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8月の月間本塁打数10はリーグ1位タイ! 中距離打者だったロッテ・マーティンがタイトル争いに参戦

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ファンの間では広瀬アリス似と人気者のレオネス・マーティン選手(筆者撮影)

【8月に10本塁打を記録したロッテ・マーティン選手】

 新型コロナウイルスの影響で6月19日まで開幕がずれ込んだNPBが、ソフトバンク2軍選手に陽性反応者が出た程度に留まり、大きなアクシデントもなく8月を戦い終えた。

 今シーズンは120試合制の変則シーズンということもあり、すでに巨人以外の11チームがシーズンを折り返し、ペナント争いはもとより、各選手のタイトル争いの関心も高まり始めた。

 個人的に関心を寄せているのが、本塁打王争いだ。一時は外国人選手にタイトルが独占されてしまった時期もあったが、ここ数年は日本人長距離打者が台頭し、互角の勝負を演じている。

 今シーズンはセ・パ共に日本人選手がリードしており、このままいけば2015年の山田哲人選手と中村剛也選手以来、両リーグの本塁打王タイトルを日本人選手が奪取しそうな状況だ。

 だがここに来て、本塁打を量産し始めた外国人選手がいる。ロッテのレオネス・マーティン選手だ。8月は10本塁打を放ち、タイトル争いに加わってきている。

【MLB時代の長打率は.367だった打者が豹変】

 マーティン選手は昨シーズン途中にロッテに加入し、52試合に出場し14本塁打を記録しており、ある程度本塁打が打てるのは実証していた。

 だがMLB時代の通算本塁打数は9シーズンで58本塁打に留まり、通算長打率も.367と、間違いなく中距離打者に分類されるタイプだった。

 今シーズンも7月が終了した時点で7本塁打に留まっていたが、8月に入り打ちまくり、本塁打部門で首位を走る中田翔選手に4本差に迫る5位タイまで上がってきた。

 8月の10本塁打は、柳田悠岐選手に並びリーグトップタイで、長打率.625は、柳田選手(.696)、中田選手(.648)に次ぐリーグ3位にランク。今や正真正銘の長距離打者だ。(データ元は「データで楽しむプロ野球」)

 ロッテはブランドン・レアード選手が腰の治療のため緊急帰国しており、現在のマーティン選手は、相当に頼もしい存在になっているはずだ。

【過去にも元MLB選手が長距離打者に変貌】

 マーティン選手ばかりでなく、過去にもMLBでは中距離打者だった選手が日本に来て、本塁打を打ち始めた例がある。

 2008年から日本ハム、DeNAに5年間在籍していたターメル・スレッジ選手だ。彼もMLBでは4シーズンで25本塁打に留まっていたのに、NPB移籍後は5シーズンで98本塁打を記録している。

 さらに信じ難いことだが、NPBの年間本塁打数を塗り替え、今やNPBを代表する長距離打者のウラディミール・バレンティン選手も、MLB時代は3シーズンで15本塁打しか打てず、長打率も.374に留まっていた。

 ただバレンティン選手もそうだが、NPBで長距離打者として活躍している外国人選手はMLBでの実績が乏しく、単純に比較対象ができない部分がある。だがマーティン選手とスレッジ選手はMLBでの実績があり、米国では中距離打者タイプだったのに、彼らは間違いなくNPBに来て飛距離が伸びていると判断できるのだ。

 理由は様々考えられると思うが、日本で活躍していた長距離打者がMLB移籍後公式球や級の違いに苦労していることからも想像できるように、裏を返せば、公式球の違いなどを含め、NPBの方がMLB以上に本塁打を打ちやすい環境にあるのではないだろうか。

【タイトル獲得なら球団34年ぶりの快挙】

 とりあえず長距離打者として実績のないマーティン選手だけに、9月以降も本塁打を量産できるかは未知の領域だ。ただ勢いに乗れば、本塁打を量産できる能力があることは証明してくれた。

 8月はリーグ最下位のオリックスとの対戦が9試合あり、京セラドームで6本塁打を記録している。ただオリックス投手陣の被本塁打数は60とリーグ3位の低さで、それほど相手チームに本塁打を提供しているわけではない。

 今後はオリックス以外のチーム相手にどれくらい本塁打を打つことができるかが、カギになってきそうだ。

 もしマーティン選手が本塁打王のタイトルを獲得することになれば、ロッテとしては1986年の落合博満選手以来34年ぶりの快挙となる。ちょっと期待しながらシーズン後半戦を見守っていきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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