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やはり、オンラインサロンのトラブルは増えていた!「300万」「500万円」出資の被害相談も。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:Paylessimages/イメージマート)

「オンラインサロンに関する相談は、ここ1~2年増えてきていて、20代から30代の相談が目立ちます。特に、昨年はかなりの増加傾向がみられます。」

トラブルの現状について、国民生活センターに話を聞きました。

オンラインサロンとは、ネット上で運営されるコミュニティのことで、月会費などを払い参加できるようになっています。先ごろ、キングコング・西野亮廣氏の主催するオンラインサロン内でのチケット販売についてもネット上で話題となりましたが、主催者には有名人や実業家も多くいます。参加することで、有益な話が聞けてためになる一方で、トラブルも多く発生しています。

ひと口にオンラインサロンといっても内容は様々で、同センターには「経営学」「事業家として独立のノウハウ」「集客のためのレッスン」を教えるといったビジネス系から、「資産形成」「FX取引」が学べるという投資系。さらに「宗教の教育」「健康コンサルタントの養成」などの相談が寄せられています。月会費を払うものから、なかには100万円もの入会金が必要なものもあり、相談の平均金額は約30万円ということです。

トラブル増加の背景には、新型コロナウイルス蔓延の影響で、インターネットを通じて人々とコミュニケーションを取る機会が増えてきていることがあるようです。

ネット広告から誘導されて、入会してみたら

オンラインサロンのトラブルに遭うきっかけのひとつに「ネット上の動画などの広告から、誘われて入会をしてしまう」ことがあります。

トラブル事例を見てみましょう。

30代男性は、ネット上の広告を通じて、元有名企業の社員が教えるという「経営術」のオンラインサロンの存在を知りました。ビジネススキルが得られると思い、1万円ほどの月会費を払い、申し込みます。約4か月サロンで学びましたが、その内容はネットでも見られるようなありきたりなものばかりで、しかも主催者が有名企業の元社員であることが嘘だったことがわかります。返金を求めると、1か月分しか返してもらえなかった。

オンラインサロンは実際に入ってみないと、その内容がわからないことが多く、入るきっかけとなった広告に嘘があったり、入会時に伝えられていた内容とサロン内での情報に大きな乖離があり、トラブルになります。

やっかいな点は、後から解約しようとしても、自分でネットから申し込んでいるので特定商取引法における、無条件で解約できるクーリングオフが効かないところです。

「そこで申し込み時に、返品特約が書かれているかがポイントになりますが、契約書などをその場で確認していない人が多く、これでは返金が難しくなります」(同センター)

オンラインサロンのなかには、入会後、数か月は退会できないようになっていて、お金を払い続けざるをえないこともあるそうです。

知人・友人からの誘いによるトラブルも多発

知人や友人から、オンラインサロンを紹介されて参加してトラブルになるケースもあります。

20代男性は、海外旅行中に知り合った日本人から、海外の投資を通じた資産の構築方法を学べるオンラインサロンを紹介され、毎月2万円を払って、入会しました。ここでは知人を紹介すると、10万円をもらえるというマルチ商法的なシステムになっています。

その後、サロン内で知り合った他の会員から「暗号資産(通貨)を使ってのアービトラージ」「海外の投資信託」「コンピューターの貸し出し業務」「海外のリゾートホテルの会員になって、その国の銀行口座を開設する」の話を持ち掛けられて、総額300万円ほどを投資しましたが、どの事業も儲かりませんでした。

これは、サロン内での構築された人間関係から誘われて被害に遭ったケースです。投資先の中には、すでに連絡がつかない事業者もいて、交渉自体ができない状況になっています。

なかには、オンラインサロン事業の投資話をもちかけられることもあります。

20代男性は、高校時代の先輩からSNSを通じて「オンラインサロンの事業をやろう。出資すれば配当がある」との勧誘をうけました。「自分は1000万円を出資して、200万円の配当をもらえた」と言って、銀行の通帳を見せてきます。それを信用してしまった男性は、消費者金融を回って500万円を借りて、出資しましたが、その後、事業が厳しくなったと言われて、配当が一切ありません。

直接に会って、オンラインサロンに勧誘されることも。

SNSで知り合った女性と何度か会うなかで、男性はオンラインサロンの話をされました。ある時、女性が別な人を連れてきて「副業のためのITスキルを磨こう」「将来に必ず役立つよ」という話をされて、入会金30万円の契約をさせられました。

「このような喫茶店に誘われて契約した場合ですと、特定商取引法の適用も可能になりますので、トラブルに遭った時には、あきらめずに『188』消費者ホットラインに電話をして相談してください」(同センター)

オンラインサロンに入る際の注意すべき4か条

オンラインサロン入会における注意点を取材をもとに、4か条にしてみました。

注意点1 オンラインサロンの主催・運営者の住所、電話番号などの連絡先はしっかり確認して、控えておくこと。

トラブルで多いのは、ネットで見た広告と、実際にサロンに入会して学べる内容がかなり違っていて、しかもサロンのコンテンツもどこかのサイトのものを流用をしており、価格に合ったものではないというケースです。この時、だまされたと思って、返金を求めようとしても、運営者の連絡先がわからないと、交渉すらもできないことになります。

くれぐれも「どこの運営先と契約したのかわからない」ということだけは、ないようにしてください。

注意点2 SNS内のやりとりだけで、契約を完結させない。

サロンへ入会する際、LINEなどのSNS上のやりとりだけで、契約を行う人もいますが、これは極めて危険です。

というのも、相談者のなかには「主催者に解約を求めたら、ブロックされてしまって連絡が取れない」というケースもあるからです。しかも主催者の名前がニックネームになっていて、本名もわからないこともあります。住所や電話番号、そして本名もわからないでは、交渉すらできません。

SNS上のやりとりだけで、サロン入会の契約を完結させないようにしてください。

注意点3 契約書や規約を印刷するか、画面をスクリーンショットして保存すること。

ネットから申し込む場合は、必ず契約書や規約を紙に印刷しておくか、画面をスクリーンショットして、保存しておきましょう。契約内容がわからない状況では、後々、返金交渉が有利に進まなくなります。

実際に勧誘者に会って、タブレット端末にサインをして契約する場合もありますが、これも同じです。

国民生活センターも「本来、入会にあたっては、契約内容や規約を見せることが必要です。しかしそれ自体を渡してないこともありますので、契約書面や規約を見られない状況でのオンラインサロンへの入会は思い止まることが賢明です。」と注意を促します。

注意点4 入会時だけではなく、入会後のやりとりも証拠として残しておく。

オンラインサロンでは、閉鎖された環境でモノやサービスが販売されます。外部からのチェックが入りにくいため、もしここで強引かつ違法な形での販売行為が行われていても、すぐに被害が表に出てこないため、トラブル解決が遅れがちになります。

また、カリスマ的な人物の言葉に盛り上がり、一度は多額の購入をしたものの、後から冷静になって、失敗したと思い、返品、返金を求めたい気持ちも出てくることもあるでしょう。

その時、購入時に「相手から何を言われて、どのような形での販売勧誘をうけたのか。」こうした証拠を手元に残しておかなければ、いざという時に、交渉ができなくなってしまいます。

嫌な目に遭ったとの思いから、メッセージなどのやりとりをすぐに消してしまう人もいますが、それはダメです。勧誘を受けた時の内容は消さずに、キャプチャーやテキストの形で残しておいたうえで、相談するようにしてください。

「もしかすると、オンラインサロンのトラブルは多いのではないだろうか」と思い、今回、国民生活センターに取材を申し込みました。

被害の状況を聞き、「やはり、多かったか」という印象です。それどころか、私が想定していた以上の相談が寄せられていて、正直驚いています。

今後も、間違いなくオンラインサロンのトラブルは増えてくるでしょう。

こうした事態に巻き込まれないためにも、4か条を心に留めて、主催者がサロン参加者ファーストの姿勢で接しているかどうかを、入会する時だけでなく、入会後にもしっかりと見極め続けていくことが大事になります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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