また出水期前の6月18日に地震 頻発する地震、7月も注意を
また起きた6月18日の地震
昨年起きた大阪府北部の地震と同じ日の6月18日、22時22分頃に山形県沖でM6.7の地震が発生し、新潟県村上市で最大震度6強の揺れとなりました。山形県沿岸部にある浅部の活断層がずれ動いて起きた地震のようです。幸いなことに、犠牲者は出ませんでした。沿岸近くで起きたため、津波到達までの時間が短く心配されましたが、津波の高さはさほどでもありませんでした。1964年新潟地震や1983年日本海中部地震などの過去の教訓から、住民が速やかに逃げてくれたことは嬉しいことです。揺れが短周期だったこと、雪国の住家の耐震性の高さなどから、全壊の住家は無く、屋根瓦のずれなどの被害が目立ちました。ブルーシートで覆われた屋根を見るにつけ、今後の雨が心配です。
陸のプレートが押し合う日本海東縁ひずみ集中帯
この地震の震源域は日本海東縁ひずみ集中帯と呼ばれる地帯に位置します。弧状の日本列島は2枚の陸のプレートと2枚の海のプレートがぶつかり合ってできています。海のプレートと陸のプレートがぶつかると、重い海のプレートが軽い陸のプレートの下に沈みこみ、その「沈み込み境界」で地震を起こします。この地震が、日本海溝沿いで起きる東北地方太平洋沖地震や、相模トラフ沿いで起きる関東地震、駿河トラフや南海トラフ沿いで起きる南海トラフ地震などです。これに対して、日本海東縁では、ユーラシアプレートと北アメリカプレートという陸のプレートがぶつかりあった「衝突境界」を作っています。これが、日本海東縁ひずみ集中帯です。
ひずみ集中帯で続発する地震
日本海東縁ひずみ集中帯では、北から、1940年積丹半島沖地震、1993年北海道南西沖地震、1833年庄内沖地震、1964年新潟地震、2007年新潟県中越沖地震、2004年新潟県中越地震が発生してきました。山形県沖の地震が起きたのは、新潟地震の震源域の北端当たりです。秋田県沖や佐渡島北方沖ではまだ地震が起きていないようなので、地震調査研究推進本部による長期評価でも、比較的高い地震発生確率になっています。
なお、日本海東端ひずみ集中帯の南西には、新潟―神戸ひずみ集中帯が位置します。この場所でも多くの地震が発生してきています。新潟県中越地震や新潟県中越沖地震に加え、東から西へ、1828年三条地震、1847年善行寺地震、2011年長野県北部の地震、2014年長野県北部の地震、1858年飛越地震、1891年濃尾地震、1948年福井地震、1909年姉川地震、2018年大阪府北部の地震、1995年兵庫県南部地震、2013年淡路島の地震などです。
出水期前の地震が多発する魔の1週間
出水期を迎える梅雨時の地震では、緩んだ地盤が土砂崩れを起こしやすくなります。雨が降った後は、地震で地盤が崩れやすくなり、一方で、地震で緩んだ地盤は大雨によって崩れやすくなります。このため、山形県沖の地震のあと、揺れが大きかった新潟県村上市と山形県鶴岡市について、大雨警報・注意報や土砂災害警戒情報の発表基準が引き下げられました。
実は、6月12日から6月18日までの1週間は、なぜか有名な地震が頻発しています。1978年6月12日宮城県沖地震、2008年6月14日岩手・宮城内陸地震、1896年6月15日明治三陸地震、1964年6月16日新潟地震、2018年6月18日大阪府北部の地震と2019年6月18日山形県沖の地震です。これらの地震の教訓を少し思い出しておきたいと思います。
東北地方太平洋沖地震の被害を暗示させた新潟地震
山形県沖の地震の震源の南に隣接する場所で起きた1964年新潟地震では、地震直後に新潟市を4mの高さの津波が襲い、広域の液状化で川岸町のアパートなどが横倒しになり、完成直後の昭和大橋が橋脚の移動で落橋しました。万代橋のたもとでは、今でも液状化による側方流動で狭まった河川堤防を見ることができます。海岸近くにある新潟空港は、津波と液状化による噴砂で冠水しました。また、長周期の揺れで石油タンクが炎上しました。これらの被害は、東日本大震災での広域な液状化や津波に襲われた仙台空港、タンク爆発、2003年十勝沖地震での苫小牧のタンク火災などを彷彿とさせます。
活かされた津波の教訓
明治三陸地震では、津波によって岩手県を中心に2万人を超える犠牲者を出しました。この場所では、その後、1933年昭和三陸地震、1960年チリ地震津波と津波災害が繰り返しました。これらの教訓はその後の防災教育に活かされ、東日本大震災での岩手県の津波犠牲者の人口比率は明治三陸地震に比べワンオーダー減じることができました。山形県沖の地震でも夜間なのにもかかわらず、多くの住民が速やかに避難しました。災害は繰り返しますから、過去の教訓を学ぶことの大切さが分かります。
活かされなかった都市を襲った地震の教訓
宮城県沖地震では、ブロック塀の倒壊で多くの小学生が犠牲になりました。また、丘陵地の宅地造成地での地盤災害が問題になりました。残念ながら、ブロック塀対策はなかなか進まず、再び大阪府北部の地震で同様のことが起きてしまいました。また、仙台郊外の谷埋め盛り土造成地では、東日本大震災でも大きな被害を出しました。残念ながら宮城県沖地震で学んだ都市での教訓を十分に活かせていません。
大阪府北部の地震では、6万3千台のエレベーターが止まって346人もの人が閉じ込めになり、11万戸でガス供給が止まりました。また、地震保険支払金額が1,033億円にも及び、阪神淡路大震災の783億円を上回る金額になりました。これは、一部損程度の支払いが15万件弱もあったためです。いずれも、大都市の弱さを見せつけます。
神経質過ぎる対策が大災害で破綻の原因になるかも
閉じ込めが発生したエレベーターの多くには地震時管制運転機能が付いていました。P波検知後、最寄り階に停止して扉を開ける前に、強いS波の揺れが来たことが原因です。また、大阪ガスの供給停止は60カインを超えた揺れで供給ブロックを停止したためです。
南海トラフ地震や首都直下地震では、遥かに多くのエレベーター閉じ込めや、ガス供給停止、地震保険支払額が発生します。今と同様のしきい値を用いていると、適切な対応ができなくなります。小さな災害での被害を減らす努力が、大きな災害では仇となることがあります。安全停止のレベル設定のあり方が問われています。
火山噴出物が堆積する場所の地盤災害
岩手・宮城内陸地震では栗駒山の火山噴出物に覆われた地盤で、大規模な土砂崩れが起きました。北海道胆振東部地震のときの厚真町や、2016年熊本地震のときの阿蘇周辺などで起きた大規模土砂崩れの光景と重なります。1984年長野県西部地震での御嶽山の山体崩壊、1923年関東地震での神奈川県下での土砂崩れでできた震生湖なども思い出されます。
7月には、一昨年は7月5日から6日に九州北部豪雨が、昨年は6月28日から7月8日に西日本を襲った7月豪雨(西日本豪雨)がありました。昨日から、熊本周辺での豪雨が続いています。地震と豪雨が重なると厳しい複合災害になります。気を引き締めて対策を進めたいと思います。