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【F1】レッドブルお膝元での2連戦!フェルスタッペンは相性良し、ホンダPU初優勝の地へ

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
マックス・フェルスタッペン(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

熱い接戦が繰り広げられたポールリカールでのフランスGPを終え、F1は舞台をオーストリアに移す。6月27日決勝の第8戦・シュタイアーマルクGP、7月4日決勝の第9戦・オーストリアGPは同じサーキット「レッドブルリンク」での開催だ。

ホンダPU初優勝の地

オーストリアのシュピールベルクにある「レッドブルリンク」はF1サーキットの中でも距離が短い1周約4.3kmコースで、1周を僅か1分2秒台という速さで周回する。

レッドブルリンク
レッドブルリンク写真:代表撮影/ロイター/アフロ

1周が短いため、チーム間の差が出にくいものの、海抜677mという標高の高い山岳地帯にあるため空気が薄く、エンジンやブレーキに厳しい条件下でのレースを強いられる。そんな高地サーキットを得意とするのが日本のホンダが作るパワーユニットだ。

ホンダPUにとっての初優勝はここレッドブルリンク。2019年にパートナーとなったレッドブルのお膝元で初めてメルセデスを凌駕したのである。

ホンダのPUには同社のビジネスジェット機「Honda Jet」の技術者が協力していることが知られているが、航空機エンジンで鍛えられた技術は標高800mのインテルラゴス(2019年ブラジルGP)でもポールトゥウインを飾るなど、強敵メルセデスを度々打ち破る原動力になった。

2019年ブラジルGPはホンダPU搭載車が1-2フィニッシュを果たした
2019年ブラジルGPはホンダPU搭載車が1-2フィニッシュを果たした写真:ロイター/アフロ

初優勝の思い出の地をホンダとして走るのは今年が最後だ。今後も間接的にパートナーシップを続けていくことになるレッドブルのお膝元ということで、ここは圧勝を期待したいコースである。

シーズン最多4勝目を狙うフェルスタッペン

レッドブルにとって最も重要なレースとなるレッドブルリンクでの2連戦だが、大本命はやはりマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。2018年(当時はルノーPU)、2019年と2年続けてここで優勝を飾っており、相性は抜群と言える。ただ、昨年、開幕2連戦ではメルセデスに惨敗だった。

マックス・フェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン写真:代表撮影/ロイター/アフロ

とはいえ、今季のフェルスタッペンの好調ぶりは誰も止められないものになっている。フランスGPでは2ストップ作戦を成功させたフェルスタッペンが残り2周で逆転して優勝。レッドブル・ホンダとしてもここまで3連勝を飾っている。。

また、フェルスタッペンのチームメイト、セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)はアゼルバイジャンGPでの優勝に続いてフランスGPでは3位表彰台を獲得し、ランキングも3位に浮上。特にコンストラクターズ選手権ではレッドブル=215点、メルセデス=178点と大きなリードを築くことに成功している。

そういう意味では非常に良い状態でパワーユニット、ドライバー共に相性が良いサーキットに挑むことになるのだ。

フランスGPで見られたレッドブルvsメルセデスのバトル
フランスGPで見られたレッドブルvsメルセデスのバトル写真:ロイター/アフロ

一方でライバルではバルテリ・ボッタス(メルセデス)がこのコースで昨年の開幕戦優勝を含む過去2勝をマークして強さを見せているものの、フランスGPでは表彰台を獲得できずに4位。崖っぷち状態から得意コースで巻き返せるか注目だ。

また、今季6度目のトップ5フィニッシュを果たしたランド・ノリス(マクラーレン・メルセデス)にとってみれば、レッドブルリンクは2020年開幕戦で自身のF1初表彰台となる3位を獲得したコース。ラップタイム差が大きくはないコースだけに、レッドブル・ホンダ、メルセデスの間に割って入ってくるかもしれない。

角田はまず予選が課題か

レッドブル本体だけでなく、弟分チームであるアルファタウリ・ホンダにとってもここは見せ場を作りたいサーキットだ。ホンダPUのアドバンテージを活かしていきたい。

ピエール・ガスリー(アウルファタウリ・ホンダ)は母国レースとなったフランスGPでは順位を落として7位フィニッシュになったものの、きっちり入賞。そんな彼のレッドブルリンクでの最高位は7位となっているが、今季のポイント取りこぼしが開幕戦・バーレーンGPだけと安定しているガスリーは自己べストの結果も期待できる。

フランスGPの予選でクラッシュした角田
フランスGPの予選でクラッシュした角田写真:ロイター/アフロ

それに対して、予選でのミスから起こったクラッシュで、また崖っぷち度が増してしまったのが角田裕毅(アウルファタウリ・ホンダ)。決勝は最後尾から13位フィニッシュとポイント獲得はならなかった。

ただ、角田にとってレッドブルリンクは昨年のF2時代にポールポジション、2位表彰台を獲得し、F1ファンからの視線を一気に獲得したコースでもあるので挽回を期待したい。だが、ここはコースが短く、クリアラップが取りづらく、コーナーも僅かに10しかないので1ミスで予選順位が大きく変わってしまう。課題の予選で上位につけることができれば、少し流れを変えられるのではないだろうか。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

角田本人も「もっと上位のグリッドからスタートし、ポイント獲得のチャンスを増やせるように、予選について取り組んでいかなければなりません」とコメントしている。

標高が高い分、天候の変化も激しいレッドブルリンク。角田にまた新たな試練が待ち受けているのか、それともピンチがチャンスへと転じるのか。正念場の戦いが始まる。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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