星野リゾートによる日本初のワインリゾートは? おいしい食べ物と銘醸ワインを徹底紹介
登山客に人気の八ヶ岳
日本で最も高い山は、誰もが知る富士山。標高3,776メートルで、裾野が長く円錐状の姿が非常に美しいです。
そのすぐ近くには、山梨県から長野県にまたがる八ヶ岳があります。日本百名山の一つであり、最も高い赤岳2,899メートル。富士山よりも1,000メートル近くも低いですが、約25万年前には八ヶ岳の方が1,000メートル高かったということです。この八ヶ岳は景色も美しく、北部の北八ヶ岳と南部の南八ヶ岳で山の表情も異なっていることから、登山客に大きな人気を博しています。
さらには、生息する植物が1,000種類を超えているなど、自然環境も実に豊かです。
星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳
魅力的な八ヶ岳で、地元の食材や食文化に寄り添った食を楽しめるところがあります。それは、星野リゾートが運営するリゾナーレ八ヶ岳。
日本でも有数のワイナリーを擁する山梨県と長野県にあるホテルらしく、日本初のワインリゾートを謳っており、ワインと食が非常に充実しています。
「オットセッテ(OTTO SETTE)」は独創的なイタリア料理と約2,000本ものワインを楽しめるイタリアンレストラン。「OTTO」は数字の「8」つまり八ヶ岳を表し、「SETTE」は数字の「7」、つまり、食材を提供する7人の達人を意味しています。
「ワイワイグリル(YYgrill)」はワインの木箱を組み込んだ壁や葡萄の実りを描いた壁画などで独特の世界観があり、賑やかにブッフェとワインを楽しめるレストラン。
厳選された山梨県や長野県産のワインを気軽にテイスティングできる「八ヶ岳ワインハウス(YATSUGATAKE Wine house)」があるなど、まさにワインと食を堪能できるホテルです。
では、それぞれの施設を詳しく紹介していきましょう。
オットセッテ(OTTO SETTE)
メインダイニングとなるのが、ディナーにだけ営業する「オットセッテ」。イタリアの世界的な建築家マリオ・ベリーニ氏がデザインした店内は、高い吹き抜けの下、光の降り注ぐ大きな窓越しに八ヶ岳の森を眺められるという、素晴しいシチュエーションにあります。
総料理長の鎌田匡人氏は山梨県で育ち、県内のホテルで修業してから2012年にリゾナーレ八ヶ岳へ。2021年7月から現職に就き、野菜のポテンシャルを最大限に引き出す調理法を見極め、「この土地ならではの食材との出合い」を提供します。
ソムリエは長久保正邦氏。長久保氏も山梨県で生まれ育ち、県内で研鑽を積んできました。2014年にリゾナーレ八ヶ岳へジョインし、山梨県や長野県のワインを中心に、素晴しいマリアージュを提供しています。
提供されているコースは、野菜とワインのペアリングコース「ヴィノ・エ・ヴェルドゥーラ(Vino e Verdura)」(24,500円、7日前までに要予約)と季節限定のコース。
今回は2022年6月28日から9月6日にかけて行われている「夏限定のディナーコース」(12,100円)を紹介しましょう。
アスパラガスのスフォルマート
最初はアスパラガスのおいしさを引き出したアミューズ。ホワイトアスパラガスのスフォルマート(フラン)の上に鮮やかなグリーンアスパラガスのソースが層を成します。穏やかな滋味で、食事の滑り出しとしては、ぴったりな一品。
前菜4種の盛り合わせ
八ヶ岳の水、土、森、太陽を表現した前菜4種を、それぞれイメージしたカマチ陶舗の器で提供しています。左から順番に説明しましょう。
塩が振られた稚アユとズッキーニのフリットは、さっくりと揚げられています。エストラゴンのジュレの上に、ツブ貝と生ウニ、シブレットが散らされた一品は、磯の香りと心地よい清涼感が出色。ジビエの鹿肉を用いたサルシッチャは、白インゲン、刻んだルッコラと合わせ、フェンネルとチーズのチュイールがあしらわれていました。鹿肉の力強い食味に、様々な味わいが重なります。最後はトウモロコシのエスプーマと、素揚げしたそのヒゲ。品のよい甘味が口福を満たします。
野菜畑
八ヶ岳の野菜畑を表現したシグネチャーディッシュです。30種類以上の野菜が使われており、季節によって用いられる野菜が変わります。当日はズッキーニ、パプリカ、トマト、ビーツ、オクラ、カボチャ、枝豆といった野菜に加えて、豚肉の部位を余すところなく使ったイタリア郷土料理のテリーヌ「ソップレサータ」や鶏胸肉のムースをのせたブルスケッタも。動物性の食味が添えられていることによって、野菜の繊細な味がより引き立ちます。ソースはキャベツ、黄ズッキーニ、パプリカと3種類もあり、まるでアートのようなプレゼンテーションです。
虹鱒と雑穀のリゾット
雑穀のリゾットの上には、低温調理でじっくりとコンフィした厚切りのニジマス。仕上げに250度のオリーブオイルがかけられ、ふわっと香りが立ちます。脂がのったニジマスは、アワビの肝のソースによって深みが生まれ、バジルや大葉によって爽やかな後味に。
トマトの冷製カッペリーニ
1品目のパスタは冷製カッペリーニです。トマトの味わいが凝縮されたソースに、クリーミーなモッツァレラチーズ、甘いボタンエビ、濃厚なカラスミを加えて濃厚な口当たりに。ミントの葉が涼しげな香味を演出します。
豚肉のサルシッチャと夏野菜のトンナレッリ
2品目のパスタは、太い卵麺のトンナレッリ。ズッキーニとパプリカのカポナータに、大胆なローズマリーの泡が印象的です。仕上げに、羊のチーズであるペコリーノ・ロマーノをスライスし、癖になるような独特の風味をまとわせます。
岩魚のヴァポーレとカリフラワーのロースト
イワナを蒸し焼きにし、身はふっくらと、皮はカリカリに仕上げました。クミンを効かせたカリフラワーは食欲をそそる香味です。魚と昆布の出汁の上品なスープに、香草ソースとすり下ろしたマカダミアナッツが合わせられ、モダンイタリアンのエッセンスがふんだんに感じられます。
牛肉のロースト ザバイオーネソース
メインディッシュは見事な焼き色にローストされた牛肉のロース。身はやわらかくてジューシー、赤身の旨味がたっぷりです。行者ニンニクのたまり醤油漬けや牛肉の出汁と味噌風味の卵黄ソースが、牛肉の佳味をさらに引き出していました。付け合わせのヤングコーンとジャガイモのトリフォラート、どちらとも香ばしく、ちょうどいい箸休めに。
桃のメリンガータ
桃を主役にしたメレンゲのケーキで、桃にメレンゲ、アーモンドのビスキュイとクルミのクランブルといった構成。ミルクのフォームで作られたチュイール、バジル風味の飴細工が美しいです。スモモと赤ワインのソースの酸味が、さっぱりとした桃とよいコントラスト。
ワインのペアリング
店内にある幅12メートルものワインセラーの中には、約2,000本ものワインが収められています。長久保氏いわく「温度は12度から13度、湿度は75%に保たれているので、ワインに最適な環境です」。ワインの構成は、山梨県を中心とした日本ワインが9割、他はイタリアとフランスのワイン。
このワインセラーから、長久保氏によってチョイスされたワインペアリングをいくつか紹介しましょう。
「キザン・スパークリング・トラディショナル・ブリュット 2020」は山梨県甲州市塩山にある機山洋酒工業のスパークリングワイン。白ブドウの甲州100%で、シャンパーニュと同じく瓶内二次発酵で造られています。重厚な味わいながらも、すっきりした飲み心地なので、喉を潤したり、アミューズに合わせたりする一杯目にぴったりです。
「シャルドネ 2020」は山梨県北杜市小淵沢町にあるドメーヌ ミエ・イケノの白ワイン。フルーティーでありながらも、厚みと酸味がしっかりとした味わいが、滋味のあるイワナと一体感を生み出しています。ドメーヌ ミエ・イケノは、国内7人目となるフランス国家資格ワイン醸造士(D.N.O.)を取得した池野美映氏のワイナリー。極めて人気が高く、入手困難となっていますが、山梨県に根ざしたリゾナーレ八ヶ岳との関係性から、安定的に仕入れることができています。
「ドメイヌ・ソガ サンシミ・プティ・ヴェルド 2019 ソワソント・ヌフ」は長野県上高井郡小布施町にある小布施ワイナリーの赤ワイン。牛肉のローストがもつ佳味とザバイオーネソースの凝縮された旨味を、プティ・ヴェルドの果実味とスパイス感がより引き出しています。
テーブルウェアにもこだわり
テーブルウェアにもこだわりが見掛けられます。
プレートはカマチ陶舗の有田焼や森山硝子店が中心。フランス・リモージュのベルナルドもポイントで用いられており、料理の存在感を際立たせています。カトラリーはイタリアンらしく、イタリアのメプラで統一。
食器にも注目してみると、より素晴しい食体験が紡がれることでしょう。
ワイワイグリル(YYgrill)
「ワイワイグリル」は賑やかで楽しいブッフェレストランです。ワインの木箱を組み込んだ壁やブドウの実りを描いた壁画があったり、天井がブドウ棚をモチーフにしていたりと、まるでブドウ畑で食事しているかのような雰囲気。朝食、ランチ(当面の間は休止)、ディナーと、ほぼ終日利用できます。
※朝食:大人 2,800円、7〜11歳 1,960円、4~6歳 1,400円、3歳以下 無料
※ランチ:大人 2,550円、7〜11歳 1,780円、4~6歳 1,280円、3歳以下 無料
※ディナー:大人 6,200円、7〜11歳 4,340円、4~6歳 3,100円、3歳以下 無料
ワインにぴったりのディナーブッフェ
ディナーでは、冷製料理18種、温製料理20種、デザートとフルーツ11種と種類数が豊富。ブルスケッタや生ハム、キッシュやフリットなど、ワインのつまみになるようなメニューがずらりと揃えられています。
これに加えて、できたてのメインディッシュを1品選べるのが嬉しいです。牛フィレ肉のグリル(~2022年8月31日)、牛リブロースのグリル、豚ロースのグリル、真鯛のグリルからチョイスでき、連泊であれば鴨胸肉のグリル、メカジキのグリル、鹿ロースのグリル(~2022年8月31日)も登場します。子ども用に、牛肉のステーキ、ハンバーグが用意されているのも良心的。
ブッフェレストランであるにもかかわらず、ワインのラインナップも豊富です。
ハウスワイン(グラス 950円、カラフェ 2,200円)は、ワイン樽から自分で注ぐという貴重な体験ができます。白ワインは甲州、赤ワインはマスカット・ベーリーAと、山梨県らしいブドウ品種です。
驚くべきは「ワイワイグリル」でもドメーヌ ミエ・イケノのシャルドネ、ピノ・ノワール、メルロをグラス(それぞれ1,900円)で飲めること。プレミアムなワインが手軽に飲めることによって、日本ワインの裾野が広がることでしょう。他には、スパークリングワイン2種、白ワイン2種、赤ワイン2種がオーダーできるので、ワイン好きにはたまりません。
デザートには、煙の演出がある桃といちごのヴェリーヌを楽しむことができます。
朝食ブッフェ
朝食のブッフェも特筆に値します。和食と洋食のメニューが半々ずつ用意されており、バランスのとれた品揃え。
山梨県の名物であるほうとうは鍋で供されており、三つ葉や柚子といったものからクミン山椒やパルメザンチーズといった薬味まで用意されており、様々な味を体験できます。季節によって実演は変わりますが、取材時にはローストビーフ丼やワッフルが用意されていました。
ローストビーフ丼はミョウガやホースラディッシュのアクセントが爽やか。ワッフルはベリーのソースに加えて、生クリームとヨーグルトのソースが軽やかで出色です。
6歳までの幼児には、最初に盛り合わせプレートが提供されます。そうすることによって、家族で訪れても、子どもはすぐに食べられ、親も自分たちのものから取り始めることができるという、心配りの利いたアイデアです。
八ヶ岳ワインハウス(YATSUGATAKE Wine house)
「八ヶ岳ワインハウス(YATSUGATAKE Wine house)」はワインリゾートらしい施設です。山梨県と長野県にある銘醸地のワインが取り揃えられており、ワインをテイスティングしたり、購入したりすることができます。
24本のワインが試飲でき、25ミリリットル、50ミリリットル、150ミリリットルと容量を選べるのは良心的です。気になるワインがあれば、気軽に試してみるとよいでしょう。
ワインの購入については、入手困難なドメーヌ ミエ・イケノについても可能。1部屋につき、シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロのいずれか1本を購入できるので、ワイン好きにとって大きな魅力です。
さらに嬉しいことに、ここで購入したワインは「ワイワイグリル」や屋内にあるビーチリゾート「イルマーレ(il mare)」に持ち込み(BYO)することができます。
「八ヶ岳ワインハウス」でワインを購入すれば、お土産にだけではなく、ゲストルームで飲んだり、持ち込んだりと、幅広い選択肢があるのです。
八ヶ岳夕涼みアペロ
アクティビティでも評判の高い星野リゾートらしく、リゾナーレ八ヶ岳でも様々な催し物が行われています。
特に毎年実施されている、「八ヶ岳夕涼みアペロ」(2022年7月13日〜8月31日)は是非とも体験しておきたいところ。八ヶ岳や南アルプスが望め、涼しい風が吹き抜ける広場で、スパークリングワインを飲みながら夏の夕暮れ時を過ごせます。
山梨県と長野県のスパークリングワイン10種類の中から、4種類が提供されているので、好きなものを選ぶとよいでしょう。オススメしたいのは甲州100%で造られた「トラモント(Tramonto)」(700円)。山梨県山梨市にあるカンティーナ・ヒロによる、リゾナーレ八ヶ岳オリジナルのスパークリングワインです。甘味と酸味のバランスがとれており、泡立ちもクリーミーなので、夏の暑さも吹き飛ばしてくれます。
スパークリングワインのお供には、爽やかな氷菓子「ブルーベリーのグラニータ」(1,200円)をオーダーするのがよいでしょう。適度な甘味がスパークリングワインの酸味とよく合っています。夕日に映えた南アルプスを背景にして、スパークリングワインやグラニータをいただくのは非常に贅沢な時間です。
八ヶ岳マルシェ
今年2022年で13年目を迎えるのが、目抜き通りであるピーマン通りで行われる「八ヶ岳マルシェ」。
ここでは、販売している生産者のこだわりに触れたり、夏野菜を使用したかき氷を楽しめたり、マルシェで購入した野菜をバーベキューにして食べたりできます。特に人気なのが「夏野菜のかき氷」(800円)。トウモロコシ、トマト、ナスの3種類がラインナップされています。
トウモロコシのかき氷は、糖度の高いトウモロコシを用いたシロップがとても上品です。トウモロコシの実もよいアクセント。ナスのかき氷は、赤ワインでじっくりと煮込んだナスのコンポートが、まるでデザートのようです。どちらとも練乳と七賢の甘酒を合わせた練乳甘酒がかけられており、まろやかな味わいに仕上がっています。トマトのかき氷は、トマトの心地よい酸味が、マイルドなマスカルポーネチーズやハチミツとよく合っていました。フリーズドライしたトマトチップのテクスチャが軽やかです。
「夏野菜のかき氷」はボリュームたっぷりですが、サクサクとした食感でいくらでも食べられそうなので、いくつかオーダーして食べ比べてみるのもよいでしょう。
ナイトラウンジ
広々としたロビーのラウンジでは「ナイトラウンジ」(2022年7月22日~8月31日)が開催されていました。ジェラートとワインが無料で提供されており、夏の夜を優雅に過ごすことができます。
当日は、甘い香りの桃のジェラートとコクのある葡萄のジェラート、白ワインの奥野田ワイナリー「このゆびとまれ」と赤ワインのミュゼドゥバン「ブラッククイーン」が提供されていました。ジェラートもワインも、適度なボリュームなので、食後でも体験してみるとよいでしょう。
大人のためのファミリーリゾート
星野リゾートが運営するリゾナーレは、トマム、那須、八ヶ岳、熱海、小浜島と全国で5つ展開されているリゾートホテルブランドです。コンセプトは「大人のためのファミリーリゾート」で、地域や季節を感じられるイベント、大人が寛いで過ごせる空間とサービス、子どもが楽しく学べるプログラムが提供されています。
リゾナーレ八ヶ岳は、日本ワインの銘醸地である山梨県に位置することからワインリゾートと謳われていますが、美食を堪能できる「オットセッテ」に加えて、子どもが楽しめるブッフェレストランの「ワイワイグリル」も素晴しいです。
思い出に残るワインリゾート
森をテーマにしたビーチリゾート「イルマーレ」で遊べたり、のんびり買い物できる「八ヶ岳マルシェ」で散歩できたりと、ファミリーが楽しめることに間違いありません。
他にも、特筆したいのが「森の空中散歩」(3月下旬~12月中旬)。八ヶ岳の森に設けられた地上5メートルから7メートルのアスレチックコースで、大人も子どもと一緒にそのスリルを味わうことができます。アルプス広場で行われる「線香花火」(2022年7月22日~8月31日)も夏の風物詩です。
ワインリゾートでありながらもファミリーで楽しめるリゾナーレ八ヶ岳には、思い出に残る体験が目白押しなので、是非とも訪れてみてください。
※価格は全て税・サービス料込