「ほとほと嫌に」北朝鮮“美女レストラン”の現場で静かな反抗
ロシア極東のハバロフスクにある北朝鮮レストランの副支配人が、脱北を図ったが失敗し、逮捕された。
平壌のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのはハバロフスクの北朝鮮レストランの副支配人を勤めている50代男性のAさん。彼は、レストランの従業員を監視する保衛部(秘密警察)の指導員も兼任していた。
Aさんは、店のカンバンである美人ウェイトレスらの監督をすると同時に、その私生活までをも監視し、北朝鮮に報告する任務を行っていた。北朝鮮当局が海外で展開する外貨稼ぎレストランでは近年、女性従業員らの亡命が相次いでいるが、そうした事態を防ぐのがAさんらの役目だ。
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逆に言うと、そうした事態が起きてしまえば責任を取らされる、リスクの大きいポジションでもある。
また国から課された国家計画(ノルマ)の金額を上納、それ以外にも様々な名目で上納を命じられた金品を調達していた。従業員の事情如何は関係なく給料をピンはねして、自分の娘ほどの年齢の若者を生活苦に追いやり、本国からは上納へのプレッシャーをかけられる――Aさんは、そんな仕事に疑問を抱くようになった。
そして長年考えた末に、遂に「もうやってられない」との結論に達した。そして機会が訪れたのを見て脱北を図り、ある場所に隠れていた。目指すは韓国行きだ。報告を受けた平壌の国家保衛省(秘密警察の本部)は、「何があっても捕まえよ」との指示を下し、現地駐在の保衛員は、ロシアの諜報機関KGBに協力を要請した。その結果、先月末にAさんの逮捕に至った。
現在、Aさんは保衛員の監視のもとに置かれている。国家保衛省は、現地駐在の幹部、特に保衛員に対して「南朝鮮(韓国)行きを図れば、いかなる手段を使っても最後まで追い詰めるから思い知れ」と警告している。
このようなケースの場合、通常なら北朝鮮に強制送還されるが、ロシアの機関であるFSBが絡んでいるため、保衛員が独断で何らかの処分を下すことはできない。なお、北朝鮮とロシアは2016年2月に「不法滞在者の強制送還協定」を結んでいるが、強制送還されるかは不透明な状況だ。
中国と並んで、北朝鮮から派遣された労働者の多いロシアでは、中国と比べて自由な行動が許され、監視の目が弱いこともあって、脱北を試みる人が相次いでいる。無事成功する人もいる一方で、あえなく逮捕される人も出ている。