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学生起業からの『b-monster』という働き方【塚田眞琴×倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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飛ぶ鳥を落とす勢いの『b-monsterster』。中国や台湾にも進出し、積極的に海外展開を進めています。急拡大を支えてくれるスタッフの待遇も、業界の中では恵まれたものです。パフォーマーは基本的に全員正社員での登用。けがやその他の理由でレッスンできなくなったとしても、本社で仕事を続けられるようにしています。他にも健康維持やモチベーションアップのためのさまざまな施策がありました。

<ポイント>

・経営者の想いを現場に伝えるには?

・b-monstersterのスタッフはジムに通い放題。2年ごとに海外研修も!

・海外のスタッフに世界観を伝えるためにしていること

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■会社の理念を社員に落とし込むためにしたこと

倉重:では、観覧者からご質問のタイムです。コヤマツさんからどうぞ。

コヤマツ:お話ありがとうございました。

先ほど「働くその先が見えると良い」とおっしゃっていました。

それは社長自身が見えていても、現場に伝わらないとたぶん意味がないと思っています。

現場にどうやって伝えているのかなということが気になりました。

何か伝え方で工夫されていることなどはありますか?

塚田:最初のミッションは立ち上げ当初のスタッフと一緒につくったのですが、新しい子たちが増えていくと、「自分事として落ちていないな」と感じることが多くなったのです。

ミッションを再構築するタイミングで、店長以上の役職者全員を会議に加えて、「自分たちで作った」という感覚を持ってもらうことを大事にしました。

その後も3回ぐらいに分けて全体ミーティングでいろいろな考えを落としこみました。

現場のスタッフはメンバーさんの近くにいるので、彼らの人生が変わったことに敏感に気付いてくれます。

そこは話しやすかったのですね。

「自分の言葉で伝える」ということは特に意識しています。

先日も全スタジオを回って3時間以上の理念ミーティングをし、今までの人生体験を交えながら、一つひとつのspilitを話してきました。

倉重:全店舗を回ったり、面談回数を重ねたりするのは、すごく大変ではないですか。

それでも、伝わってないときもありますよね。

塚田:あります。そういうときは、「この話を前にしたけど、伝わってなかったですか」という感じで聞きます。それに対して返答が来たら、その人に伝わるように何回も話します。

倉重:伝わっていないのは、経営者側の責任ですか?

塚田:そうですね。伝え方がいけなかったのだなと思います。

一人ひとりに伝えることは今の人数だとできないので、どうしても全員に向けての発信しかできないのですけれども。

その後で、伝わっていない人には個別でフォローアップしています。

倉重:世の中でもそのような上司が増えるといいですね。

■b-monstersterの手厚い福利厚生

倉重:では、内緒で来ているBさん。

B:内緒では来ていないです(笑)。

国内では、次にどのあたりに出店する予定ですか。

塚田:ずっと出したいと思っているのは横浜です。

物件が全然上がってこなくて。

倉重:そうですか。

塚田:なかなか出せません。

福岡も将来的には考えています。

倉重:福岡もいいですね。

海外進出や、オンラインでの運営も楽しみです。

では、Cさん。

C:オンライン事業の話を聞いて、「新しい局面だな」とすごく感じました。

私はいろいろな企業の産業医をしています。

従業員の健康管理はどのようにしていますか。

塚田:運動不足になることは、基本的にパフォーマーの子たちにはありません。

事務系のスタッフもいますが、社員は何回でもb-monstersterに通っていいことになっています。

混んでいる時間は避けてもらいたいので、サンドバックの空き数に応じて受けて良いかが決まっているのです。

もともとb-monstersterがすごく好きで入ってくれているスタッフも多いので、よく通ってくれていると感じます。

倉重:社員は通い放題なんですね。

C:私が行ったときには左右がパフォーマーでした。

塚田:ぜいたくですね。

私もこの間受けに行ったら、前にパフォーマーがいました。

倉重:塚田さんも普通に参加しているのですか。

塚田:行きますよ。

C:お姉さんのほうも参加したときはインスタでアップしていますよね。

倉重:いいですね。

社員の福利厚生という意味では他に何かありますか?

塚田:他ジムに体験に行った場合の費用や推薦映画のレンタル代を経費申請できたりなど普通の会社にはあまりないものや、大きいものだと海外研修は行っています。

倉重:どこに行くのですか?

塚田:大体ニューヨークです。

イギリスやラスベガスにも行ったのですが、最近はみんなの希望もあって、ほとんどニューヨークです。

今いるスタッフはほぼ全員行っています。

倉重:100名以上をニューヨークに連れていくのはすごいですね。

塚田:私たちもアイデアをニューヨークで見つけてきたので、その空気感のようなものを感じてほしくて。

倉重:最先端のエンタメや、美意識を感じるということですね。

塚田:入社2年目に1回、また2年後にも行けます。

倉重:就職したくなってきました。

塚田:ぜひ(笑)。

2年目はチームワークを養うために、入社順が近い10人ぐらいで行きます。

申請してもらえれば、4年目は自由に1人で行っても構いません。

倉重:1人で自由に行けるのですか。

旅行のような感じですね。

塚田:プログラムも自由に組んでもらいます。

チェックして、あまりにも遊びが多いと修正させてもらうのですけれども。

倉重:皆さんどのようなところに行かれますか。

塚田:会社自体がまだ4年たっていないので、実例はありませんが、もうすぐ4年になるスタッフは、「またニューヨークに行きたい」と言っています。

倉重:実際にニューヨークに行って、いろいろなエンタメを体験するのでしょうか。

塚田:はい。海外のフェスにも参加してもらって、感じたことをプログラムに取り入れられないかなと思っています。

倉重:すごくきちんとしていますね。

ヤギさん、どうですか。

ヤギ:とても面白かったです。

起業後に、お父さま、お母さまとの関わり方には、変化がありましたか。

塚田:両親がいまも株を持っているので、大きな変化があるときは相談しています。

倉重:両親が株主というのは面白いですね。

塚田:細かい話はほとんどしなくなりましたが、大きな決断をするときはいろいろ相談しています。

■文化の違いを感じた海外進出

B:羽田空港にもお店を出していますよね。

普通は空港にジムはつくらないので、すごく面白いなと思いました。

塚田:そうです。新しいなと思って出しました。

倉重:出張の前後に行けるのはいいですよね。

ヤギ:上海にも3店舗あります。

上海は文化が日本とは違うので、いろいろな壁があったのではないでしょうか。

塚田:上海は文化が違い過ぎてとても大変でした。

フィットネスに対する意識は少しずつ改革されてきたのですが、音楽になじみがなくて。

倉重:え? 音楽になじみがないのですか。

塚田:聞いたところによると、私立は体育と音楽の授業がないらしいのです。

とにかく勉強、勉強で、副科目があまり重要視されていません。

普通の学校にはありますが、進学校になるにつれて必須ではなくなっていきます。

私たちがターゲットにしている高収入の方たちが、運動と音楽になじみがないので、パフォーマーを育てるのにも苦労しました。

見た目もいいし、フレンドリーだし、すごくいい子なのに、リズム感が皆無だったので、パフォーマーとしては「ごめんなさい」ということもあったのです。

来る人たちも最後まで頑張り抜くという感覚があまりなくて、途中で携帯をいじり出してしまったり、帰ってしまったりすることも多かったのです。

倉重:そうなのですか。

いろいろな文化の方と一緒に働く機会が増えている中で、自分の思いをきちんと伝えるのは、大変ではないでしょうか。

何か工夫したことはありますか?

塚田:日本人よりも気を使って丁寧に説明しました。

中国で働いてくれている人たちがとくにそうなのかもしれませんが、「ブランディング」という感覚がありません。

「楽しければいいじゃん」「こっちのほうがラクだからいいじゃん」という感覚がすごく強かったのです。

そうではなくて世界観を守るということが大切だと伝えました。

倉重:海外店舗の方にはどのようにb-monstersterを説明するのですか。

塚田:必ず日本に来てもらって、スタジオを見てもらいます。

倉重:1回やっているところを見てもらうのですね。

塚田:はい。とくに銀座のスタジオは本当にこだわっていて、ハンドバックの上のチェーンにエイジングでサビさせたり、壁をわざと黒ずませたりしています。

それを見せて、「お金かけて、こういう世界観をつくり出しているんだよ」と伝えるのです。

倉重:ストリートな雰囲気をあえてつくっているということですね。

塚田:そうです。

恵比寿のスタジオでも本物の石を使っています。

最初は「フェイクでどうですか」という意見もありましたが、「フェイクにしたらすごく安っぽくなってしまうので、絶対本物がいいです」というふうにオーダーしました。

青山の植物もそうです。

本物にこだわっているところを1個1個見せて、「こういうところを意識している」と伝えています。

倉重:恵比寿の店舗は、階段から雰囲気が変わってきますものね。

入り口に入る手前からもう雰囲気をつくっているというか。

塚田:あそこにシャンデリアを入れています。

ヤギ:いや。勉強になりました。

倉重:25歳ですよ、考えられない。

ヤギ:もう人間3回ぐらいやっているのではないですか。

倉重:本当に、3周ぐらい。チートですね。

ヤギ:お姉さんはどのような性格ですか?似ていらっしゃるのですか。

塚田:すごくおっとりして、長女らしい性格です。

でも、私よりも気の強い部分もあって、そのようなところに助けられたりしています。

性格は本当に真反対なので、いい役割分担ができているのかなと思います。

倉重:いいですね。

世の中の20代の人がみんなこのような感じになっていくと日本全体が盛り上がるなと思います。

今日はどうもありがとうございました。

塚田:ありがとうございました。

(おわり)

【対談協力】

塚田眞琴(つかだ まこと)

1994年生まれ。2016年大学2年で姉と共に起業、同時に大学を中退。

2016年3月にb-monster株式会社を設立。同年6月に1号店となるGinza studioをオープン。

2020年より代表取締役に就任。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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