虎の隠し玉は身体能力抜群の国立大生・奥山皓太(静岡大)「糸井嘉男選手のようになりたい」
阪神タイガースが育成ドラフト2巡目で指名したのは、国立の静岡大の大型外野手・奥山皓太だ。
全国的にはまったくの無名だが、186cm93kgと大柄ながら50mを5秒8で走り、遠投も120mを投げるなど高い身体能力を生かした走攻守で存在感を放つ。大学入学後に投手から外野手に転向し、3年秋にようやくレギュラーを獲得した遅咲きだが、右肩上がりの急成長を遂げてきた。
野球好きだった父の影響で「自然と興味が湧いて」と野球を始め、小中学校時代は軟式野球をし、双方で関東大会出場を果たした。当時から俊足で小学6年時には甲府市の陸上競技大会の短距離で優勝したこともある。
文武両道を掲げる甲府西では1年秋から本格的に投手へ転向。最速140km/hを投げ最後の夏は8強入りした。そんな大型の速球派右腕には、東都大学2部や全国大会出場歴のある関甲新学生野球の大学から誘いもあった。
大学でも野球を続ける気でいただけに、ありがたい話ではあったが、高校選択と同じく「文武両道」を基準にし、2014年に全日本大学野球選手権に出場していた国立の静岡大を選んだ。しかし、そこでなかなか芽は出なかった。
高校時代に右肘を痛めたこともあり大学でも再発。大学3年から外野手に転向したが「野手の勝手が分からなかったこともありますし、両打ちに取り組んだ時期もあったり、何をすべきかブレていました」と、きっかけを掴めずにくすぶっていた。
転機が訪れたのは昨夏だ。コーチから昇格した高山慎弘監督が就任すると、オープン戦で多くの選手を起用。その中でスタメン起用された際、高山監督から「1試合1本ヒット打てばいいから」と声をかけられ、気持ちが楽になり目標もできた。それを続けていくとレギュラーに定着。右打ちに専念し、以降は3季すべてで3割を超える打率を残した。
足も右打席で打球を放ってから一塁まで4.03秒を計測し、ドラフト候補になっていた右腕・山崎智也(現新潟アルビレックスBC)の視察に来ていたスカウトの目にも留まった。
そして、その中でも特に阪神・吉野誠スカウトがその潜在能力を高く買い、今年に入ってから数回視察に足を運び、今秋はスカウト幹部も連れて訪れるほどになっていった。
まずは育成選手からのスタートになるが奥山の夢は大きい。「走攻守揃ったオールマイティーな糸井嘉男選手のような選手になりたいです」と語った。吉野スカウトも「野手に専念してから期間が短く粗削りな部分があるが、プロで大化けする可能性を持った選手」と期待する大型外野手が夢への大きな一歩を踏み出した。
文・写真=高木遊