水分の多い「生ごみ」減らすコツは? 家庭用生ごみ処理機を使って1,000回測ってみた
毎年3月末に環境省が発表する、一般廃棄物の排出及び処理状況。最新の値は2021年3月30日に発表され、年間のごみ処理事業経費は2兆885億円だった(1)。
これを減らすのに要(かなめ)となるのが、重量のうち80%以上を水分が占める生ごみだ。
家庭用生ごみ処理機にかける前後で1,000回測ったら
筆者は、家庭用生ごみ処理機を、自治体の助成金を使って半額で購入し、2017年6月以降、処理機にかける前後で生ごみの重量の変化を測定している。これまでに1,030回測定した。
家庭用生ごみ処理機は、スイッチを押すだけで熱風が出てきて、生ごみを乾燥させるタイプを使っている。これを使うことで、生ごみの量を圧倒的に減らすことができ、家庭用の肥料としてリサイクルすることも可能だ。
その結果を100回ごとの平均値で示したのが下のグラフだ。オレンジの部分が減った重量を示している。
全体平均では重量ベースで67%近く減少している。
600回以降で減少率が高くなっているのは、家庭用生ごみ処理機の機種を変更し、バージョンアップしたことが主な要因である。
減少率の数字で見てみても、水分を占める80%近くが減っていることがわかる。
ちなみに筆者の場合、電気は実質100%再生可能エネルギーのハチドリ電力と契約しているので、温室効果ガスの排出は、大手電力会社と契約の場合に比べて減らすことができていると考えている。
生ごみの重量を減らすためには、水切りをすること、さらに乾燥させることで効果が高まる。
そして、計測を続けること、記録し続けることは、人の行動を改善していく。
「測れば減る」「記録すれば改善する」
NPO法人ごみじゃぱん食品ロス削減チームと兵庫県神戸市は、家庭の食品ロスを計測し、記録するための「食品ロスダイアリー」を提案している。2016年度から3年にわたって、家庭における食品ロスの実態調査を行った上でのものだ。
実験結果のグラフ(2)を見ると、一目瞭然。記録をつけた一週間目よりも二週間目に、食品ロスが減っている。さらに三週、四週と、継続するごとに減ってきている。
話題となった書籍『独学大全』(3)にも「記録を取る者は改善する」の項に、次のように書いてある。
徳島県の家庭でも、食品ロスを測るだけで23%も削減したという結果(4)が出ている(下記、青いグラフ)。
OECD加盟国と比べてもごみ焼却率の高い日本
日本はOECD加盟国と比べてもごみ焼却率が高い。ごみの中の生ごみを減らすだけでも、エネルギーや処理コストの大幅な削減になる。理想をいえば、生ごみを資源として家畜のえさや堆肥、バイオガスなどに活用できれば、なおいい。
「日本はリサイクル率が高い」というのも、OECDのデータでみると、そうとは言えなくなる。ごみ行政に関わり、現在ではゼロ・ウェイストの関連書籍を翻訳している服部雄一郎さんは、生ごみを燃やさず資源化することで、この数字は大幅に改善すると指摘している。
環境先進国が進めるサーキュラーエコノミー
EUは、サーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方を提案している。オランダ政府の公式サイトにある図がわかりやすい。今までの経済モデルは一方通行で終わるリニアエコノミー(左端)。一方、サーキュラーエコノミーは、すべての資源を循環させる経済(右端)。
生ごみを測り、記録し、資源化する
筆者は、家庭用生ごみ処理機を使う前後の重量を測るようになってから、食品ロスが減った。食べ残しを完全にゼロにできたわけではないが、食べ残しや食材をだめにしてしまうと、それを目の当たりにするので、罪悪感から、「次はしないようにしよう」と考える。考え方や行動がすこしずつ変わってきた。また、計測を継続することで、ささやかながら、自信も生まれた。
今は、家庭用生ごみ処理機で乾燥させた生ごみを、コンポストに入れている。自治体のごみに出す生ごみはほとんどない。
全国の自治体のうち、ごみ量の多さに困っていて減らしたいと考えている自治体にお勧めしたいのは、次のようなことだ。
▷市民への啓発として、まずは生ごみの水切りを提案する
▷食品ロスは、「6枚切り食パン1枚分減らしましょう」などわかりやすい表現を
▷食品ロスをお金に換算し「一世帯で年間平均61,000円分捨てています」など減らすことによるメリットを伝える
▷生ごみ用の袋として紙袋を指定販売(すでに実施している自治体がある。紙袋だと、よほど水分を切らないと破けてしまうので、水切りが徹底される)
▷家庭用生ごみ処理機を半額で購入できる助成金制度(島産業によれば、日本の自治体の60%が実施)
▷生ごみを分別回収(テスト的に実施している自治体もある)
▷生ごみを24時間投入できるポスト型のスマートi-BOX(千葉県市川市が実証実験中)
▷生ごみを家畜のえさ、堆肥、バイオガスなどに資源化
生ごみが「分ければ資源、混ぜればごみ」という標語の通り、多くの自治体で分別回収されるようになれば、一般ごみの処理コストや費やすエネルギーもずいぶん違ってくるはずだ。そして、生ごみを減らすためには食品ロスを減らすこと。
あらためて強調すると、生ごみを減らすためには、水切りをすること、さらに、乾燥させることで効果が高まり、家庭ではにおいやコバエ、有料ごみ袋の家計負担軽減、ごみ出しの煩わしさに悩まされるなどのメリットがある。
また、自治体や国にとっては、廃棄物処理コストや費やすエネルギーを減らすことができる。
参考情報
1)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について(環境省、2021年3月30日)
2)食品ロスダイアリー(NPO法人ごみじゃぱん食品ロス削減チーム・兵庫県神戸市)
4)平成29年度徳島県における食品ロス削減に関する実証事業の結果の概要(ポイント)消費者庁
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