「それやったら、仕事せぇへん」。新型コロナ禍で板尾創路が見出した自らのカタチ
芸人、映画監督、俳優と様々な顔を持つ板尾創路さん(57)。「関西演劇祭2020」(11月21日~29日、大阪・クールジャパンパーク大阪TTホール)ではフェスティバルディレクターも務めています。幅広く仕事にあたる中、新型コロナ禍による自粛生活は自らを見つめ直すきっかけになったと言います。その中から見出した「それやったら、仕事せぇへん」という思いとは。
「残る」感覚
昨年に引き続き「関西演劇祭」でフェスティバルディレクターという役割をやらせてもらうんですけど、今はだいたい仕事の9割くらいはお芝居がらみの仕事になってますね。今から4~5年前からかなぁ、お芝居が完全に多くなってきましたね。
お芝居のリズムというか、時間をかけてじっくりと作っていく。その感覚が合ってるんですかね。数時間でババッと終わるバラエティーの収録とはまた違う時間の流れ。
もちろん、瞬発力というか、その場で瞬間、瞬間、ハジけてやるという面白さもあるんですけど、お芝居は残っていく感覚がありますよね。特に、映画なんかはそうなんでしょうけど、今だけでなく、これからずっと見ていただける。その「残る」感じが楽しいかなというのもありますね。
ま、テレビは若い人でナンボでも埋まりますからね。僕なんかは呼ぶ側が気を使うでしょうし。現場の人やプロデューサーよりも年上になりましたし、面倒くさいでしょうからね(笑)。
「それやったら、仕事せぇへん」
ただ、今年はやっぱり新型コロナという部分で生活は変わりました。僕の場合は家族がいるんで、毎日嫁さんが作ったご飯を食べて、買い物に行ったり、子供を塾に送り迎えしたり、公園に連れて行ったり。撮影が止まって、ずっと家族と一緒にいましたね。
これはこれでね、これだけ子どもと一緒にいることもないでしょうしね。仕事は止まっていたんですけど、これだけ家族と一緒にいることもなかなかないだろうし、それはそれで値打ちを感じてもいました。
ただね、時間があるからといって「コレに没頭した!」みたいなことがないんですよ。だからね、今回改めて、自分は仕事以外に趣味がないんやなと痛感しました。
なんかねぇ、仕事以外に好きなことがあったら、僕は仕事をしていない感じがするんです。こういう芸能界のエンターテインメントの仕事をしていて、仕事以外の時は「趣味に没頭してます!」みたいな人ってすごいなと思って。
性格からいうと、多分、僕は仕事以外に好きなことがあったら、もう、それやったら、仕事せぇへんやろなと。やっぱり、この仕事が好きやから、やってますから。
仕事をやりながら趣味も満喫できる人をうらやましいなとも思うけど、趣味なんて無理に作るもんでもないですしね。ストレスがないわけでもないけど「仕事のストレスを趣味で発散する」という感覚が僕にはないんですよね。多分、僕はストレスを仕事で発散できてるのかなと。
今回の自粛期間の中でも、結局、何をするわけでもなかったし。改めて、それが僕なんやろうなと思いました。
好きな仕事をできるだけ続けていきたいという思いはもちろんありますし、中でも、生の舞台には立っていたいと思いますね。けいこもあるし、お客さんが入る入らないも考えないといけないし、いろいろ大変な部分もあるんですけど、やっぱりお客さんの前でやるのは楽しいし、やりがいもあります。
それを続けるために、まずは体を大切にしないといけませんからね。できるだけ外食をしないとか、そういう部分はやっぱり気を付けるようにはなりましたね。何がびっくりするって、あと3年で60歳というのが驚きですけど(笑)、いつまでも一番好きなことができているように、なんとかやっていこうと思っています。
(撮影・中西正男)
■板尾創路(いたお・いつじ)
1963年7月18日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校4期生。お笑いコンビ「130R」のボケ担当。俳優としても活動し、NHK連続テレビ小説「まれ」、フジテレビ系ドラマ「営業部長 吉良奈津子」「僕たちがやりました」、映画「さや侍」「私の奴隷になりなさい」などに出演する。また「板尾創路の脱獄王」「月光ノ仮面」「火花」では監督を務めた。クリエイター、劇団、観客に出会いの場を提供する「関西演劇祭2020」(11月21日~29日、大阪・クールジャパンパーク大阪TTホール)ではフェスティバルディレクターを担当している。