【丸亀市】丸亀城の南側・山北町に城南書店街オープン シェア型本棚で43人のオーナーが誕生
本とコーヒーで人の輪を広げるシェア型書店「城南書店街」が8月5日、丸亀市山北町にオープンしました。小さな本棚をシェアするかたちで、43人の書店オーナーが誕生。プロジェクト発起人の藤田一輝さんは「僕一人で作るのではなく、多くの人と『丸亀にあったらいいなと思える空間』を作っていきたい」と話していました。
高校生もシニアも「こだわりの本」
「30センチ×30センチの棚」が、オーナーたちの本の売り場「書店」です。新刊・古本・ZINE(自主出版物)を売ることができ、100円単位でオーナーが値付けします。
オープン時は、15歳から69歳までの43人がオーナーとして棚を作りました。職業もさまざまで、大学教員やうどん店の関係者、主婦など。中には地元の高校生もいます。まだ、空いている棚が20枠くらいあるので、新しいオーナーを募集しているそうです。
城南書店街は「街」というネーミングのとおり、小さな空間に書店・文具店・カフェが並んだ街をイメージして、空間が設計されました。訪れた人は自由に椅子に座って、本を手に取ったり、店番の藤田さんと会話を楽しむことができます。
店内の椅子も、かわいいデザイン。特に、紙のヒモで座面が編まれている「UDONスツール」に注目です。香川県内のうどん店で古くから使われていたスツールで、アノニマス(作者不明のデザイン)とされています。脚がグレーに塗られ、おしゃれな雰囲気に仕上がっていました。
丸亀市内などの一部うどん店で今でも使われているそうなので、うどん店を巡った時に探してみるのも楽しそうです。
本を購入した人には、コーヒーが1杯無料でプレゼントされます。オランダ製のコーヒーメーカーで、「ここでしか飲めない」自家焙煎のコーヒーを淹れてくれます。1杯500円で注文もできます。
そして、本を物色してみると気になる棚がいくつもあったのですが、米文学作品の翻訳家の棚から1冊をチョイス。大好きなジョン・アーヴィングの作品を購入できました(本の購入は、現金は不可で電子決済のみ)。なんと、翻訳家自身が手がけた本が並んでいたのです。
「思いがけず素敵な本に出会えて、『本を買う』ことが特別な体験になりました」と藤田さんに伝えると、「棚のオーナーは、店番に来ることもあります」と微笑みました。
発起人の藤田さん「面白い動き、作れたら」
藤田さんは丸亀市出身。高校生の頃から、「商店街がシャッター通りになって、元気がない」と気になっていたそう。武蔵野美術大で建築とデザインを学び、2013年頃に東京都国立市にある国立本店(くにたちほんてん)というコミュニティ空間に出合います。
そこでコーヒーを淹れていた藤田さんは、「本とコーヒーのおかげで、初対面の人とも交流が生まれる」ことを体験。人と人が繋がって、次の動きが生まれる面白さも実感したそうです。
2020年4月に丸亀にUターンした藤田さん。住宅街の一角に小さなアンテナショップを開きました。立地は「四国でもトップクラスに発見されにくい」とか。
「丸亀には小さなコミュニティはあるのですが、広がりがない。それなら、自分で作ろうと思い、城南書店街を発案しました」。大工や木工家など5人の仲間と一緒に元倉庫だった物件をリノベーションし、東京・神保町のような書店・文具店・カフェがぎゅっと凝縮された空間が出来上がりました。
書店オーナーになりたい人は、藤田さんと1時間半ほどの面談を経て、「本やコミュニティ」への思いを語ると棚のオーナーに採用される流れです。
「オーナーの個性を活かして、自由度のある運営ができたらいいなと思います。本をたくさん売りたい人よりも、本を媒介にしたコミュニケーションやカルチャーを楽しんでくれる人に集ってほしいです」
8月と9月は藤田さんが店番をしますが、10月からは棚のオーナーに店番を任せる計画だそう。オープンした日は、高校生のオーナーが藤田さんと一緒に初の店番を担当していました。
開店資金は、クラウドファウンディングで160万円を集めました。「丸亀から本屋さんが減って寂しいですが、この場所で本屋さんが成り立ったら他の場所でもできると思います。そんなチャレンジの意味もあります」と話しました。
基本情報
名称 : 城南書店街
住所 : 香川県丸亀市山北町434-1平井ビル1階西
アクセス : JR丸亀駅から車で5分程度(駐車場4台)
営業時間 : 午後1時から午後5時(金・土・日曜日のみ)
定休日 : 月曜日から木曜日(不定休)
公式サイト