「一度きり」なら「不倫」をしても許されるか
昨夜、俳優の杏さんと東出昌大さんが7月31日までに離婚していたことが報道されました。近く双方から正式に発表される予定だそうです。
お二人の離婚を報じた記事に、夫婦の知人の方の次のようなコメントがありました。
このように、夫婦の知人のコメントによると、杏さんは「一度きり」の不倫でも許すことはできなかったようです。
そこで今回は、不貞行為と離婚の関係について考えてみたいと思います。
「不貞行為」は離婚原因になる
離婚には2種類あります。一つは、夫婦の間に離婚の合意がまとまり、それを戸籍法の定めるところに従い届け出ることによって成立する協議離婚です(民法763条)。
民法763条(協議上の離婚)
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
もう一つは、民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する裁判離婚があります(民法770条)。すなわち、夫婦間で離婚の合意ができない場合でも、本条が定める離婚原因があるときは、夫婦の一方は、訴えにより婚姻を解消することができます。そして、その中で「配偶者に不貞な行為があっあとき」を離婚原因として規定しています(民法770条1項)。
民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
「不貞行為」とは
このように、民法は、「配偶者に不貞な行為があったとき」を離婚原因として規定しています。これは、婚姻の効果として夫婦間に貞操義務があることを前提として、その義務違反としての不貞行為を離婚原因とする趣旨です。
もっとも、不貞行為は、多分に社会的倫理によって左右される面があり、必ずしも確定したものではありません。
判例は、不貞行為を「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」として、配偶者の自由意思(自分の意思)にもとづく姦通(配偶者以外の異性との性交)に限定しています(最高裁判判決昭和48年11月15日)。
「一度きり」なら許されるか
不貞行為の回数や期間は問いません。したがって、ごく短期間の一時的な関係であっても、不貞行為になります。
結婚したら貞操義務を負う
貞操義務は条文に規定はありませんが、重婚が禁止され、ご紹介したとおり不貞行為が離婚原因になり、また一夫一妻制という婚姻の本質から、夫婦は互いに貞操義務を負うとされています。
円満な結婚生活を望むなら、結婚をしたら「貞操義務を負う」ことを認識し、万一、不貞行為の誘惑にかられたら、「『一度きり』だから許されるだろう」ということはないことを肝に銘じておきましょう。それでも不貞行為を行う場合は、それ相当の代償が待ち受けていることを覚悟しておくべきでしょう。
参考文献:『新注釈民法(17)』(二宮周平 編・有斐閣)