金正恩激怒で死屍累々「500人死亡」の凄惨な現場
韓国では今年8月8日と9日、首都・ソウルを中心にゲリラ豪雨が降り、一部地域では1日の降水量が400ミリを超え、浸水被害が続出した。
一方の北朝鮮では、特に首都・平壌の北にある平安南道・北倉(プクチャン)の得将(トゥクチャン)地区炭鉱連合企業所では、数多くの坑道が水没する被害が出た。復旧を急ぐあまり、むしろ被害を大きくしてしまったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。
炭鉱では、一部の坑道に雨水が溜まった状態だったが、それを抜くために発破を行った。ところが、他の箇所に溜まっていた水を溢れさせてしまい、むしろ14本の坑道を浸水させ、被害が広がってしまった。
誰の指示によるものかについて情報筋は触れていないが、北朝鮮の産業現場では、技術者よりも、技術を知らない朝鮮労働党の幹部が指導に当たるようになっており、誤った判断で大規模な災害につながった事例もある。
脱北者であるチュ・ソンハ東亜日報記者も、最大の被害が出たのは得将や檜倉(フェチャン)郡の炭鉱や鉱山だったと指摘。そして、現地での水害により労働者と住民など500人余りが死亡・行方不明になったと伝えている。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
チュ氏によれば、この地域では7月末の豪雨でも数多くの坑道が浸水していたという。得将炭鉱は北倉火力発電所に石炭を供給する重要地域であり、ここが浸水すると平壌の電力事情が急激に悪化する。
そのため、現地では「直ちに炭鉱を復旧せよ」との当局の厳命の下、多くの人材が動員され作業を進めたが、そこに記録的豪雨が重なり莫大な人命被害を出したとチュ氏は述べている。デイリーNKの情報と一致する部分だ。
この事実が上層部に報告されれば、現地の幹部らは無事では済まされない。チュ氏によれば、道の党委員会幹部らは処罰を避けるために被害状況を矮小化して報告した。
ところが、これが金正恩総書記の「調査掌握線」にバレてしまった。部下の報告を信頼できない金正恩は「調査掌握線」という「隠密同心」のような秘密組織を稼働させているが、北朝鮮の大多数の幹部はこのようなことをよく知らないのだという。
激怒した金正恩氏は直ちに平安南道の市・郡の党幹部会議を招集。会議場で道の最高責任者である道党責任書記とナンバー2と3である組織書記、宣伝書記などが逮捕されて引きずり出された。会議が終わるまでには、被害地域の責任幹部ら300人余りが逮捕されたという。まさに死屍累々である。
だが、チュ氏も言っていることだが、幹部が何人逮捕されようとも、北朝鮮の人々は今後も深刻な災害に見舞われるだろう。過去数十年間、北朝鮮を支配する金王朝は災害に対して無策だった。明らかな人災であり、その頑強である独裁者はいまだにのさばっているからだ。