々と発生しているのでしょう?

 それは雲の発生状況が変わったからです。こちらは台風が発生する海域の雲の発生状況を示した図です。図の上半分が北半球で、中央の上に日本列島があり、寒色は雲が活発に発生した場所、暖色は雲の発生が少なかった場所を示しています。

熱帯域の雲の発生状況を示した図(7日平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域)、2020年7月29日~8月4日)気象庁ホームページより
熱帯域の雲の発生状況を示した図(7日平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域)、2020年7月29日~8月4日)気象庁ホームページより

 見にくいですが、沖縄の南から南シナ海にかけて青くなっているのがわかります。8月に発生した台風はすべて、この海域です。

 一方で、日本の南からフィリピンの東海上にかけては引き続き、雲の発生が少ないです。台風が発生しやすくなったといっても、東側は依然として、台風が発生しにくい状況が続いています。

台風が西に進むと猛暑に?

 気になるのが小笠原近海にある熱帯低気圧です。台風になっても、ならなくても、日本列島に近づくと影響は避けられません。

 上空約5,900メートル付近の天気図をみてみましょう。図の中心に日本列島があり、赤い小さな丸が熱帯低気圧の渦巻きを示しています。そして、本州付近をくるりと取り囲んでいるのが太平洋高気圧です。上から順に11日(火)、12日(水)、13日(木)の予想天気図です。

500hPa高度・渦度予想図(上から8月11日、12日、13日)ウェザーマップ作画に、著者が文字を加えた
500hPa高度・渦度予想図(上から8月11日、12日、13日)ウェザーマップ作画に、著者が文字を加えた

(今後、台風となる可能性のある)この熱帯低気圧は日本列島に張り出す高気圧の南の縁に沿って、西に進む予想であることがわかります。

 台風は高気圧に入り込んだり、横切ったりできないため、このような動きをします。台風が西に進むことは本州付近が高気圧に覆われて、夏空と猛暑が続くことを意味しています。

【参考資料】

気象庁ホームページ:大気の循環・雪氷・海況図表類

気象庁:2週間気温予報資料、2020年8月10日

気象庁:2週間気温予報解説資料、2020年8月10日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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