高校生が会社設立!第5回 食品産業もったいない大賞 表彰式・事例発表会
2018年1月24日、豊洲シビックセンターホール(東京都江東区豊洲2-2-18)で開催された、第5回食品産業もったいない大賞 表彰式・事例発表会に参加した(主催:一般社団法人日本有機資源協会、協賛:農林水産省、後援:環境省、消費者庁)。
平成25年度(2013年度)にスタートしたこの取り組みは、今年で5回目。これまで、50以上の事業者や学校などが表彰されてきた。筆者は平成25年度(2013年度)に開催された第1回食品産業もったいない大賞で、当時、広報として勤めていたセカンドハーベスト・ジャパンとして応募し、農林水産省食料産業局長賞を受賞した。
この顕彰制度は、エネルギー消費のロスや廃棄物などの発生を伴いやすい食品産業において、環境対策の観点から顕著な実績をあげている食品関連事業者や、この取り組みを促進・支援している企業、団体、個人を表彰し、世の中に広めることを目的としている。
この「もったいない大賞」が優れているのは、大手企業だけではなく、これまで広く知られてこなかった、全国の小さな企業や事業者の地道な取り組みも、きちんと評価し、表彰することだ。この顕彰制度を通して、筆者自身も、毎年、新たな企業の取り組みを知ることができ、有意義な活動だと思って注目している。今回も、大企業を始め、地域に根ざした活動をしている企業や団体が表彰された。
また、北海道からは、様々な地元企業と連携して合同会社を設立した、北海道美幌(びほろ)高等学校の高校生も参加し、しっかりとした発表がなされた。頼もしいし、彼らがこれからさらに成長していくと思うと、将来が楽しみだ。
今回の第5回・第一部では、表彰式が開催された。主催者挨拶として、一般社団法人日本有機資源協会会長の牛久保明邦氏、来賓挨拶として農林水産副大臣の谷合(たにあい)正明氏が登壇された。その後、表彰状の授与、写真撮影が行なわれた。
第二部では、まず、受賞者の講評を、食品産業もったいない大賞審査委員会委員長の増井忠幸氏が述べた。
受賞者講評の次は、各受賞団体の事例発表が行なわれた。筆者が聴講した内容からまとめてみる。
農林水産大臣賞 ユニー株式会社「食品リサイクルループは命をつなぐ環」
ユニー(株)は全国に192店舗のスーパーマーケットを展開している。北は会津若松、南(西)は京都まで。店舗の多くは中部圏に集中している。生ゴミは徹底して分別する。可燃ゴミ、不燃ゴミなど合わせて全部で19種類ごとに計量する仕組みを2003年度から継続している。2007年度には全店舗でこの仕組みが稼働している。体重を減らすときに体重計を使うように、ゴミを減らすときには計る必要がある。
どの店舗でどのようなゴミが発生しているかを把握し、原因を特定することにより、2003年から、毎年2〜3%の削減を続けてきている。廃棄物が少なくなればなるほど廃棄コストは少なくなる。環境(配慮)と経営とが両立できていると考えている。商品の売れ残りは堆肥や飼料にしている。全部で14のリサイクルループを運用している。最初に国に認定されたリサイクルループは、愛知県ヒラテ産業とJAグループのループ。堆肥を使ってお米やチンゲン菜を栽培し、愛知県内の一部店舗で販売している。
リサイクルループの堆肥で作った野菜は、通常コーナーとは別に「エコやさいコーナー」を設けて、地産地消の取り組みを行なっている。長いものでは、もう10年続けてきている。環境教育としては、堆肥を作る過程を小学生に学んでもらっている。子どもたちは、堆肥をまいた畑で大根収穫体験を行なった。また、店舗では2007年度からレジ袋の有料化を実施した。2014年には86%の辞退率となった。一部店舗をのぞいて全店でレジ袋の有料化を行なっている。
質問「フードバンク」についてはどう考えているのか。
回答「フードバンクについては、2017年から勉強会などを行なっている。セカンドハーベスト名古屋と取り組みができるかどうかを模索している。が、もう少しトレーサビリティ(追跡可能性)が明確になってから。食品というのはナイーブなので、もう少しトレーサビリティが明確になってから(検討する)」
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農林水産省食料産業局長賞 北海道美幌高等学校「規格外野菜を用いた循環型養豚経営の構築」
国内の豚肉消費量は244万トンだが、その多くは輸入豚肉である(111万トン、46%)。国内の豚肉生産量は131万トン(54%)だが、その多くは輸入飼料を供与されており、国産飼料で育てられた国産豚肉の割合は、わずか8%である。北海道の美幌町では、ジャガイモの廃棄率が18%、かぼちゃが23%、ニンジンが40%に及んでいる。そこで、この規格外野菜を活用し、循環型養豚経営の構築を考えた。
規格外野菜を使った発酵乾燥粉末飼料は、粗タンパク質量が、通常の配合飼料と比較すると1.5倍から2倍高くなっている。この発酵乾燥粉末飼料を豚に与えたところ、豚肉の肉質を美味しく感じさせるオレイン酸が50%上昇した。この実績をもとに、合同会社「びほろ笑顔プロジェクト」を設立した。高校生もこの運営に関わっている。この「美幌豚」を使った醤油「豚醤」は、通常の醤油と比較して総アミノ酸が1.7倍となっている。美幌豚の商品開発を行ない、平成28年7月1日、美幌伝道大使に任命された。
一連の活動をテキスト化(文書化)し、小学校、幼稚園、道の駅などに、美幌豚についての啓発を目的として配った。この循環型養豚についての体験学習プログラムも開発した。この飼料の土壌微生物多様性活性は高く、豚糞飼料で、じゃがいもの生育が向上することがわかった。
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農林水産省食料産業局長賞 三菱食品株式会社「製・配・販連携によるサプライチェーン全体の効率化活動」
配送効率化の2つの事例
1、共同物流。これまでは、14メーカーの配送が非効率で、全ての曜日で4トン車に全て積み込みたい反面、積載可能物量を超えてしまうため、増便しなければならなかった。そこで、14メーカーを、月水金グループと火木土グループとに分けた。全ての曜日で4トン車に収まるようになり、増便がゼロとなり、物流の効率化が可能となった。
2、メーカーごとの個社ロットを撤廃した。6社をグルーピングし、車輌を効率的に使うことができるようになった。
返品削減の2つの事例
1、商品が定番カットになると、これまでは、カット日(販売終了日)ギリギリまで欠品しないよう在庫を持っていたため、滞留在庫になり、それが返品・廃棄となってしまっていた。そこで、カット日以降に欠品了承期間を設けた。売筋商品であれば、欠品了承期間は1週間、そうでないものは3-4週間など、品目ごとに細かく設定した。これにより残在庫の発生が大幅に軽減した。
2、特売情報など見込み数量で発注したり、欠品と過剰在庫を抑制するため、独自の需要予測で数量を決定したりしている。これを、可能な限り、正確な情報共有を行なうことで、廃棄ロスと返品の削減に繋げることができた。
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農林水産省食料産業局長賞 ミナミ産業株式会社「おから無排出化による資源の有効活用」
ミナミ産業株式会社の経営理念は「食を通じて、世界の人たちの健康や平和に貢献する」。おから廃棄を減らすための技術開発は、1992年から取り組み始めた。豆腐製造の際、大豆50万トンに対して、おからが70万トン発生している。つまり、原料より多い重量のおからが発生する。しかも、おから全体の95%が産業廃棄物として処理されており、おから処理による環境負荷、豆腐製造業者の経営に影響を及ぼす。
大豆の微粉砕技術を確立した。ハンマーなどで大豆を叩き割るのでなく、微粉砕技術により、なめらかなパウダーができるようになった。また、ダマになりにくいような装置を開発し、熟練技術を必要とせずに豆腐が作れるようになった。微細化することで、大豆をそのまま使うことができるようになった。表皮だけは剥いて飼料・肥料化している。通常なら大豆を水に浸す工程が入るが、これが不要なので、浸漬用の排水もゼロ。豆腐の出来高が通常より2倍近く多くなる。
この「大豆丸ごと豆腐」で実験を行なったところ、ラットの場合、血圧・血糖値の両方で効果が見られた。また、女子大生30名を対象とした臨床試験では、体重・体脂肪・骨密度に変化が見られた(*)。
*2005年9月、第52回 日本栄養改善学会学術総会発表資料より、神戸学院大学(現:上越教育大学教授)野口孝則教授
1998年から2017年までに5,000トンの大豆粉を供給し、推定で7,000〜7,500トンの産業廃棄物を削減することができた。伊勢やパリにもアンテナショップを作っている。現在、世界人口が増えており、世界の食料問題の解決にも繋げていきたい。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 伊賀の里モクモク手づくりファーム「6次産業を活かした食農体験施設を軸とした『できるかぎりやさしさ宣言』」
伊賀の里モクモク手づくりファームは、おいしさと安心の両立をテーマに、自ら生産し、自ら加工し、自ら販売する農業法人。創業30年。
以下のような環境配慮の取り組みを続けてきた。
1、環境BOXによる包装・梱包材の削減。導入以来17年間で54トンの緩衝材を削減してきた。
2、加温ハウス(ビニールハウスの加温)の燃料を、間伐材ペレットで行ない、年間40トンのCO2削減効果を得ることができた。
3、おから40トンや、ビールカス250トンなどを、飼料や堆肥として活用してきた。
4、規格外品を用途別に活用してきた。いちごの規格外を、生食用、パフェ、ジェラートなど、用途別に使っている。年間8,000人の摘み取り体験も実施している。
ゴミになるものはできるだけ使わず、再利用している。自分たちで、小さな流通を行ない、自分たちで作ったもので廃棄を出さないようにしている。無駄な電力使用は避け、太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーを活用している。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 井村屋グループ株式会社「エコロジカルはエコノミカル!〜木質バイオマスボイラー導入などCO2削減活動を含む環境マネジメント〜」
明治29年(1896年)創業。創業以来、環境への取り組みを続けてきた。99%のリサイクル率を保っている。
1、BOZのあずきバーのカーボンフットプリント認証を取得した。
2、木質バイオマスボイラー稼働により、二酸化炭素を年間およそ3,600トン削減することができた。
3、複合冷凍施設のアイアイタワー導入。収容できない時、他社の倉庫に流すことを「横持ち」と呼ぶが、収容量が増えたことにより「横持ち量」が減り、それによって二酸化炭素の発生量を抑制することができた。
4、MOTTAINAI屋で、規格外品の販売。たとえば、肉まん・あんまんなどの形が悪いもの。毎週土曜日に開催し、近隣の方向けにお値打ち品を提供することで、廃棄物を削減した。
できる限り、地元の三重県の食材を活用している。今後はSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れていきたい。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 日進乳業株式会社 アルプス工場「中小企業における電力使用量削減などの省エネルギーの取組」
具体的には次のような環境配慮を行なってきた。
1、電力・LPガス使用量の削減(二酸化炭素排出量の削減)
エコアクション21認証の取得を機に、定量的な測定やデータ収集に基づく機器の設定の最適化を行い、電力・LPガス使用量を削減した。
2、廃棄物排出量の削減
プラスティック類の分別細分化と分別精度を向上させた。
新製品立ち上げ時の原材料ロスを軽減した。
3、総排水量の削減
工場排水の処理水を、排水処理場の消泡対策に活用し、設備の洗浄に再利用してきた。
4、科学物質使用量の削減
苛性ソーダの使用量を削減した。
5、食品再生利用などの実施率の向上
製品ロスの包装などと、食品部分との分別を徹底して行なった。食品部分については堆肥として再資源化した。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 日本マクドナルド株式会社「PDCAシステム活用による省エネルギーシステム」
PDCAサイクルにのっとった省エネルギー対策を実施し、全国2,900店舗ある、直営店・フランチャイズ店で、同じ行動が取れるようにシステム化した。たとえば、電源を入れる時間帯は、色別に分け、誰が見てもわかるような工夫をしている。2,900店舗のうち、フランチャイズが70%を占める。全店舗が同じカレンダーを使っている。
P:エネルギー使用量目標設定
D:設備機器の最適化
C:使用エネルギー量の定期的な検針による確認
A:分析・改善の検討
PDCAのうち、Aで行なう「投資」に関しては、たとえば電力を下げるためにはLED導入しよう、などといったように。
店舗ごとの使用量をグラフで見てみると、2008年から2016年まで、凹凸はあるが、ほぼ右肩下がりに下がっており、この削減量は、384店舗分のエネルギーに相当する。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 株式会社マツザワ「地元関係者との連携による『摘果りんご』の活用」
株式会社マツザワは、平成18年4月創業。長野県だが、名古屋に出る方が近い距離に本社がある。今回の取り組みは、りんごの栽培でこれまで捨てていた摘果(てきか)りんごを活用し、農家の手取りを向上させるという内容。
りんごは、摘果をしないと、ちゃんと実らない。摘果しないと、鈴なりに(過剰に)なってしまい、糖度が落ちてしまう。また、摘果りんごは、作業中、下に落ちていてそれで足を捻挫することもあり、穴を掘って埋め戻す作業なども必要で、りんご農家にとって労力となっている。
「りんご乙女」は、スライスした生のりんごを生地にのせて、プレス焼きで仕上げる薄焼きクッキー。海外の方のお土産としても人気を博している。この「りんご乙女」のりんごに、摘果りんごを使えないか、検討した。りんご農家は通常、秋まで収入がないが、「りんご乙女」に使うことにより、その前に農家に収入を得てもらうことが可能となる。
摘果りんごの直径は、58〜72ミリメートル。一方、市場に出回る長野りんごは、直径80から90mm。
活用までに様々な困難があったが、農林水産省の定める「農薬取締法」にのっとったやり方を創意工夫することにより、可能となった。流通経費を抑え、横持ち運賃をかけず、摘果りんごを90トン買い上げることにより、農家の手取りが格段に増えた。中小企業ならではの、地域に根ざした活動を行なうことができた。
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食品産業もったいない大賞審査委員会委員長賞 森永乳業株式会社「長期保存可能な豆腐の開発及びおからの飼料化」
日持ちのしない豆腐を、森永乳業独自の技術(無菌充填)により、長期保存が可能となった。これにより、自然災害時の備蓄品としての活用や、アメリカやヨーロッパなど、海外への輸出などに繋がった。また、おからを有効活用するため、2013年10月より、おからに乳酸菌を混ぜて乳酸発酵させるサイレージ飼料を作っている。これを商品化し、この飼料で育てている乳牛からの生乳を受け入れて、牛乳やヨーグルトなどの製品に活用している。
1985年に、アメリカで長期保存可能な無菌充填豆腐を発売した。また、日本では1989年に発売し、東日本大震災以降、災害時の緊急物資として活用されている。今後も、この取り組みの普及・拡大を図っていきたい。
受賞者の公式サイト
以上
詳細は、一般社団法人日本有機資源協会の公式サイトに掲載されている。