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「わかっているだろう」厳禁!サンウルブズ田村優、長期遠征前にリーダーの自覚【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ロングパスとキックでスペースを射抜く。(写真:アフロ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦中のサンウルブズは、3月24日から3週間強の長期遠征へ出かける。昨秋のワールドカップイングランド大会では日本代表として歴史的な3勝を挙げた田村優が、これまでの戦いと今後の展望について語った。

チームは試合のなかった第2節を挟んで開幕3連敗中。2月27日、東京・秩父能ラグビー場でおこなわれたライオンズとの初戦を13-26で、3月12日、シンガポール・ナショナルスタジアムであったチーターズとの第3節を31-32でそれぞれ落とした。特にチーターズ戦は前半に15点リードを奪いながらの逆転負けだった。スタンドオフのトゥシ・ピシとともにゴールキッカーを務める田村は、後半20分に決まれば3点追加のペナルティーゴールを外していた。

続く19日、秩父宮でレベルズとぶつかった第4節は、ノートライで屈した。9-35。堀江翔太キャプテンは「疲れてきた時、ディフェンスのコネクト(連携)がなくなっていた」と振り返った。開幕から立川理道とセンター陣を組む田村も、守備時のコミュニケーションなどを課題に挙げている。

もっとも、組織的な攻撃などに手応えを感じている。ストラテジーリーダーの1人として、戦術略をメンバーと共有するための手順を再確認している。23日、出国前最後の練習を終えた折に思いを明かした。

――ここまで3試合、いかがですか。

「アタックは、よくなっている。ディフェンスは、僕とハル(立川の愛称)が詰めちゃって(相手との間合いを極端に詰め過ぎて)上手くいかなかった。チームのルール、システムを守るのが大事かなと。…もちろん、選手の判断を成功させたいという気持ちもある。システムがうまくいかない時に、上手く対応できるようにしたい、と。枠組みから大きく外れない範囲でやっていきたいとは思っています」

――サンウルブズは、選手と首脳陣が話し合って戦術略を練り上げるチームです。お話しいただいたレベルズ戦の守備について、他の選手の見解は「課題は横とのコネクト(隣の選手同士の連携、声の掛け合い)だけ」でした。

「例えば、僕とハルの間を抜かれたわけではなかった。ただ、(接点周辺を守るフォワードの選手間の)幅が狭いと、10、12、13番(グラウンドの外側に並ぶバックスの選手)に影響が出てしまう。そこは、フォワードに広がってもらう(ことでバックスの負担を減らすよう話し合っている)」

――ミーティングと練習を通して、守備システムをブラッシュアップさせる、と。

「これまでは、僕とハルのところにプレッシャーがかかっていた。(数的不利に追い込まれるなか鋭く前に飛び出さなければならないなど)ギャンブル的なディフェンスを強いられて、少し、怖かった」

――チームでは、皆に戦術略をしみこませる「ストラテジーリーダー」の1人です。

「大きな幹をコーチ陣が出すなか、僕らが『こんな方法もあるよね』と付け足す。あとは、やろうとしていることを繰り返しチームに言って、理解してもらう。

いま、試合でリザーブの選手が出てきた時にテンポが落ちるところがある。実際はスターティングメンバーとリザーブで(戦術略の)理解度が違ったりしていたんです。だからいまは、しつこくと言ったらおかしいですけど、その都度、その都度(理解度の確認作業をしている)。僕らがわかっているから皆もわかっているだろうではなく、ちゃんと伝えた方がいいかなと思いました」

――きょうの練習の合間にも、レベルズ戦でベンチスタートだった垣永真之介に何やら話をしていたような。

「はい。チームが同じ画を見る。そのために、同じ画を皆に見せるのが僕らの仕事だと思うので。僕らは(ストラテジーリーダーという立場上)コーチと密に連携を取っている。僕らだけ知っていることがあるとしたら、周りは気分もよくないと思います。スコッド全員がイメージを共有できるようにしたい」

――全体トレーニング後、プレースキックも練習していました。

「前、外していたんで。ちょっと練習を始めようかと」

――チーターズ戦でのゴールキック失敗、悔しかったのですね。

「悔しかったですけど…入ればラッキーかな、とも。その前の1週間、(移動日もあって十分な)練習ができなかったので」

――今回は移動日前日に、しっかり蹴り込んだ。次戦で同じ役割を求められれば…。

「決められたらいい。あの試合ではバテバテでしたね。でも、次はシンガポール2戦目。大丈夫です」

――日本の梅雨のような蒸し暑さは避けられない。

「それは、知ってたんですけどね。気温などの環境プラス、プレーの強度、疲労なども影響したと思います」

――なるほど。日本最高峰のトップリーグでも暑い8月に公式戦があるとはいえ、スーパーラグビーはわけが違った。

「全然、違います。レベルが。言い訳するつもりはないですけど、次はそこ(第2節で発見した問題)もゼロにして臨みたいですね」

――スーパーラグビー挑戦に際し、かねて「失敗がしたい。最後は成功できるようにするけど、最初はうまくいかないこともある」と話していました。実際にプレーして、どう感じますか。

「もっと、大活躍したいなと。日本人でも普通にはできることがわかった。だから、判断のスピードを高めてもっとチームに貢献できたらと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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