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NY金10日:米金利上昇も、ドル安継続で続伸

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NY金10日:米金利上昇も、ドル安継続で続伸

COMEX金8月限 前日比比9.00ドル高

始値 1,175.80ドル

高値 1,191.80ドル

安値 1,174.30ドル

終値 1,186.60ドル

為替相場がドル安気味に推移したこと、ギリシャ債務問題の先行き不透明感を背景に、続伸した。

債券市場では米長期金利の上昇傾向が続き、無金利・無配当資産である金にとってはネガティブな投資環境に。ただ、これ

がドル高圧力に発展せずに逆にドル安に振れていることが、金価格をサポートする展開が続いている。米国債に歩調を合わせる形で欧州債利回りも上昇しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ着手の流れをドル高、更にはドル建て金相場の押し下げ圧力に発展させることができない状況が続いている。これから本格的なドル安・ユーロ高圧力に発展するとは考えづらいが、ドイツを中心にユーロ圏の景況感が改善傾向を見せる中、ドルとユーロのパワーバランスを修正する動きが活発化している。

一方、ギリシャ債務問題への警戒感も、安全資産の観点から金価格をサポートしている。ギリシャの財政再建に関する新提案に対して、債権者側の反応が好ましい状態にはなく、なお混乱状況が続くリスクが警戒されている。本来であれば米国債などが退避需要の受け皿になる所だが、世界的に債券売りの動きが広がる中、消去法的に金市場に資金シフトを進める動きが観測されている。

金相場を積極的に買い進む材料は乏しいが、ドルとユーロがともに強さ比べの様相を呈する中、ドル建て金相場のダウントレンドにはブレーキが掛かっている。特に米雇用統計後のドル高の勢いは期待外れに終わる中、短期筋のショートカバー(買い戻し)が下値を支えている。もっとも、米国と他国の金融政策環境の違いを考慮すれば、金からドルに対する資金シフトの流れが修正を迫られる必要性は乏しく、戻り売り基調には変化がないと考えている。本日は米株式相場が底固く推移しているが、金融市場全体が不安定化する中、来週16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)待ちのムードに傾斜している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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