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「サイクロン・イダイ」モザンビーク上陸 死者150人超も

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
NASAの衛星画像に筆者加筆。黄線はイダイの経路。

現地時間14日(木)夜、アフリカ・モザンビークに、サイクロン・イダイが上陸しました。モザンビークの第4の都市ベイラが直撃を受け、複数の病院や学校が破壊されたり、大木が根こそぎ倒れたりするなどの被害が起きました。

※モザンビークは、アフリカ大陸の南東部に位置する、人口約3,000万人の国です。ちなみに織田信長の黒人の家臣であった「弥助」の出身国でもあります。

サイクロン・イダイ

サイクロンの強さの指標 (筆者作成)
サイクロンの強さの指標 (筆者作成)

上陸時の中心気圧は955hPa、最大風速は約50メートルで、上から2番目に強い「インテンス(強烈な)」と呼ばれる勢力でした。

イダイは上陸後まもなくして温帯低気圧へと変わりましたが、15日(金)にはシンバブエなどに大雨をもたらしました。ジンバブエでは洪水などが原因で31人が死亡したと伝えられています。

未だに数百人が行方不明になっており、死者の数が増えることが懸念されます。また国連によると、このサイクロンによる被災者数は150万人に達するとのことです。

上陸前の被害

アフリカ南部では今月あたまから大雨が続き、上陸前の時点で死者数はすでに3桁に達していました。その理由は、下の図のようなイダイのとった特異な経路にあります。

イダイは今月3日にモザンビーク上で熱帯低気圧へと発達、東進してマダガスカルに接近、海上でサイクロンとなった後、180度向きを変えて14日(木)にモザンビークに上陸しました。

このため同じような地域に雨雲がかかり続け、上陸前の段階でモザンビーク、マラウィ、南アフリカの3国で126名が死亡したと伝えられています。

モザンビークと自然災害

モザンビークに台風が上陸するのは、平均で4~5年に一度のことです。

多くのサイクロンがモザンビークに上陸する前に南寄りの進路をとります。しかし過去には、今回のように勢力の強いサイクロンが直撃して、甚大な被害が出たことがありました。

例えば2000年2月にサイクロン・エリーンが上陸した際には、100年ぶりとも言われる大洪水を引き起こし、350人が死亡、65万人が家を失いました。

モザンビークでは、サイクロンに加え、干ばつやモンスーンによる洪水なども発生しやすく、アフリカの中では3番目に自然災害のリスクが高い国とされています。

※※追記(4/5)※※

モザンビークでの死者数は598人超に達し、サイクロンによる死者数としてはモザンビークの統計史上最大となりました。また3月20日の洪水面積は2,165平方キロにもおよび、東京都に匹敵するほどの大きさでした。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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