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果たして森保監督はプランBとプランCをどのように使うつもりなのか?【セルビア戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

後半は布陣変更を試す絶好の機会だった

 5月28日にスタートした代表5連戦の4試合目にあたるセルビアとの親善試合は、1-0で勝利を収めたが、日本がこの試合で手にした収穫はそれほど多くなかった。

 とりわけ守備に重きを置いたセルビアに対し、日本は多くのチャンスを作れなかった。セルビアが採用した3-4-2-1のシステムに対し、4-2-3-1の日本がスムーズなビルドアップを実行出来なかったことが、その要因のひとつだ。

 前半に日本が記録したシュートは、33分に見せた伊東のカットインからの左足シュート1本のみ。23分に鎌田が狙って壁を直撃した直接FKを入れても、計2本だった。

 オナイウ阿道や川辺をはじめ、計6人が投入された後半は、確かにシュート5本を記録したが、ゴールチャンスと言えたのは2回。オフサイド判定で幻と消えたオナイウ阿道のシュートと、終了間際に植田のフィードに抜け出した浅野がネットを揺らせなかったシーンのみ。

 確かに後半はセルビアにチャンスらしいチャンスを与えなかったという部分では及第点と言えるが、攻撃の工夫はもっと高いレベルで要求されるべき内容だったことは間違いない。

 その中で特に気になったのは、後半の森保監督の采配だ。

 連戦の中で選手をローテーションさせるのは分かるが、ここまでの4試合では、4-3-3のテストも1度あったが、選手やその組み合わせのテストに主眼を置いた采配に偏っている印象を受ける。

 たとえばこの試合の後半に、3バックの相手に対して停滞していた攻撃を活性化させるためのシステム変更は、あって然るべき。陣形を変えることで相手の守備網を打開するためのテストとしては、絶好の機会だったと思われる。

 試合前日、森保監督は「(相手が)4バックで来ても3バックで来ても柔軟に戦えるかどうかを見ながら、状況によってかたちを変えることも考えたい」とコメントしていただけに、それはなおさらだ。

 以前も、森保監督は試合中のシステム変更について、勝つ確率が高いと思ったのでシステムを変えないという判断をしたことがある。もちろん、システムを維持して上手くいくのであれば、それは妥当な選択と言えるだろう。

 しかしこの試合の後半は、それを試すに相応しい多くの条件が整っていた。

 負けても大きな打撃にならないうえ、お互い主力を欠いたメンバー同士だったこともあり、力関係はほぼ互角。さらに、前半の終了間際の10分間に相手の攻撃を受けてリズムを失いかけていたため、後半は特に攻撃面を活性化させるためのカンフル剤が求められていた。

 そのタイミングで、まだこのシリーズで採用していないプランBの「3-4-2-1」、あるいは今年に入って2度使ったプランCの「4-3-3」にシフトチェンジしたなら、4-2-3-1を維持するよりも、今後につながる情報を圧倒的に多く得られたことだろう。

 アジア最終予選までに残された時間は、もうほとんどない。プランB、プランCは、どのような状況で使うのが、最も効果的なのか。それを判断するうえで必要な情報は、現段階ではあまりにも少なすぎる。

 6月15日のキルギス戦は、最終予選までに残された最後の試合だ。相手との力関係を考えると、そこで得られる情報は少ないかもしれないが、オプションを試すラストチャンスになる。

 森保監督が自身の采配ぶりをテストするのかどうか、注目したい。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

後半はプレー機会が減少したが、前への飛び出しを含めて、試合全体を通して危なげないゴールキーピングを見せた。試合開始からビルドアップにも積極的にかかわっていた。

【右SB】室屋成(65分途中交代)=5.5点

前半は相手のウイングバックの対応に追われて攻撃参加が鳴りを潜めたが、後半は立ち上がりから積極的にオーバーラップを仕掛けてクロスを供給した。後半途中で山根と交代。

【右CB】植田直通=6.0点

相手のロングフィードに対するエアバトルで強さを発揮。谷口とのコンビネーションも上々の出来だった。後半88分に絶妙なフィードを供給して、浅野の決定的場面を演出した。

【左CB】谷口彰悟=6.0点

試合を重ねるごとにプレーの精度が上がってきた印象。前半44分には難しい縦パスを供給して大ピンチを招くことになったが、それ以外の縦パス供給は質、回数とも上々の出来。

【左SB】長友佑都(82分途中交代)=5.5点

相手の右ウイングバックに対する対応はベテランならではの経験値が光った。ただ、攻撃面での南野とのコンビネーションプレーは不発に終わった。後半途中で小川と交代した。

【右ボランチ】守田英正=6.0点

前半から失敗を恐れずに縦パスを出そうする意欲が見られた。守備時のポジショニングも上々で、自陣では要所でボールを刈り取った。橋本とのコンビも試合を重ねるごとに向上。

【左ボランチ】橋本拳人(HT途中交代)=6.0点

序盤はらしくないミスもあり、決定的な仕事はなかったが、守田とスムーズにポジションを入れ替えて攻守両面で勝利に貢献した。前半のみで川辺と交代してベンチに下がった。

【右ウイング】伊東純也(76分途中交代)=6.5点

後半開始早々に、コーナーキックからこの試合唯一のゴールを決めた。後半64分にはスピードを生かした抜け出しからオナイウ阿道のシュートを演出するも、オフサイドで幻に。

【左ウイング】南野拓実(82分途中交代)=5.5点

この試合では左ウイングでプレー。相手の厳しいマークに遭い、見せ場を作れないまま前半のみのプレーで交代した。試合後、所属クラブの事情でチームから離脱することが決定。

【トップ下】鎌田大地=6.0点

相手ダブルボランチの背後で受けるスペースがない時は、中盤まで下りてパスを受けるなど、クレバーな面も披露。決定的な仕事はなかったが、日本の攻撃陣をリードしていた。

【CF】古橋亨梧(HT途中交代)=5.5点

慣れない1トップでの出場となったが、何度か相手3バックの左右のスペースに流れる動きでボールを収めるシーンも。ただ、1トップよりも2列目の方が良さを発揮しやすい。

【MF】川辺駿(HT途中出場)=6.0点

今回も持ち味を十分に発揮した。プレーエリアが広く、パス供給能力も高いため、攻撃の活性化を促すためのボランチとして、試合を重ねるごとに序列を上げている印象がある。

【FW】オナイウ阿道(HT途中出場)=6.0点

負傷離脱の大迫に代わって急きょ招集され、後半開始から出場して嬉しい代表デビュー。裏抜けのみならず、前線でボールをしっかり収めるという特徴も披露。次の試合も期待。

【DF】山根視来(65分途中出場)=5.5点

室屋に代わって途中出場し、右サイドバックでプレーした。相手のウイングバックに対する対応も影響して、持ち味の攻撃参加は控えめだった。守備は試合ごとに改善されている。

【FW】浅野拓磨(74分途中出場)=5.5点

短い時間で2本のシュートを放つなど、ゴールへの意欲は見せた。ただ、88分の決定機でミスしてしまったのは痛恨。シュート、パス、トラップなど、プレーの精度向上が急務。

【DF】小川諒也(82分途中出場)=採点なし

長友に代わって後半から途中出場し、左サイドバックでプレー。出場時間が短く採点不能。

【MF】原口元気(82分途中出場)=採点なし

南野に代わって後半から途中出場し、左ウイングでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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