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J1最終節、残留と降格。天国と地獄、最後の1日の物語

小野寺俊明スポーツPRコンサルタント/スポーツ企画工房 代表取締役

今年のJリーグも大詰めを迎える。優勝は1節を残してサンフレッチェ広島に決定した。優勝争いが「歓喜」を目指す戦いであるならば、J1残留を賭けた戦いは「絶望」を避けるための戦いと言える。残留を決めたクラブは安堵の表情を浮かべ、降格したクラブの選手はピッチに倒れこみ、サポーターはスタンドで呆然と立ち尽くす。そしてどちらの目にも涙が浮かぶ…。

今季は最終節で4つのクラブが瀬戸際に立たされている。関西勢の14位・セレッソ大阪、15位・ヴィッセル神戸、16位・ガンバ大阪。そして17位のアルビレックス新潟だ。すでに最下位の18位が決まり、降格が決定した札幌とともに、この4つのクラブから16位と17位になった2つのクラブが降格する。

◆第33節終了時点の順位表

14位 C大阪 勝ち点41 得失点差-6

15位 神戸  勝ち点39 得失点差-8

―<残留ライン>―

16位 G大阪 勝ち点38 得失点差+3

17位 新潟  勝ち点37 得失点差-8

※同じ勝ち点の場合、得失点差で順位は決定する

◆第34節の対戦カード(12月1日土曜15:30キックオフ)

C大阪 vs. 川崎F @大阪長居スタジアム

神戸 vs. 広島 @ホームズスタジアム神戸

磐田 vs. G大阪 @ヤマハスタジアム

新潟 vs. 札幌 @東北電力ビッグスワンスタジアム

各クラブが残留を決めるための条件は下記のサイトをご覧いただくとして、2005年にJ1が18クラブ、1ステージ制になった7年間の最終節での残留争いをまとめてみた。

★【ACLへの道・残留への道:J1最終節】ラストゲーム、ACL出場枠とJ1残留枠は激戦必至

残留を巡る最終節のドラマが頭に浮かぶが、実は逆転で残留を決めたケースは2回だけとそれほど多くない。2005・06・09年は最終節を待たずに残留クラブが決定し、2007・11年は第33節の順位が入れ替わることなく、最終節を終えた。しかし、2008・10年は最終節に大きなドラマが起こっている。果たして2012年の結末はいかに。まもなく運命のキックオフ。

【2005年】

◆第33節終了時

14位 名古屋 勝ち点39 得失点差-5

15位 清水  勝ち点39 得失点差-7

―<残留ライン>―

16位 柏   勝ち点35 得失点差-11

17位 東京V  勝ち点27 得失点差-35

18位 神戸 勝ち点21 得失点差-36

※16位はJ2・3位と入れ替え戦

第33節で残留争いは決着。東京Vと神戸の降格が決定し、柏が入れ替え戦に回ることとなった。入れ替え戦ではJ2・3位の甲府と対戦。第1戦の停電事件や、第2戦の甲府・バレーのダブルハットトリック(6点)と話題を振りまいた。結果は柏が初のJ2降格、甲府が初のJ1昇格となった。

【2006年】

◆第33節終了時

15位 FC東京 勝ち点40 得失点差-10

―<残留ライン>―

16位 C大阪  勝ち点27 得失点差-24

17位 福岡  勝ち点26 得失点差-24

18位 京都  勝ち点22 得失点差-35

↓ ↓ ↓

◆最終順位

15位 甲府  勝ち点42 得失点差-22

―<残留ライン>―

16位 福岡  勝ち点27 得失点差-24

17位 C大阪  勝ち点27 得失点差-26

18位 京都  勝ち点22 得失点差-36

※16位はJ2・3位と入れ替え戦

下位3クラブとの差が大きく、3節を残して残留クラブが確定した。最終節は入れ替え戦の16位と、自動降格の17位を巡る争い。福岡が甲府に引き分け、C大阪が川崎Fに敗れて順位が入れ替わった。しかし、入れ替え戦に回った福岡も、神戸にアウェイゴール差で屈し、J2降格となった。

【2007年】

◆第33節終了時

15位 大宮  勝ち点34 得失点差-16

―<残留ライン>―

16位 広島  勝ち点31 得失点差-27

17位 甲府  勝ち点27 得失点差-31

18位 横浜FC 勝ち点13 得失点差-48

↓ ↓ ↓

◆最終順位

15位 大宮  勝ち点35 得失点差-16

―<残留ライン>―

16位 広島  勝ち点32 得失点差-27

17位 甲府  勝ち点27 得失点差-32

18位 横浜FC 勝ち点16 得失点差-47

※16位はJ2・3位と入れ替え戦

最終節を前に15位・大宮と16位・広島とは勝ち点「3」差だったものの、得失点差が「11」開いており、最終節を前に事実上決着していた。広島は入れ替え戦で京都に敗れ、J2降格。しかし、この年の最終節は最下位・横浜FCが主役に座った。勝てば優勝の首位・浦和を三浦知良のアシストからのゴールで撃破。鹿島の逆転優勝を文字通りアシストした。

【2008年】

◆第33節終了時

13位 大宮  勝ち点40 得失点差-10

14位 新潟  勝ち点39 得失点差-15

15位 磐田  勝ち点37 得失点差-7

―<残留ライン>―

16位 東京V 勝ち点37 得失点差-10

17位 千葉  勝ち点35 得失点差-19

18位 札幌  勝ち点18 得失点差-33

※16位はJ2・3位と入れ替え戦

↓ ↓ ↓

◆最終順位

12位 大宮  勝ち点43 得失点差-9

13位 新潟  勝ち点42 得失点差-14

14位 京都  勝ち点41 得失点差-9

15位 千葉  勝ち点38 得失点差-17

―<残留ライン>―

16位 磐田  勝ち点37 得失点差-8

17位 東京V 勝ち点37 得失点差-12

18位 札幌  勝ち点18 得失点差-34

※16位はJ2・3位と入れ替え戦

千葉が最終節でJリーグ最大とも言える「奇跡の逆転残留」を飾った。17位の千葉は勝った上で、15位・磐田、16位・東京Vが揃って負けるしか残留の可能性がなかったが、最終節のFC東京戦は後半29分まで0-2と絶体絶命の状況に陥る。しかし、ここから4点を奪い、逆転勝ちすると、東京Vは0-2で川崎Fに敗戦。磐田は後半30分に大宮に決勝点を奪われ、共に敗戦。これにより、千葉が大逆転で残留を決めた。入れ替え戦では磐田が仙台をくだし、残留を決定。

【2009年】

◆第33節終了時

13位 大宮 勝ち点38 得失点差-7

14位 神戸 勝ち点38 得失点差-8

15位 山形 勝ち点38 得失点差-8

―<残留ライン>―

16位 柏  勝ち点34 得失点差-15

17位 大分 勝ち点29 得失点差-19

18位 千葉 勝ち点27 得失点差-22

最終節を待たず残留クラブが決定した。この年から入れ替え戦はなくなり、16位以下のクラブが自動降格となった。この時、同時に降格した大分と千葉が、今年のJ1参入決定戦の決勝で対戦したのも何かの縁か。

【2010年】

◆第33節終了時

14位 仙台  勝ち点38 得失点差-6

15位 FC東京 勝ち点36 得失点差-3

―<残留ライン>―

16位 神戸  勝ち点35 得失点差-12

17位 京都  勝ち点16 得失点差-32

18位 湘南  勝ち点16 得失点差-49

↓ ↓ ↓

◆最終順位

14位 仙台  勝ち点39 得失点差-6

15位 神戸  勝ち点38 得失点差-8

―<残留ライン>―

16位 FC東京 勝ち点36 得失点差-5

17位 京都  勝ち点19 得失点差-30

18位 湘南  勝ち点16 得失点差-51

14位・仙台、15位・FC東京、16位・神戸と3クラブが残留を争う最終節。神戸は勝った上で、FC東京が降格の決まっている京都に負けないと残留できない状況。浦和と対戦した神戸は、31分に先制点をあげると、ゴールラッシュ。4-0で勝利を飾った。一方のFC東京は34分に失点すると後半ロスタイムにも追加点を奪われ、万事休す。2000年のJ1昇格以来、初のJ2降格となった。

【2011年】

◆第33節終了時

15位 浦和 勝ち点36 得失点差-5

―<残留ライン>―

16位 甲府 勝ち点33 得失点差-19

17位 福岡 勝ち点22 得失点差-35

18位 山形 勝ち点21 得失点差-39

↓ ↓ ↓

◆最終順位

15位 浦和 勝ち点36 得失点差-7

―<残留ライン>―

16位 甲府 勝ち点33 得失点差-21

17位 福岡 勝ち点22 得失点差-41

18位 山形 勝ち点21 得失点差-41

15位・浦和と16位・甲府の勝点差は「3」だったものの、得失点差が「14」と大きく開き、事実上の残留争いは最終節を待たずに決着していた。このとき残留を争った浦和は、今季は上位につけAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)闘いを演じており、一方の甲府はJ2無敗記録を更新して、1年でJ1に復帰している。

【2012年】

◆第33節終了時

14位 C大阪 勝ち点41 得失点差-6

15位 神戸  勝ち点39 得失点差-8

―<残留ライン>―

16位 G大阪 勝ち点38 得失点差+3

17位 新潟  勝ち点37 得失点差-8

18位 札幌  勝ち点14 得失点差-60

↓ ↓ ↓

◆最終順位

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スポーツPRコンサルタント/スポーツ企画工房 代表取締役

「スポーツPRコンサルタント」「スポーツWebサイトプロデュース」「スポーツライティング」を行う株式会社スポーツ企画工房代表取締役。スポーツ団体や選手、テレビ局のスポーツサイトを数多く立ち上げたほか、スポーツ団体やチームの運営・広報、SNSやWeb戦略のアドバイザーを務める。また、プロバスケットボール「bjリーグ」や卓球「Tリーグ」の設立に関わった。2006年から11年までは中央大学商学部客員講師としてスポーツビジネスを教えた。

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