金正恩の「ボディガード候補生」ボコボコ殴打で瀕死の重傷
北朝鮮で「5課対象」と言えば、いわゆる「喜び組」など、金正恩総書記の身辺の世話をする要員の選抜・管理を行う中央党(朝鮮労働党中央委員会)5課に選抜される人員のことだ。
現在では「6課対象」に変わったとの説もあるが、その中には金正恩氏の身辺を警護するボディーガードのエリート候補生も含まれる。彼らは思想はもちろんのこと、知力、体力、容貌を兼ね備えた人物でなければならない。
6課対象に選ばれた男子高校生は、実際に任務につくまで朝鮮労働党の管理を受けることになるのだが、そんなエリート高校生が半殺しにされる事件が起き、深刻な問題となっている。関係者に処分が下されたが、金正恩氏にかかわる事柄だけに、いっそうの厳罰を予想する向きもある。
ことの顛末を、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
事件が起きたのは北朝鮮北東部、咸鏡北道の穏城(オンソン)の高級中学校(高校)でのことだ。今月16日の光明星節(故金正日総書記の生誕記念日)を記念して高級中学校サッカー大会が開かれた。
15日は穏城郡の都市部の学校と、農村部の学校の試合が行われたが、都会出身の生徒が、農村出身の生徒をバカにするような行動を行った。それに腹を立てた農村出身の生徒たちは、都会出身の生徒たちを呼びつけ、無慈悲に暴力を振るった。そうして暴行を受けた生徒たちの中に、6課対象に選ばれたエリート生徒が含まれていた。半殺しにされた彼は、未だに回復できていない。
この事件の背景には、都市と農村の越えられない格差がある。インフラが整っていてビジネスチャンスも多い都市部。一方で、立ち遅れる一方で貧困が蔓延し、場所によっては「革命化(流刑)の地」と化している農村部。
当然のことながら、農村出身者は都市出身者から見下される。時々、都会の若者や除隊軍人(兵役満了者)を農村に送り込む事業が行われるが、多くの人が逃げ出そうと必死になる。北朝鮮において、農村はそれほど忌み嫌われるものなのだ。
本来、6課対象の生徒は、地元の党組織の管理を受け、学校でも一切の課外活動や作業に参加させない。いくつもの選考過程を経て選びぬき、「箱入り息子」にして大事に育てるべきはずの未来のエリート候補がボコボコにされた今回の事件。朝鮮労働党咸鏡北道委員会(道党)は怒り心頭だ。
「道党は、毎年6課対象を苦心して選び、大切に管理しているのに、今回事件が発生し、激しい警告を発した」(情報筋)
道党は、農村出身の生徒とその親、担任教師、校長を呼びつけ、批判書を書かせる処分を下した。また、朝鮮労働党穏城郡委員会か集体批判教養処理資料を受け取り、他の市や郡に対しても、6課対象の管理をきちんとせよと強調し、また乱闘などの問題が起きれば、学校のイルクン(幹部)まで責任を取らせると警告した。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
ただ、金正恩氏が関わる事案だけあり、処分がこれだけで済まされるかはわからないという。