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山下智久が見つめる新しい景色 自分を解き放ち、より自由に表現した、4年ぶりの新作に込めた決意 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「音楽活動を本格始動するまで、色んな世界で色んな音楽に出会い、触れてきた」

4年ぶりのオリジナルアルバムが、なぜ“UNLEASHED”だったのか?

『UNLEASHED』(11月28日発売/通常盤)
『UNLEASHED』(11月28日発売/通常盤)

山下智久の4年ぶりのオリジナルアルバム『UNLEASHED』が11月28日発売され、好調だ。11月23日に山下が出演していた『another sky-アナザースカイ-』(日テレビ系)を観たばかりだったので、ロサンゼルスで親友のジェイデン・スミスらと、楽しそうに話をしている彼の笑顔と、このアルバムが放つ空気感とが、すぐにつながった。番組は、ロサンゼルスという山下にとって特別な場所で光を浴びて、解放されている瞬間をカメラは捉えていた。アルバムタイトルの『UNLEASHED』には、「解き放たれる」とか「縛られていたものから解放される」という意味がある。何かに縛られていたというよりも、自分を縛りつけるのはやめようという、山下の強い想いが込められている。“しなやか”なタイトルだと思うし、アルバム一枚を通して、“しなやか”な山下が存在する。甘いだけではない、ビターで、でも温かく、凛としていて、4年前の山下から“深化”した、33歳の男の存在証明をこのアルバムでしている。

『YOU』(2014年)以来のオリジナルアルバムとなる今回の作品には、MUSIC VIDEOが公開されている、無礼講ソングと称している「Right moves」と英語詞の「You Make Me」や、ライヴでも披露されている壮大でメロディアスな「With you」、歌詞を亀梨和也(KAT-TUN)と共作したミディアムバラード「Dancer」、通常盤ボーナストラック収録の甘酸っぱい青春ラブソング「あの日の香り」など、様々なラブソング、メッセージソングを聴かせてくれる。

「今の僕が、素直に良いと思える音楽を解き放ち、女性にも男性にもたくさんの人に届けたい」

ハウスやトロピカルといった、最新のダンスミュージックをベースにしたサウンドを駆使して、山下流のポップスを作り上げ、サウンドにも言葉にも本人の強いこだわりが反映されている。2014年に、色々なジャンルのダンスミュージックだけで構成したミニアルバム『遊(あそび)』をリリースしているように、ダンスミュージックと山下とは切り離せない。この4年間で、旅好きの山下はとにかく外国を旅して、色々な国で色々な人と音楽に出会ったという。今回のアルバムについて、「音楽活動を本格始動するまで、色んな世界で色んな音楽に出会い、触れてきました。俳優業でも多くの事をインプットさせていただきました。これを良い音楽としてアウトプットできたらという思いを込め、楽曲制作にも参加し、アルバム制作に取り組みました。今の僕が、素直に良いと思える音楽を解き放ち、女性にも男性にもたくさんの人に届けたいアルバム」と語っている。

旅を続け、出会いを重ね、手にした確固たる想い

旅によって人は解放され、様々なものを吐き出し、また、そこでの人との出会いで心が豊かになり、その国や土地の景色や匂い、食べ物、音楽、文化に刺激を受け、それをインプットし、再生していく。山下もそうだ。外国の地で出会った、国籍も人種もそしてカルチャーも違う中で生活している人達は、自分自身というものを大切にし、自信を持っていると感じたという。ありのままの自分をしっかり受け入れているということが、うらやましくもあり、眩しかった。そんな出会いや経験から得たものが、『UNLEASHED』という言葉、アルバムにつながっていく。何ものにも縛られず、もっと自由に生きていきたい、生きていこうよ、というメッセージを込めた。歌詞のほとんどを自らが手がけ、全ての人にメッセージを贈っている。

今を見つめ、未来へ向けた強い言葉を、多彩な表現力で表現

<今まで手に入れたもの 手離す覚悟はあるか 恐れるものはないさ><誰もみたことない楽園へ行こう「go」>(「Paraiso」)、<解き放たれよう look at me look at me now 本当の自分と出会う hey この場所で>(「LOOK AT ME,LOOK AT ME」)、<固まらない 僕の未来>(「秒針」)、<訪れない未来や 報われない期待は 求めなんてないよ>(「StrAwbErry」)、<終わらない Never end ever 世界へ 届くまで繋がっていくから>、<作り笑いなんてしなくていい ありのままの涙流せばいい 君が思うより 君は特別さ love your self. I’m with you>(「With you」)……繊細で優しく、力強い、全ての人の背中を押してくれる前向きな言葉が、このアルバムには日本語、英語問わず、たくさん散りばめられている。

もちろん“いい言葉”を音楽で人に伝えるためには、歌の力、表現力も必要だ。山下は一曲一曲、多彩な表現力を駆使し、丁寧に表現している。ボーカルパワーの進化も、このアルバムの大きなトピックスだ。

変化を恐れず、チャレンジし続ける表現者・山下智久

9月からスタートした、13万人を動員予定の全国ツアー『TOMOHISA YAMASHITA LIVE TOUR 2018 UNLEASHED-FEEL THE LOVE-』と並行して、アルバム制作をしていた山下。かなりのハードワークだったようだが、多くの人の協力の元、伝えたい、伝えなければいけない音楽が詰まった一枚を作り上げた。山下はもちろん、この作品に携わった多くの人の優しさと、ほとばしるエネルギーとが、きちんとパッケージされている誠実なアルバムだ。

山下が主演した映画『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』が、興行収入92億円を越え(12/1現在)、2018年の劇場ナンバーワンヒットとなり、俳優としての代表作のひとつになりそうだが、『UNLEASHED』も、アーティストとしてのキャリアの中で、非常に重要な一作になるはずだ。

変化し続けることを決して恐れず、チャレンジし続けている山下は、より自由になって、常に新しい景色、未来を見つめている。それは“説得力”となって、より作品に深みと輝きを与える。(写真提供/SMEレコーズ)

山下智久 ソニー・ミュージックオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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